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ビッグバンから20億年後の初期宇宙で形成されつつある原始銀河団を観測

2022年11月24日 | 銀河・銀河団
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測により、115億光年彼方のクエーサーのすぐ近くに少なくとも3つの銀河が存在することが分かりました。
ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータからは、さらに多くの銀河が存在する可能性が示唆されているので、測していたのは原始銀河団が形成されつつある現場のようです。

この時代の原始銀河団は見つけるのが難しく、ごくわずかしか知られていません。
なので、高密度な環境で銀河がどのように成長するのかを、理解するための手掛かりになると考えられています。

初期の宇宙に存在するクエーサー

ヘルクレス座の方向にある“SDSS J165202.64+17285.3”は私たちから115億光年の距離を隔てた、ビッグバンから20億年程度の初期宇宙に存在するクエーサーです。

クエーサーは、銀河中心にある超大質量ブラックホールに物質が落ち込むことで生み出される莫大なエネルギーによって輝く天体で、あらゆる波長の電磁波を発しています。
遠方にあるにもかかわらず明るく見えるんですねー

ただ、“SDSS J165202.64+17285.3”は遠方にあるので、赤方偏移によって非常に“赤い”クエーサーになっています。
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまう。この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになる。110億光年より遠方にあるとされる銀河は、赤方偏移の度合いを用いて算出されている。
赤外線でも明るくなっている“SDSS J165202.64+17285.3”は、赤外線宇宙望遠鏡であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測するのに向いている天体と言えました。

銀河団が形成されつつある現場

今回の研究では、ドイツ・ハイデルベルグ大学のチームが、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器“NIRSpec”を用いて、“SDSS J165202.64+17285.3”とその周辺の分光観測を実施。

光のドップラー効果によって、私たちの方へ動いている物質からの光は波長が短く(青く)なり、遠ざかっている物質の光は波長が長く(赤く)なります。

これにより、分光観測によって“SDSS J165202.64+17285.3”の母銀河周辺におけるガスの動きを調べることができました。
(左)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“SDSS J165202.64+17285.3”周辺。(右)ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した“SDSS J165202.64+17285.3”近傍のガスの分布。赤は私たちから遠ざかる方向、青は私たちに近づく方向に動く成分を示している。(Credit: NASA、ESA、CSA、STScI、D. Wylezalek (Heidelberg Univ.), A. Vayner and N. Zakamska (Johns Hopkins Univ.) and the Q-3D Team)
(左)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“SDSS J165202.64+17285.3”周辺。(右)ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した“SDSS J165202.64+17285.3”近傍のガスの分布。赤は私たちから遠ざかる方向、青は私たちに近づく方向に動く成分を示している。(Credit: NASA、ESA、CSA、STScI、D. Wylezalek (Heidelberg Univ.), A. Vayner and N. Zakamska (Johns Hopkins Univ.) and the Q-3D Team)
ガスの動きから分かったのは、“SDSS J165202.64+17285.3”の周りには母銀河に加えて、少なくとも3つの銀河が漂っていること。
ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータからは、さらに多くの銀河が存在する可能性が示唆されています。銀河間の距離は近く、互いに重力で影響を及ぼし合っているようです。

研究チームでは、この結果を銀河団が形成されつつある現場を観測したものと解釈しています。

この時代の原始銀河団は、見つけるのが難しく、ビッグバン以降、形成するのに十分な時間を与えられたものは少ないので、ごくわずかしか知られていません。

なので、今回の発見は、高密度な環境で銀河がどのように成長するのかを、理解するための手掛かりになると考えられています。

115億年前という初期宇宙で、“SDSS J165202.64+17285.3”のように数多くの銀河が生まれているのは、極めて異例なことと言えます。

大量の暗黒物質が重力によって、物質をつなぎとめていると考えられています。

でも、ただの暗黒物質の密集部では、この状況を再現できないので、2つの巨大な暗黒物質の塊がここで衝突している可能性もあるようです。


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