こういうニュースがあり、同業者としては大きな衝撃を受けました。

 

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神戸 結婚式撮影のカメラマンが屋上から転落 意識不明の重体

26日午前、神戸市で結婚式の撮影をしていたカメラマンの男性が、建物の屋上から転落しました。
男性は意識不明の重体だということで警察が詳しい状況を調べています。

26日午前10時40分ころ、神戸市中央区のレストランの従業員から、「カメラで撮影をしていた男性が屋上から転落した」と消防に通報がありました。
警察によりますと、建物の3階部分にある屋上で撮影作業にあたっていた20代とみられる男性が道路に転落し、病院に運ばれましたが意識不明の重体だということです。
警察によりますと、このレストランには結婚式場が併設されていて、男性は施設から委託され、式が始まる前に新郎新婦の動画を撮影していたときに、足を踏み外して転落したとみられるということです。
転落した場所には柵などは設置されていなかったということで、警察は当時の状況を詳しく調べています。

 

 

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このニュースを見てから、あれこれ調べてみました。どういう絵を撮っていたかの画像も発見しました。

このレストランは高台にあって、その屋上に、おそらく後から「芝生」を貼ったようで、そこをフォトスポットとして売り物にしていたようです。

柵もあえて取り付けなかったような感じがします。柵がないために、「天空の楽園」とも思えるような、すごくきれいな写真が撮れます。

 

 

出張持ち込みカメラマンさんのブログを拝見しました。(※このカメラマンさん、すごくうまいです) そこには、今回の事故現場で撮った素晴らしい風景の写真がありました。

これは、新郎新婦も喜ぶでしょうし、カメラマンも一生懸命いい写真や映像を撮りたくなるようなロケーションだと思います。

特に、今回の事故は「ビデオカメラマン」さんです。ビデオの人は動きながら撮ることが多く、ベテランだと周囲も同時に見ていますから、転落などしませんが、若い人だと、画面に集中して、周りが見えていなかったのかもしれません。

 

たしかに、素晴らしい写真スポットですが、いっぽうで、非常に危険な場所に見えました。

 

「柵がない」「落ちたら即死」というような高い場所に、新郎新婦や、アテンドの人や、カメラマンを上がらせるって・・・・・

よくないと思います。というか、おそらく建築法規的には「違法」でしょう。

記事によると、そのカメラマンさんは持ち込みではなく、レストラン側からの発注のようです。ということは、レストラン側が「あの屋上に上がって撮影してくれ」と指示したのでしょう。そんな危険な場所に上げるって・・・・だめでしょ? レストラン側の責任は重いと思います。

 

その屋上では、結婚式の新郎新婦だけでなく、小さな子供を屋上に上げて写真を撮ったりもしているそうです。子供が喜んで走り回ったら・・・・・ 想像するだけでも恐ろしいです。

そんなフォトスポット、作っちゃだめですよ。

 

 

さて、神戸を離れ、自分自身の経験の話をします。

実は、レストランウェディングのスナップカメラマンって、結構、危険な撮影をしております。

場面としては、「庭に集まった列席者全員の集合写真を高い場所から撮る」というケース。

 

 

この写真も、屋根の端っこの「幅30センチ」くらいしかない危険な場所に立って、恐る恐る撮影しました。

高さはそんなにありませんが、とにかく、立っている場所が狭くて狭くて、怖かったです。

当時は若かったし、「いい写真を撮りたい」と思ってますので、今から考えると「無謀」に思えるようなところにも登っていました。

 

 

これはレストランの3階部分にある、「女子トイレ」の「個室の中の窓」から撮ってます。

危険な場所ではないかもしれませんが、男のカメラマンが「女子トイレの個室の中に入って」撮ってます。

「変態盗撮犯」と間違われて警察に通報される危険があります。精神的に疲れた撮影でした。

 

 

それから、こんなのもありました。

 

10階建てのビルの屋上に「仮設の屋外展望チャペル」を作ったレストランです。

ここでも「全員集合写真」を撮りましたが、レストラン側の指示は、

「カメラマンさんは、あそこにある、エレベーター機械室の屋根に上がって、そこから撮って下さい」

というもの。

登る手段は「はしご」です。そして、そこに登ると、そこには柵などなく、「ちょっとバランスを崩すと、30m下まで真っ逆さま」「落ちたら即死」という場所でした。

これはマジで怖かったなあ~

命綱もありませんし、いっしょに上に登って支えてくれる人間もいません。

 

我々出張カメラマンは、会社の社員ではありませんから、怪我をしても労災の対象外ですし、休業補償もありません。

レストラン側の指示で危険な場所に上がっても、「カメラマンさんが承諾して上がりました」と主張するレストラン側の責任は問えないでしょう。

 

実際、この時の撮影を終えて、はしごを降りる際に足を踏み外し、転んでしまいました。

(登山なんかもそうですが、ちょっと安心して下る際に、気の緩みもあって事故は起きます)

カメラが地面に叩きつけられ、40万円の機材がパーになりました。

4万円の仕事なのに・・・・・・・

 

悲しかった~  まあ、でも、体は無事だったので、よしとしました。

(これを教訓に、カメラを「肩がけ」にすることはやめ、何かあってもカメラが落下しない、「クビかけ」及び「ブラックラピッドを使用」に変えました。)

 

 

私は今、婚礼の仕事は引退しましたが、若いカメラマンの皆さん、危険な仕事を指示されても、従う必要はないですよ。自分の命と機材を大事にして、理不尽な命令は拒否しましょう。そして、撮影時に動く時は、必ず、その前に「周囲を確認する」という「松崎真さん」のような習慣をつけましょう。

 

今回の事故、非常に悲しい出来事です。全国の結婚式場の関係者、とくに、レストラン関係の経営者さん、カメラマンに危険なことさせないで下さい。お願いします。

 

 

※とにかく、今回の事故の現場になったレストランは、こんな危険な場所をフォトスポットにするなんて言語道断だと思います。

 

重体のカメラマン、どうか無事に回復してくれることをお祈りします。

そして、その人が属する会社も、休業補償など、アフタケアをしっかりお願いします。

 

 

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追記

さらに色々と調べていたら、こんなyoutube動画を見つけました。すごくよくわかる映像です。

 

 

こんな危険な場所に、「新郎新婦」「アテンド2名」「ビデオカメラマン」「スチルカメラマン」「メイク」そして取材クルーが上がっています。

このテレビ局も、こんなにしっかり取材しているのなら、気がついたはずで、この時に、「この屋上は危険です」と行政に報告すべきだったと思います。テレビ局、何をしてるんだ?