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『大学で大人気の先生が語る<恋愛>と<結婚>の人間学』

2021-01-08 23:08:24 | 読書。
読書。
『大学で大人気の先生が語る<恋愛>と<結婚>の人間学』 佐藤剛史
を読んだ。

九州大学で「婚学」という講義を開講した著者による、結婚についての現実をあらゆる角度で見ていく本。小学校高学年くらいからでも読めるはず。

少子超高齢社会となった現代において、結婚率向上、出産率向上は国策でもあります。年金問題や医療保険問題の緩和にしても、経済発展にしても、少子化が和らげば状況が変わってくるからです。だからといって、国のために結婚しようと思う人はなかなかいないはずです。著者も、国のために結婚なんてのはおかしいと書いています。そうはいいながら、でも結婚はほんとうに素晴らしいのだ、と結婚することを強く奨めています。

性別と年齢別の未婚率のデータや出産適齢期の生理学的なデータ、結婚への障壁となる経済的理由・女性の社会進出機会の向上・高学歴化etc...。本書は、たいていの人がふわふわしたイメージでしかみていない結婚を、現実に基づいたデータやアンケート結果などから具体的にどういうメリットやデメリットがあるのかを明らかにしていきます。そしてなぜ結婚するのが難しいのかその明確な原因(相手に求めるものとして挙げられる「誠実さ」「優しさ」などが抽象的すぎる点など)を整理して、具体的かつ端的に考えていきながら処方箋を提示したりもしています。そうすることで、就職活動のように戦略的に結婚相手を探す助けになるとしています。

また、結婚で失敗しないために、どういう心構えや準備をしておいた方がいいのか。これまた現実的な手段として、たとえば家事はできるようになっておくべきだと示されます。ほかにも、相手に「してもらおう」という気持ちで結婚しないことがあげられていますが、これは結婚後に「してくれない」に変化して婚姻関係(共同生活関係)がうまくいかなくなるのが目に見えているからなのでした。

まあ、最後まで読むと、なかなか読みごたえがあるのですが、DV(ドメスティック・バイオレンス)のなかでのモラル・ハラスメントの項では、チェック項目が13項目ほどあげられているなか、僕が家庭で親から受けてきたものが半分くらいあり、地雷を踏んだような気分になってちょっと落ち込みました……。その他にも、機能不全家族のチェック項目や、虐待のところでも、うちの家庭では当てはまるものが少なくないなあと暗い気分に。そういう結婚は解消したほうが良い、DVはほんとうに悲惨だ、と書かれていますが、そううまくかないのも現実ですからね。むずかしいもんだなと思います。

それと、出だしからの本書のつかみの部分が僕にはちょっと受け入れにくかったです。たとえば、自分の子どものことを考えることで、学校や地域のことを考え始め、環境や国、地球のことまで考えるようになる、子どもは自分の命より大事で、結婚していなかったらわがままで自己中心的なままだったと著者は述べているのだけど、そんな浅薄な人生観で生きてきたほうが問題があると思いました。

結婚は人生最大の成長の場であると豪語する著者なのですが、もっと多様な成長はありますから。さらにいえば、結婚生活であれこれ経験しているためになんでも知った気になってしまい、独身者を無条件で軽く見たりするようになる人は多いですよ。ともすれば、自分の子どものことしか考えなかったり、自分の家族内の経験がすべてだと勘違いしてより困難な境遇を想像できなかったり、結婚したほうが自己中心的(というか、自家中心的)に陥りやすいのではないか。

なんていうか、上手な言葉で上手に結婚を正当化している気がしてしまい、不満が出ました。実際、本書の読者の対象年齢が低い分、丸めこみやすいという感じで文章をこしらえている印象を受けたのです(個人的にですよ)。

以上のような感想ですからあえて推薦はしませんが、内容が大きな地雷を踏むことにならないで済む人にとっては、結婚を含めた人生設計のための大きなきっかけとなるでしょう。そこは認めつつ、記事を終わります。


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