宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

今年も春がやって来た

2024年03月31日 22時25分10秒 | Weblog

仕事と家事に追われて望遠鏡を星に向けることが出来ないまま時だけが過ぎてゆく。そしてまた春が巡って来た。12年前に植えた枝垂れ桜が今年も見事に花を付けている。花びらの向こうに見える竹取庵は作り始めてからもう四半世紀が過ぎようとしていた。スズメバチの災厄以来建設が止まっていた天文台はいろいろな想いの中で作業を再開している。今日は一階の居間と二階の観測デッキに向かう通路を隔てるアコーディオンドアの取り付けに掛かった。

角度の調整はこれからだが、思った以上にしっくり来る。建設を始めt頃には無かった建材だ。完全に取り付けられたら、床と天井を完成させる予定だ。まあ、死ぬまでに出来ればいいと思いながらも、それが叶わないような気もしてくる。

ところで竹取庵の周りのみかん畑にはイノシシ除けの柵を娘さんご夫婦が頑張って作られたが、その高さ150センチほどの柵を飛び越える動物がいる。これがその足跡。

そう、鹿だ。鹿は以前からこの丘に居たが、おじさんとおばさんが元気だったころにはあまりみかん畑に近づかなかったと思う。しかし二人とも他界されて丘が無人になり、僕も夜の写真撮影に来られなくなるともう動物の天下だ。せっかく植えたみかんの苗木も柵を飛び越える鹿の餌食になってしまう。

ただ、こればかりはどうしようもない。僕が一日も早く丘に上がれるよう頑張るしかないのかも知れない。

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手の中の宇宙・今年の天文教室

2023年08月27日 16時06分10秒 | Weblog

岡山県吉備中央町大和。吉備高原のど真ん中にあるそこの公民館で今年も天文教室を開いた。
昼の部の工作は長い間僕の夢だった、両手の中でぼんやり光る宇宙だ。本当は宙に浮いて、どこからでも見ることのできるパンケーキ型の星の集まりを再現したかったが、無重力でもない限りそれは難しい。なので卓上の丸鏡に貼り付ける平らな宇宙という事で手を打った。モデルとなるのは僕らが住んでいるこの天の川銀河だ。とは言うものの、その姿を外から見たものは居ない。最近の観測を元に作られた画像の中から、鮮明でかつ使っていい物をえらび、太陽系の位置をプロットした。

僕のスケジュールと月齢の関係で、開催日を今月26日と言う夏休みも明ける寸前の土曜日に持って行ったが、残念ながらこの町のお祭りとかち合って参加者が少なくなってしまった。公民館側がそれでは申し訳ないと思って頂いたのか、会場は公民館OBら年配の方が目立った。


かなり手の込んだ工作の多いこの教室だが、今年は天の川銀河を印刷した透明シールを、夜光塗料を吹きかけた丸い板に貼り付けて、それを鏡に取り付けるだけの作業。

あっという間に終わるだろうと思っていたのだが、シールの中心と円板の中心を合わせるのにかなり手間取っていた。本当はガイド板を作っておけば良かったかも知れないが、コストの面でそれは見送っていた。

それでも始めてから40分ほどでみんな上手にシールを張り付けて、出来上がった作品を窓際に持って行ってお日様に当てる。

そして当てた後はホールのステージの緞帳裏に持って行き、薄暗がりの中でぼんやり光る僕らの住む宇宙、天の川銀河を確認していた。

あまりに簡単でこんなの手抜きだと思われないか、少し心配したけれども、暗がりで光ると言う事に満足してもらったのか、まずまず好評で昼の部を終えられた。もちろん、手抜きなどはしていない。この銀河の元画像を探し当てて加工し、透過に一番適したシールを探すためにあれこれ試して、それを貼り付ける円板に夜光塗料をスプレーするのにずいぶん時間と手間を喰ってしまった。
もっともそんな事情はこちらの言い分で、工作をする人たちには関係の無い話だ。

休憩を挟んだ夜の天体観望会では、近くの大和小学校校庭に移動して、10日を数える月や「はくちょう」「さそり」などの星座を楽しんでもらうつもりだった。ただ、町の祭りで行われる花火大会に人を取られて子供の参加者は居らず、ちょっと寂しいイベントになってしまった。

寂しいと言えば、この立派な小学校も来年度を最後に閉校となる。過疎による児童数の減少で、遠くの地区に出来る新設校に統合されるのだ。このため、1997年から26年続いてきたこの天文教室も来年で終わりとなる。星の綺麗なこの場所で、星空を愛する人たちを育てようと始めた教室だった。しかしいくら星を愛していても、そこに住める条件が整わなければ地区から出ていく以外にない。つらい現実だ。

 

宇宙(そら)に続く丘ホームページ :http://taketorian.org/

 

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みかんの丘、もうひとつの再会

2023年08月13日 02時06分28秒 | 

今日は星の写真を撮ろう。そう決めて墓参りなどの用事を済ませ、一休みして準備に取り掛かった。予報ではほぼ曇りということだったが、気象庁の天気図もひまわり画像も、大丈夫だよ行っておいでとささやいてくれる。ヨシ!と意気込んだものの、え、星を撮るのに何が必要だったっけ。久しぶり、本当に久しぶりにみかんの丘で星を撮る。細かい機材を思い出せない。まあいいや。カメラボディーとレリーズ、それにレンズが有れば事が足りるだろうと適当にかき集めてデッキに上がってきた。
しかし望遠鏡のビニールカバーを外して気付く。あれ、望遠鏡とカメラを繋ぐアダプターは?赤道儀にカメラを載せる雲台は?だいたい赤道儀を動かすためのパソコンに繋ぐケーブルも無い。と言う訳で、今夜はワイドレンズだけを使っての固定撮影になってしまった。

まず初めに前から撮りたかった新しい対角線魚眼レンズでの撮影だ。日暮れを待って待って、8時前にようやく星が見え始めた。ボディーにレンズを取り付けて三脚に載せ、ほぼ真上を向ける。接近中の台風のせいで少し靄が有るものの、何とか天の川を捉えることができた。

写真右の明かりは岡山の街灯りと黄昏の名残り。下に見える明かりは瀬戸内海対岸の高松の街灯り。そして左側が姫路や神戸など関西の都市の明かりだ。その上にはかなり厚い雲も掛かっている。仕方が無いか。

せっかく天の川が川下まで見えているので、レンズを換えて南天の星座たちを狙ってみた。

いて座、さそり座、みなみのかんむり座の星の並びがはっきりとわかる。東の地平には土星も見えていたが、アダプターが無くては撮影出来ないし、くっきり撮ろうと高度が上がるのを待っていたら真夜中になってしまう。と言う訳で今日はここまで。これから時々来ることにしたし、間もなく公民館の天文教室も有るので丘を降りることにした。

天文台として再び働き始めた竹取庵。次は赤道儀にカメラを載せて撮影しよう。そのためには撮影機材全部をちゃんと書き出しておかなくては。そして、出来れば深夜まで時間を掛けて撮って行こう。以前の様に。

そう思いながら竹取庵のドアに鍵を掛けていて、ふと丘の番犬太郎がそこに居るような気がした。そうだ。丘によく通っていた頃、太郎は撮影が終わるのを見計らうようにこのドアの前まで来て僕を呼びながら尻尾を振っていた。
太郎。その様子が目に浮かんで涙が出た。あいつの墓は少し離れた畑の傍にある。今夜もきっと来てくれた。そしてこの時刻にこの場所で僕に思い出させたんだ。

観測デッキの星空との再会。そしてもうひとつ、太郎との再会。太郎が眠る畑の近くを車で通りながら手を振った。太郎、待っといて。またすぐに来るからね。

 

太郎の話はここにあります。
太郎が逝った - 宇宙(そら)に続く丘 (goo.ne.jp)

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久々のデッキ工事

2023年08月05日 23時56分45秒 | Weblog

お客さまを招いて一週間たった竹取庵。継続して整備を続けなければ劣化が起こる。改めて感じながら上がった今日のみかんの丘は青空が広がっていた。海を挟んで小豆島がきれいだ。この写真を撮るために竹取庵の北側に上がってみると、以前切り倒された杉の木の切り株が、さらに切られて低くなっていた。娘さんに聞くと、切株を足場にして鹿が柵の内外を行ったり来たりするので、娘さんのご主人がもう一度切ったと言う。

そうか、鹿がここで飛び跳ねるのか。鹿が。ふふ。想像してしまい、娘さんご夫婦には申し訳ないがちょっと楽しくなった。ここに入るという事は竹取庵の傍にも来るという事だ。いつか会えるかな。ただ、鹿たちはみかんを食べに来る。それも食べるとなると根こそぎだ。それは勘弁してもらいたい。
今年のみかんたちは、この猛暑の中で頑張って沢山実を付けている。

どうかそのまま色付かせて欲しい。過去にはせっかく色付いたみかんをイノシシにすっかり食べられて、しかも地面まで掘り起こされた事がある。
この丘のみかんは甘い。おそらく元々の土壌と、おじさんおばさん、そして娘さんご夫婦の土づくりの努力の賜物だ。それだけに動物たちに狙われやすい。おじさんに知り合った当時、みかんを狙うカラスを撃退するためにおじさんが百均の手鏡をあちこちにぶら下げていたのを思い出す。

そんな動物たちが来にくくするためにも、竹取庵に灯りを灯さなくては。と言う訳で今日も観測デッキの工事を進めることにした。
そう、デッキは来客のためにここまで床を張っていた。

これを今日はさらに進めようと、来る途中で買い込んだ材料をデッキに運んだが、海風を受けるはずの観測デッキも予想を超える暑さ。仕事を終えた翌日の体にはかなり堪えた。そこで床貼りは一枚だけにして、前から気になっていたデッキ北側の照明の取り付けをすることにする。と言っても、40Wの蛍光灯を屋根裏に取り付けるだけ。配線工事は後ほどという事で、不甲斐無いが午後の5時前には終わってしまった。本当は赤道儀に新しいシステムを取り付けるつもりだったが、こちらの方は準備不足で手が付けられない。まあ良いか。これからはかなり頻繁に来られると思う。みんな待ってろよ。と機材に言い聞かせて、開いた妻から外を見た。

絶好の撮影日和にみえるが、今日はカメラを持って来ていないし、作業的にもそこまで辿り着けない。悔しい思いで傍にある双眼鏡に目を遣った。せめてこれで海でも撮るか。双眼鏡の接眼部にスマホのレンズを重ねて撮ったのがこれ。

この写真が今日の唯一の成果だ。そして、今日はここまでとした。

西日に照らされた竹取庵は、作業の復活を喜んでいるように思える。

本当に長い間放置していた竹取庵。次は外装の防虫防腐処理もしなくては。スズメバチに巣を作られるとこちらの命に関わる。頑張って通おうと思いながら丘を後にした。

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久々のお客様

2023年07月29日 13時53分51秒 | Weblog

望遠鏡もコンピュータも取り外し、荒れ放題になっていた竹取庵にひとつの朗報が届いた。「娘の友達がお星さまを見たい言うんです。宜しいでしょうか。」
竹取庵の土地を無料で貸してくれている家の娘さんからの依頼。え、今の観測デッキは星は疎か、ゴミだらけで入ってもらえる状態じゃない。と思いながらこれは良いきっかけだとひそかに喜んだ。

「宇宙に続く丘」として20年以上造り続けてきたみかんの丘の竹取庵は、家の事情で建設が止まって観測デッキの屋根も長い間開いていない。主砲のはずの45センチかぐや姫はスズメバチの攻撃を受けて分解する羽目になり、ほかの望遠鏡たちも取り外して岡山の家に持って帰っていた。ただ、心の中ではこれで良いのだろうかといつも思っていたのだ。そこに舞い込んだこの依頼。土地をただで貸してくれているだけではない。みかんはもちろん、いつも野菜やブドウを分けてくれているこの家の人達。その家の依頼を断るわけにはいかないだろう。そうだ。それは絶対にダメだ、と有りもしない義務を自分に課して再び観測デッキの整備が始まったのが今月初めだった。

仕事のほうは実は一年で一番忙しい時期にあたっている。なので休みでも職場に出ていたが、その分寝る時間を減らせばいいだけだと、ホームセンターで資材を買い込んで丘に上がり、デッキに新しい床を張りながら積もりに積もったゴミや埃を取り除いていった。そしてその作業が完了しないまま来客を迎える日が来てしまったのだ。それでも何とか赤道儀に20センチ反射と8センチフローライトを取り付け、その横に10センチと8センチの双眼鏡を並べる事が出来た。
ただ、心配していた空は台風5号の影響で完全なべた曇り。夕方まで覗いていたおぼろ月も約束の午後7時半までにはすっかり姿を消してしまった。どうしようと思いながらデッキにお招きしたのだが。

お客様たちはこの手の施設を見るのが初めてらしく小さなことでも喜んでくれる。中でも屋根を開ける時には歓声が上がった。そして、僅かに見える瀬戸内海対岸の小豆島の灯りを双眼鏡で眺めたり、望遠鏡が動くさまを喜んだりしてくれた。

本当ならこの夜は十日月の表面の虹の入り江やコペルニクスクレーター、南極を埋め尽くすあばたたちを楽しんでもらうつもりだった。

月齢10.6。この夜見えたはずの月です。

また、もしもう少し居てもらえたら、東の空から昇ってくる接近中の土星も楽しんでもらえたのに。本当に残念でならなかった。

ただ、天気だけはどうにもならない。星は何時がきれいなのですかという問いに、秋ですよ。気流が穏やかな晴れ夜にまた来てください。とお答えしてお開きとした。次の機会。それまでに観測デッキをもっと進化させます、と約束をして。

 

 

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西の空のランデブー

2023年05月28日 13時06分57秒 | 

(ここに掲載した記録は5月23日のものです)

会社のパソコンに届いた天体ソフトメーカーからのお知らせ、今夜西の空で月と金星が接近するという。

月と金星か。以前も撮った覚えがある。いろんな理由で今はみかんの丘に上がれていない。仕方無いか、家から撮ろう。そう思いながら帰宅して駐車場から空を見上げた。今夜は快晴。まだ明るさの残る空にひときわ輝く二人の女神の姿が有った。月の女神アルテミスと金星の神ヴィーナスだ。

家に入って最近買ったカメラと三脚を持ちだすと、家の近くの駐車場に戻った。大丈夫。ギリシャ神話の二人の神はまだ西の空に見える。そこでふと思いついた。近頃のスマホのカメラは性能が良い。どこまで撮れるんだろうと、そのスマホを車の屋根に載せてシャッターを押したのが上の写真だ。設定を変えると長時間露光や絞りの変更、感度の調節など、ちゃんとしたカメラと変わらない撮影ができる。スマホだと言わなければ気付かないかも知れない。

結果にそこそこ満足して、今度はカメラを一眼レフに換えた。一眼レフと言いながら、このカメラにファインダー用の鏡は無い。いわゆるミラーレスだ。そのEOS‐Rに40年近く前に買ったおもちゃのTOMYの6センチ望遠鏡を取り付けて空に向けた。それがこれ。

金星と共に写る月の影の部分がかなりはっきり写っている。本来は真っ暗なはずの月の影の部分が地球の反射光に照らされて見える「地球照」と呼ばれる現象だ。この地球照の明るさが3年前から急に暗くなってきたという観測データをアメリカの観測チームが発表した。このチームは過去20年にわたって地球照の明かるさを測っていたが、3年ほど前からそれが大きく変化したと言うのだ。
地球の反射光の大部分は白い雲が原因だ。その雲の量が3年前から急に減った。地球の温暖化によって大陸中央部の砂漠化が進み、蒸発する水蒸気の量が減って雲が湧かなくなったのが原因のようだ。地球の温暖化が夜空の風景にも影響を及ぼす。考えれば空恐ろしい話だ。

地球照を撮ったのと同じシステムで露出を変えて撮影した。地球照は消えて、代わりに月の表面が見えいている。

月の右の丸い模様は豊かの海だ。
レンズを家にしまっているフローライトの8センチと取り換えようかとも思ったが、その気力は残っていない。夜風に吹かれながら、西に沈みゆく二人の女神のランデブーをただボーっと眺めていた。

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442年ぶりの天体ショー

2022年11月09日 23時31分59秒 | Weblog

職場で掛っているテレビが朝からずっとこのフレーズを繰り返していた。「442年ぶり」

皆既月食自体は去年も見られたし、それほど珍しくはないが、今回は皆既中の真っ赤な月が天王星を飲み込むと言う。そんな話は考えた事も無かった。皆既月食の月が惑星を隠す惑星食が442年ぶりだと言うのだ。見てみたい。見られるかな。デスクに有るパソコンで気象庁の半日後の予想天気図を見てみた。移動性の大きな高気圧が日本列島を覆う図が表示されている。晴れるんだ。それも快晴。撮りたい。いや、肉眼でも良いから見てみたい。
ただ今日は平日だ。仕事が終わってからみかんの丘に上がっていたのでは間に合わない。仕方が無い。去年同様岡山の自宅かその近辺で撮るしかないだろう。天体シミュレーションソフトによると天王星の光度は5.6。真っ暗な空なら肉眼で見られるが街中に近い我が家では無理だ。

頑張って仕事を片付けたつもりでも職場を出たのは午後6時過ぎだった。東の空を見ると左下がすでに薄暗くなっている。急いで家に帰って機材を組み立てようとしたが、撮影に使おうと思っていた8センチフローライトを出してきたが、カメラを繋ぐアダプターもTリングもどこにしまったのか見つからない。そうこうしているうちに時刻は6時半を回ってしまった。仕方が無い。去年使ったファミスコ60をカメラに繋いで庭に出た。月はもう半分以上欠けている。とりあえず手持ちで撮影。

道に出て撮影できないかと思ったが、我が家の前にはかなり大きなショッピングモールが有る。しかもその看板の灯りが深夜まで煌々と辺りを照らしているのだ。

仕方無く庭に戻って三脚を立てた。月食の時いつも思うが、月の動きは結構早い。空を眺めているうちに月はどんどん形を変えていった。

 

 

そして、午後7時21分ごろ、月はどっぷりと地球の影に入った。それまでの20分の1のシャッタースピードでは暗すぎる為、露出を6分の1まで延ばす。するとカメラのモニター上に真っ赤な月とその周りの星々が見えてきた。お目当ての天王星も月の直径と同じくらいの距離で左下に見える。

その天王星に真っ赤な月が近づいて行き、太陽系7番目の惑星は餅つき兎の臼にあたる湿りの海に近い縁に飲み込まれていった。

 

口径6センチのプラスチック鏡筒のファミスコ60。もっと高価な望遠鏡も持っているのに、今回もこの子のお世話になってしまった。赤道儀も、大口径望遠鏡も、我が家から20キロ以上離れた丘の上だ。最近は行く事も叶わないでいる。そう言えばこれを撮影した一眼レフも長い間手にしていなかった。レンズ交換の必要が無ければコンデジを、そしてあえてズームしなければスマホを使ってなんでも撮る日々。それで良いのかと自問してみるが、もう少し自由な時間が欲しい、心に余裕が欲しいと、情けない心の言葉が返ってくるだけだ。

 

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三球儀を作る

2022年08月07日 12時32分50秒 | Weblog

毎年開く天文教室、今年の工作は既製品の「三球儀」とした。毎年オリジナルを考えてきたが、最近は仕事が忙しくてとても準備をする余裕が無かったためだ。それでも既製品を袋から出して組み立てるだけでは味気無い。そこで三つの球「太陽」と「地球」と「月」だけはリアルにペイントしたいと考えた。ただ作りかけたものの、真っ白な球に星の模様を描くのは難しい。特に海と大陸のある地上を雲が覆う地球は、かなり絵心が無くては大人でも無理だと周囲に言われてしまった。

仕方なく地球と月は手芸店で求めたビーズ球を流用し、太陽は一回り小さなスチロール球にオレンジ色のプラモデル用カラースプレーを吹き付けただけ。それだけ持って吉備中央町の大和公民館に出掛けた。

吉備中央町の大和地区は岡山県中部の山間地。過疎の進む地区だ。天文教室に参加してくれる子供たちが年々少なくなり、今年はコロナの影響もあって3人になってしまった。公民館のスタッフも含めて参加者は10人だ。
実際に製作に取り掛かったが、このキットはよくできている。合板をレーザーで切り抜いた精密なパーツを組み立てていくと月が地球を、そしてその二つの星が太陽の周りをまわる。それだけに、ほぞ穴への差し込みを少し力を入れてきっちり組まないと仕上がった星が暴走してしまう。みんな真剣に黙々と組み立てていった。

ただきっちり組み立てるためにはかなり力とコツが要る。小さい子は少し力が足りないのかも知れない。そこはスタッフが手助けをする。

そうして始めてからおよそ1時間半で全員完成した。
工作の時間が終わると次は夕方から観望会だ。ゲリラ豪雨と呼ばれるスポット低気圧があちこちに発生している中、気象レーダーの画像を眺めながらやや早めに望遠鏡を設置。時折のぞく上弦の月だけを狙う事にした。

今から25年前、この天文教室が始まった1997年当時は想像もつかなかったのがスマートフォンだ。観望会と言うとみんな大きな望遠鏡を覗いて、そこに見える月のクレーターや惑星、星雲などを珍しそうに眺めるだけだった。しかし今は違う。子供たちはそれぞれ大人から借りたスマートフォンやiPhoneを手に、望遠鏡を通して見える天体を何とか写し取ろうと頑張る。

空全体は雲に覆われてほかの天体を眺めることはできなかったが、子供たちも、スマホを子供に貸しながら自分たちも頑張って画像を手にしたお母さんたちも、みんな手の中のクレーター画像を眺めながら喜んで帰ってくれた。

ただ、校庭を借りたこの大和小学校は再来年度を持って廃校となる。児童の大幅な減少を受けて、役場の有る小学校に統合されることが決まったのだ。四半世紀にわたって続けてきた大和公民館天文教室は、星空の美しいこの地区で、天文家を目指す子供たちを育てるのが目的だった。しかし、公民館で一緒に工作をし星を眺めた子供たちは、その大半が町外の学校に進学し、就職口を求めて町を去っていった。それを責めることはできない。ここでは彼らが求める文化的で利便性の高い生活を送る事が出来ないのだから。
ではどうすればそれが出来るのか。国の政策や自治体の施策を責めるのは簡単だ。しかし僕自身考えてみて、その答えはまだ見つかっていない。

 

 

 

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年越しの準備

2021年12月30日 18時55分39秒 | Weblog

今年の年末はことさら寒波がきついと言う。確かに上空に強い寒気団は来ているし冬型の気圧配置にもなっているが、いつものことで瀬戸内は晴れ間が多い。季節風さえ凌げば年越しの準備くらいは出来る。今日のみかんの丘は、こうして写真にするととても穏やかで、海の向こうの小豆島もまずまず見える。今から22年前、この景色に魅せられて土地を貸して欲しいとおじさんの家の戸を叩いたのだ。ついこの前のような遠い昔。

景色に見惚れていたら北風にほほを叩かれて我に還った。まずは竹取庵の玄関に、来る途中買ったお飾りを取り付ける。去年のものも勿体無いから傍にぶら下げた。丘に生えていた蔓を使って作った竹取庵の看板もずいぶん煤けてしまった。何度か掃除してみたが、普通に拭いただけでは奇麗にならない。ほかの手を使うかな。
部屋の暖炉の上でずっと留守を守っているうさぎ達にもお正月。

竹取庵の近くに去年植えたシークァーサーには土地を貸してくれている山本さんご夫婦(おじさんおばさんの次女のご夫婦)が霜よけのカバーを付けてくれていた。本当に頭が下がる。おじさんもおばさんも他界して、借地代など一度も払った事が無いのに、いつも気を使ってくれているのだ。

今年こそはと新しい機器を手に入れて望遠鏡の整備に入ったが、それと時期をほぼ同じくして仕事が忙しくなり、プライベートの作業はほとんど出来なくなってしまっている。途中まで進んだ大工仕事も自前のOAフロアを半分作ったところでストップしている。

でも多分、何とか目途は付いてきた。と思う。

そう、去年の暮にも言った気がするが、来年こそはこの丘の夜空を再びカメラに収めよう。だって、ここは宇宙(そら)に続く丘なのだから。

 

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超多忙の中の天体ショー

2021年11月20日 23時43分47秒 | 

今週は本当に忙しかった。一週間の中に三つの大きなイベント。その中で予告された今月19日の部分月食だ。部分というからパスしようかと直前に調べてみたら、月が地球の影にほとんど入るという。え、それなら皆既月食に近いではないか。赤い月が見られるかもしれない。

翌日の出張の準備をする傍ら、何とか撮影をと思い立って機材をひっかき集めた。竹取庵はメンテナンスを始めたまま多忙で止まっている。機材のほとんどが岡山の我が家に山積みにされていた。その中からカメラと三脚、それに時々僕のブログに登場する、おもちゃ会社のトミーが昔作ったあの名機ファミスコ60を持って家の近くの旭川土手に急行したのだが・・・

有ろう事かレリーズを忘れてしまっていた。ならばセルフタイマーをとカメラをいじってみたが、長い間使わないうちにカメラの操作方法を忘れている。仕方が無いからブレを覚悟で指で押したシャッター。うまくいったのは上のアップとこの全景の写真だけだ。ただ、幸いなことに全景の写真にはちゃんとプレイアデスも写っている。まあなんとかブログアップには漕ぎ着けることが出来た。

そろそろ仕事はおろそかにしても星の撮影に力を入れなくては。と思いながらもなかなか丘に足が向かないのが悲しい。

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台風接近の中での天文教室

2021年08月23日 00時10分48秒 | Weblog

台風12号の接近とそれに伴う停滞前線の復活の中で、今年も大和公民館の天文教室は始まった。岡山県もCOVID-19(新型コロナ)の新規患者急増で蔓延防止のお触れが出る中での開催。参加者は減るのかと思ったが、受講者は例年通りで、題材がペットボトルロケットだけに大人の比率が多かった。いつも通り公民館の講堂に机を並べて制作に取り掛かる。

と言っても市販のロケットキットにこの教室特製のシールを張り付けるだけ。ところがこのシール貼りが結構難しく、まっすぐ貼るのは至難の業となる。ごめんなさい。何しろ、いつもの張り直しが効くシールは水に弱いため使えない。超耐水を謳ったこのシールは粘着力が極めて強く、一度貼ると張り直しが難しい。なので子供たちはいろんな手を使って貼っていった。

(貼り付けに四苦八苦の参加者)

(こちらは二人掛かりで)

仕上がったらすぐ近くの中学校跡地で発射。この中学校は天文教室が始まったころには生徒も結構いてワイワイ言っていたが、生徒数の減少でもっと人口の多い地区の中学校に統合されて無くなった。つらい話だ。

中学校跡地だけに校庭は広い。ここなら大丈夫だ。というのも、このロケットはペットボトルの中に空気だけ送り込んだら20メートルくらいしか飛ばないが、水を一緒に詰め込むと、吹き出る水の質量の大きさで100メートルを優に超える飛距離が出る。家や車に当たったら大変なのだ。

初めはなかなかうまく飛ばなかったが、水の分量や自転車の空気入れで送り込む空気の圧力の加減のコツをつかむと子供たちは次第に良く飛ばせるようになっていった。

その様子がトップ画像。動画はこちら

https://youtu.be/f0f3wikYkBs

飛べばもちろん面白い。発射の際に反対側に吹き出す水でみんなビショビショになりながら飛ばしていた。しかし昼間の教室が終わる午後4時ごろからぽつぽつと雨が降り始めて解散。夜の部の星空観察もお流れになった。みんな帰りながら聞く。楽しかった。来年は何を作るんですか。  

 

宇宙(そら)に続く丘ホームページ :http://taketorian.org/

 

 

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梅雨の晴れ間にすること

2021年05月31日 22時39分36秒 | Weblog

この週末、移動性の高気圧が梅雨前線を押し下げて西日本は久々の青空となった。この穏やかな日和にしなくてはならないことがひとつ。それは今年の8月に大和公民館で開く天文教室の準備だった。みかんの丘のある岡山県もついに新型コロナの非常事態宣言。最近になって新規感染者はずいぶん減ったものの、いつまた急増するか分からない。そんな中で天文教室をどうするか考えた末に、今回は屋内の作業を極力減らして、ほとんどを校庭のような広い場所で出来るようなことをしようと思い付いた。そのためのアイテムがこれ。

去年は日本の誇る「はやぶさ2」が「リュウグウ」からたくさんの小惑星のかけらを持ち帰ってくれた。日本人宇宙飛行士の活躍も目立った。だったら子供たちにも宇宙を。望遠鏡でながめるだけでなく挑める場として。などと適当に理屈をつけて、前からやってみたかったペットボトルロケットに挑戦することにしたのだ。
ロケットの側面のデザインにはいつもの通り公民館の名前と子供たちの名前を入れるのだが、こうしてみるとこの地区の名「大和」はロケットにぴったりの名前だ。と悦に入りながら竹取庵の横のみかん畑で試作ロケットを飛ばしてみた。ロケットには自転車の空気入れで空気を送り込む。そしてロケットを空に向け、黄色と赤のバルブを下にひくとラッチが外れて飛ぶ仕組みだ。説明書には空気入れで15回ポンピングしろと書いてあったがパンパンに張ってゆくペットボトルが恐くて10回でやめ、バルブを引いて飛ばしてみた。安定しないが何とか飛ぶ。次にあらかじめ70㎖の水を入れてポンピング10回。それがこの写真だ。

説明書には150㎖の水を入れてポンピング15回すると150メートルは飛ぶと書いてあったが、実際は半分の70㎖の水にポンピング10回で優に100メートルは飛ぶ。子供達にはこれで十分だ。歓声を上げながら跳ね回る子供たちの姿が目に浮かぶ。

ところで、この日は久しぶりに丘の番猫はなまるに出会えた。むすめさん夫婦が作業をする小屋の前で行儀よく座って迎えてくれる。嬉しくなって煮干しをあげたらうれしそうに食べてくれた。

初めて出会ったころに比べると少し小さくなったように見えるが、これくらいが健康には良いと思う。

この丘にはもうひとつの名所と言うか不思議空間がある。それがこの通路だ。まるでトトロの通り道。ここを抜けていくと竹取庵の上の畑に出る事が出来る。いつ通ってもワクワクする通路。ずっと以前この丘に上がる「緑のトンネル」の写真をアップしたことが有るが、不思議感はこの「トトロの通り道」が格段上だ。

竹取庵の工事はほとんど進んでいないが、何とか観測デッキのOAフロアーと内装壁面の一部が姿を現した。進まない原因はいろいろあるが、材料調達の大変さもその一つだ。肝心の望遠鏡はまだ覆いをかぶったまま。スズメバチ騒動で塩気のある雨水が浸み込んだwebカメラの代替えが手に入らない。かなり古いので。動きを止めたノートパソコンの代替えは確保しているが、このカメラが無ければ星を正確に追尾できない。どうしてもだめなら、大金はたいてシステムをやり替えるほか無い。

それはあまりにも辛いし、スズメバチに賠償を請求しようにも全滅させてしまった。なのでなんとか出来ないかと中古を物色中。ただ星夜写真くらいなら十分撮れるので、梅雨が明けたらカメラを向けてみようと思う。思えばこのシステムを構築してから13年も経っている。システム再構築も仕方ないのかもしれない。


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伐採された防風林

2021年02月28日 23時25分21秒 | Weblog

竹取庵は建設に掛かってから優に20年を超えている。当時はみかん山の斜面に現れた建設中のログハウスという感じだったが、月日が経つうちにみかんの木の防風林として植えられていた周囲の杉の木が大きく育ち、影がみかんを覆うようになっていた。亡くなったおばさんも「もう肥ばぁ吸うてからに」と悪く言っていたのを憶えている。竹取庵の観測デッキから見ても、当時はっきり見えていた北極星が全く見えなくなり、冬場の月の出も撮影できない。そして、何よりも一番の見せ場だったはずの瀬戸内海が居間からは全く見えなくなってしまっていた。

もちろん僕の畑ではないし、文句を言える立場ではなかったが、おじさんおばさんの娘さん夫婦が竹取庵に木星と土星のランデブーを見に来て、杉が邪魔になっていることを実感されたようだ。ある日杉を切りたいがどうすれば良いかと相談に来た。特に要望は無いが伐採されるなら十分気を付けてと言っていたが、その後ご夫婦と弟さんで重機を使って切られたそうだ。北にそびえていた杉のカーテンがすっかり取り払われ、並んだ切株がなんとも痛々しい。一本の切株の年輪を数えてみたら50を超えていた。

その株の上に立って南を望む。確かに視界が広くなり、海もその手前の入り江もよく見える。左側の広葉樹が少し邪魔かなと贅沢なことを考えたが、そこは別の人の土地だし、お願いすれば承諾はしてくれるだろう。しかし、そこまでしてここまで育った木の命を縮めるのは竹取庵の本意ではない。

 

きょう丘に上がった一番の目的は、崩れたテラスの後始末と桁の補修の準備だった。とりあえず、テラスの有った場所の地面を均してそこにレンガで囲った小さな犬走りを作る。そしてその奥に太い柱を3本立てて桁を補強する。とりあえずそれを済ませて、下にずり下がった桁を点検してみたが、木そのものはさほど風化はしていないようだった。

まずは安心して、今度は観測デッキに上がり、スズメバチ騒動で荒れていたデッキのフロアーの工事に掛かる。以前から撮影中の暗闇で、赤道儀とデスクの上のパソコンをつなぐケーブルに足を掛けやすかった。この際そのケーブルを床の下に収納する。いわばOAフロアーだ。材料のフローリングは、かなり前に職場に出入りしていた大工さんからもらったものがある。それを使わない手はない。と言う訳で今日は床にスペーサーを入れた後、フローリングを7枚張って終了。白い所にはケーブルが入る。これが済むと壁材を張っていくが、その前に屋根と壁の間を閉じる方法も考えなければ。

しばらく休んでいた竹取庵の工事だが、また気の遠くなるような工事が再開した。僕の寿命の範囲では絶対の終わらない。それでも久々に体が心地良い。空には春霞が薄く広がり、月はほぼ満月。星の写真を撮る環境ではないので今日は日暮れとともに丘を降りた。

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おじさんの思い出が一つ消える

2021年01月11日 23時33分06秒 | Weblog

雨ざらしのままで心配はしていたが、今日丘に上がってみると竹取庵の南に張り出していたテラスが崩れていた。
このテラスは竹取庵を作り始めて3年ほどたった2003年の夏に、みかんの丘の持ち主のおじさんがここに作ってほしいと頼んだものだった。もちろん手間もお金も少しずつ掛かったが、テラスはその年の12月に出来上がり、おじさんはその下に古いソファーを持ちこんで、時折そこでたばこをくゆらせていた。満足そうな笑顔を今でも忘れない。僕はそのテラスの上に小さな望遠鏡を据えて、おじさんとおばさんが星だけでなく景色も眺められるようにしておいた。

その、言わばおじさんと僕を繋ぐプラットフォームのようなテラスが崩れた。

材料に使っていた丸柱は元々古い電柱で、クレオソートが圧縮注入されている。しかし桁は普通の材木だ。数年に一度クレオソートを塗り続けていたが、最近劣化が目に見えて進んでいた。よく見ると、テラスの板が接続していた竹取庵本体の桁にまで傷みが及んでいる。

仕方無く応急処置ではなく完全に取り外すことに決めた。何か月も掛けて組み上げたテラスも壊すのはわずか4時間。おじさんとの大切な思い出が一つ消えてしまった。仕方が無いか。思えば17年間も雨ざらしでよく耐えたものだ。おじさんも許してくれるだろう。

廃材はみかん畑の一角に置く。今日は穏やかだが空は曇っていた。もし晴れていても星を見る気にはなれない。次に来た時には床下を片付けて、竹取庵本体の桁の補修をしなくては。

 

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397年ぶりの会合

2020年12月22日 00時33分40秒 | 

空の上で大物が会合をするという。それも397年ぶり。これを撮影しないわけにはいかない。そう思って公私ともに忙しい中を1カ月近く前から無理やり準備してきた。ただ、竹取庵の観測デッキはあのスズメバチ騒動以来放置。望遠鏡もすべて外して、メンテナンスの名目で岡山の家に転がしたままだった。かなり考えて、撮影する望遠鏡を口径8センチのフローライト屈折と決め、手持ちのカメラを全部持ってみかんの丘に上がった。デッキの中はゴミだらけ、埃だらけ。昼過ぎから掃除機と雑巾を使って何とか撮影が出来るところまで漕ぎ着けた。みかんの丘の娘さん夫婦にも見せたいので双眼鏡も準備する。

 

 

久しぶりだ。なんだかワクワクする。そうだ、屋根が開いたところを撮っておこうと竹取庵の外に出た。みかんの色に染まった丘。今年はみかんが豊作で、すでに普通のみかんは収穫をほとんど終え、残っているのはネーブルなどだ。

 

ああ、この風景を撮影するのも何年かぶりだと思いながらデッキに戻って撮影の準備をする。と、南の空に月の姿を見かけた。

今日の会合は大物惑星の木星と土星だが、月の撮影もしてみようか。カメラを東に振って撮ったのがこれ。月齢6.8の幽月だ。

 

幽月とは昼間に見える月。僕が勝手に名付けたものだ。この月も数日前に西の空で土星や木星と立ち話をしているところが話題になっていた。月をとらえて満足し、望遠鏡をもう一度木星と土星に向けなおして空が暗くなるのを待つ。
撮影は屈折望遠鏡の接眼部に焦点距離12ミリのアイピースを取り付け、その後ろにレンズを外したカメラを取り付ける「拡大撮影」という方法だ。西の空の高度20度ほどのところに二つの星がほぼ縦に並んでいるのが見え始めた。カメラをセットしてモニターを見ると、これまで個々に撮影していた巨星が、なんと同じフレームの中に一緒に見える。ピントを合わせ直していくつもシャッターを切った。この季節、気流が悪いのは仕方が無い。しかも高度が低い。沢山撮ったコマの中から選んで画像処理したのがこれだ。

木星の縞を写そうとしたが、そうすると露出不足となって衛星が消えてしまう。と言う訳で、ここは木星の子供たちを優先することにした。
空が暗くなるにつれて星の数が増え始める。雲がほとんどない。素晴らしい眺めだ。ああ、本当に久しぶり。ただ、モニターの中の巨星たちの映像は、低高度で気流を拾い、グニャグニャとクラゲのようだ。仕方が無い。ここで終わろう。次に巨星たちがここまで近づくのは2080年だという。さすがに生きていないだろう。ふふふ。と言う訳でこれがデッキからの最後のショット。

おやすみ、星たち。きっとまた戻ってくるからね。

地平線すれすれの木立の上に輝いているのが木星と土星。よくよく見ると二つが分かれています。

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