既存の科学的施肥設計だと必要量の2倍使うことになっている。
すなわち、半分は流出しているということだ。

以下、「土を育てる」ゲイブ・ブラウン著 NHK出版
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 化学的に土をかき乱すのもダメージは大きい。大量の化学肥料や除草剤を撒き続けることで、土壌の構造と生態系の働きが破壊されてしまう。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のモロー農場では、100年以上にわたってトウモロコシ、大豆、干し草を収穫し続け、結果を分析している。2009年、農場を運営する研究者たちが発表した論文はこう指摘する。「論理的には、化学肥料で投与される窒素量が、作物の収穫によって土から除去される窒素量を上回れば、土壌の窒素量は増えるはずだ」。しかし、モロー農場では、トウモロコシの収穫によって除去された窒素量を60パーセントも上回る窒素を施肥したにもかかわらず、時とともに土壌 の総窒素量が1000平米あたり70~180キロ以上も減少しているという。まったく説明のつかない、ありえない状況だ。

 著者たちは述べている。「過去50年、窒素肥料をほぼ2倍投入しているにもかかわらず、トウモロコシの単一栽培の収量は、輪作の場合の収量より少ない。収量の差は、地中に存在すると見られる窒素量の差と合致しており、この地中の量こそが土壌の生産性の持続のカギをにぎると考えられる。結論は明白だ。現行のアプローチで作物の生産を増やそうとすれば、必然的に土壌の劣化を招いてしまうのだ」

 最後の一文がズシリと重い「現行のアプローチで作物の生産を増やそうとすれば、必然的に土壌の劣化を招いてしまうのだ」。これが事実なのだとすれば、どうして土壌を壊す化学肥料の使用をこのまま正当化できようか?

 なぜこうした結果になるのか、とまどう人もいるかもしれない。その答えは、第3章で解説した「植物と地中の微生物の関係」にある。植物に水溶性の化学肥料を与えれば、程度の差はあれ、その植物は怠けはじめる。もはやそれまでのように炭素を地中に放出して微生物を引き寄せる必要がなくなるからだ。その結果、有益な微生物や真菌の数が減少する。土壌生物が減少すると、土壌の団粒や隙間が減り、水分浸透速度も下がる。その過程で、窒素を固定するバクテリアの数も著しく減少する。これらすべてが土壌生態系の機能の劣化となって表れる。


以上、引用終わり