The Last Tango=Blues/Blue Mitchell | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 いくらBlue Mitchellが好きだからと言って、そしてMainstreamからリリースされている70年代初期の『Blue Mitchell』や『Vital Blue』、Blues' BluesGraffiti BluesといったMitchellのアルバムが大好きだからといって、これは、あまりにもベタなタイトルで、収録されている曲も、“Last Tango In Paris”や“Killing Me Softly With His Song”のような、ややもすれば歌のない歌謡曲的な安直なCoverになってしまいそうな雰囲気、そしてジャケットで微妙な笑みを浮かべているMitchell師匠に、中々手が出せないでいた本盤であるが、大好きなHorace Silverの名曲“Peace”が収録されているからという理由で手に入れてしまったのであった。真っ先に針を下したお目当てのSilverの曲は、あまりにもベタで自分には許容しがたい甘口に仕上がっていて思わずガッカリであったのであるが、全曲通して聴いてみると、このアルバムは結構あなどれないと思ったのであった。なぜなら、泣く子も黙るDavid T. Walkerがギターで参加して、絶妙のバッキングでお得意の流麗なHammer On and Pull OffDouble StopといったDavid T. 節を連発しているのである。このアルバムにはベースのChuck Raineyや鍵盤奏者のCharles Kynard、ドラムスのRaymond Pounds、Baritone SaxのSteve Kravitzといった、当時David T. が参加していたLos AngelesStudio Band Afriqueのメンバーが参加しているのであった(Paul HumphreyもPercussionで参加)。他にもTenor SaxとFluteで名手Jackie Kelso、Alto SaxのDavid Angel、Tenor SaxのHerman Rileyといった連中が参加して黒々と引き締まったリズム隊に実力派管楽器陣がガッツリとFunkyなEnsembleをキメている。結果として本作はベタな選曲があるにもかかわらず中々のJazz Funkなアルバムに仕上がっているのである。やはり70年代前半のMainstreamのBlue Mitchellにハズレはないのであった。

 

 『The Last Tango=Blues』はBlue Mitchellが73年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はピアニストWalter Bishop Jr.作でアルバム『Coral Keys』に収録されていた“Soul Turn Around”。Harlem River Driveの“Idle Hands”を思わせるThemeをガッツリJazz Funk仕様で仕上げている。David T. Walkerのカッテイングが心地良い。MitchellのTrumpetソロがカッコイイっす。そして極め付きはDavid T. Walkerのギター・ソロ

Roberta Flackでおなじみ“Killing Me Softly With His Song”もギター・ソロこそないが、バッキングでDavid T. 節ともいえるギターの妙技が堪能できるナンバー。気持ち良すぎっすなあ。

GuyanaJamaicaSaint VincentのMusicianがLondonで結成したBand Cymandeの名曲“The Message”のCoverはBlaxploitation的なスカしたFunk魂がご機嫌なナンバーに仕上がっている。

Steal The Feel”はDavid T. 師匠のWah-Wah Gutar黒々としたGrooveで扇動すれば、Horn隊はStevie Wonderの“Supertstition”のごときフレーズも飛び出す。

ご存知Gato Babieri作の名曲“Last Tango In Paris”。これが結構イイ感じのJazz Funkになっている。David T.師匠のギター・ソロも渋いっす。

French Horn奏者/作曲家Alf Clausen作のHorace Silverを思わせるBluesyなJazz WaltzOne For Russ”。これは個人的にツボ。

上述の“Peace”。さすがの名曲も、こういうベタな甘口で演奏されるとツラいものがあるのだが、。

アルバム最後をシメるのはMitchell自作の“P.T. Blues”。Wah-Wah GutarHorn隊が黒々とした都会の夜に生きる男のDandyismを描く中、MitchellのTrumpetが闇を切り裂きTenor Saxが続くとCharles KynardHammondが鮮やかに夜を疾走していく。

(Hit-C Fiore)