早朝の薄暗い中、走り去る電車から転がり落ちる男。
男はすでに死んでいた。
そこから、ザ・60年代なおしゃれタイトルムービーがスタート。
文字と一緒に画面をぐるぐる動く色とりどりの線たち。
タイトルデザインは007のタイトルも手がけるモーリス・ビンダー。
ヘンリー・マンシーニの曲と相まって、これから始まる物語に期待が高まります。
そこから舞台はリゾート地のスキー場へ。
旅行に訪れていたレジーナ(オードリー)は夫への不信感から離婚を決意します。
そして、パリの自宅に戻ると夫の姿どころか家財道具が一つ残らず無くなっています。
途方に暮れる彼女の元に警察から連絡があり、夫の死を知ることに。
電車から転がり落ちた遺体は彼女の夫だったのです。
大使館では夫が戦時中に3人の男と軍資金25万ドルを横領し、
仲間を裏切り軍資金を独り占めしようとしていたことを知らされます。
消えた25万ドル。
レジーナは25万ドルの行方を追う3人から追われることに。
3人の男から脅迫されるレジーナはスキー場で知り合ったピーター(ケーリー・グラント)に助けを求めるが
彼もまた3人の仲間だったことがわかり。。。。
消えた25万ドルの行方とレジーナの運命やいかに!?
『シャレード』は1963年に公開されたアメリカ映画。ユニバーサル・ピクチャーで製作。
オードリー・ヘプバーンを主演に描くコミカルなロマンティック・サスペンスです。
スタッフ
- 監督、脚本 スタンリー・ドーネン
- 撮影 ピーター・ストーン
- 編集 ジム・クラーク
- 音楽 ヘンリー・マンシーニ
- タイトル・デザイン モーリス・ビンダー
- オードリー・ヘプバーンの衣装 ユベール・ド・ジバンシィ
- レジーナ・ランパート オードリー・ヘプバーン
- ピーター・ジョシュア ケーリー・グラント
- ハミルトン・バーソロミュー ウォルター・マッソー
- テックス・ペンソロー ジェームズ・コバーン
- レオポルド・W・ギデオン ネッド・グラス
60年代、日本は高度成長期。
カラーテレビの放送が始まり、プロレスラーのジャイアント馬場とアントニオ猪木が台東区立体育館でデビュー。
ソ連が人類初の有人宇宙飛行に成功。
63年という年は、フジテレビ日本初の「鉄腕アトム」が放送され
NHKの大河ドラマがスタート。アメリカでは坂本九の「スキヤキ」が大ヒットした年です。
そんな63年。オードリーは当時33歳。ケーリー・グラントは58歳。
ケーリー・グラントは年齢差のあるオードリーを相手に恋愛劇を演じることに抵抗を感じていたよう。
製作側がそんなグラントの意を汲んで、オードリーの方から心惹かれていくという脚本に変更しています。
たしかに、本作を観るとオードリーがぐいぐい迫ってる!
ファッションについて
とにかくこの映画、60年代ファッションの見本!というくらい。ザ・60年代です。
60年代は激動のファッション革命の時代であり、前期、中期、後期で特色が大きく異なり面白い!
既成の価値観がくつがえされ若者のパワーが炸裂し、ファッションやスタイルに反映されています。
この『シャレード』は60年代前期のファッション満載です。
1954年に『麗しのサブリナ』のためにオードリー自らがジバンシィを訪れてから、
『パリの恋人』(57年公開)、『ティファニーで朝食を』(61年公開)に続くジバンシィの衣装を堪能できる作品となっています。
ゲレンデでのスキールックでは、
ブラウンのプルオーバー、ジャンプスーツ。ブラックのミンクのコートにミンクのハット。
顔の1/3を覆うくらいの大ぶりなサングラス。
オリバー・ゴールドスミスによるこのサングラスはのちにシャレード・グラスとも呼ばれます。
こんな格好でも様になるのはオードリーだからこそなんでしょうね。
パリの自宅に戻ったシーンではライトベージュのコートに同色のシャポー(フランス語で帽子)、白の手袋。
(手袋とバッグはエルメスのようです。)
大使館に行くシーンには、赤いスタンドカラーのウールコート。レオパードの帽子。
黒の手袋に黒のハンドバッグ。
一歩間違うと下品になりそうな、赤✖️レオパード✖️黒の組み合わせ。
そこをエレガントに見せるのは、衣装の仕立ての良さと彼女の人間性あってのことなんだと思います。
レオパードなのにシック!
尾行中のシーンでは、白のトレンチコートと同色の手袋。黒のヒールの低いレインブーツ。
大ぶりなサングラス。頭にはスカーフ。
作中に出てくる衣装は、全体的にコート、スカートの長さは膝丈。ボタンは大きめ。
袖の長さは7分丈(ブレスレットスリーブ)。それに合わせるグローブ。(これ素敵!)
コート以外の時はウエストマークしたワンピースが多かったです。
(オードリーはヒップが無かったのでウエストマークしていたそうですが。)
ドレスアップする時以外は大体つばのない帽子(ピルボックスハット)が多用されていました。
この映画、出てくるコートのラインが素敵なんです。
ラインの綺麗なコートでタバコ吸ったり走り回ったりする姿にうっとり。
ヒールの低いシューズに小ぶりなパールのイヤーアクセがオードリーの魅力を引き立たせていました。
髪型は当時大流行したアップスタイルで、『シャレード夜会巻き』と呼ばれていたそうです。
最近、5CMで聞いた話だと
福岡県内の共学の学校ではポニーテール禁止令なるものがあるそうです。
血気盛んな男子児童の目には毒だということでしょうか!?
※どこかで取り上げていただきたい案件です。
メイクについて
話は戻って、メイクの方はというとアイシャドーは色味を感じさせないスモーキーなカラーに存在感たっぷりなまつ毛。
リップも色味は抑えたピンク系。抑えたリップのおかげで衣装とオードリーの瞳の良さがグッと引き立ちます。
60年代前半は、”大きな目”が美点とされていてぱっちりした目、強いアイラインが人気があったようです。
日本では64年に公開された『月曜日のユカ』の加賀まりこさんのような”たぬき目”が流行っていました。
この時の、加賀まりこさんは神がかってカワイイです!!
まとめ
とにかくオードリーも、ケーリー・グラント含め男性陣もファッションが素敵なのですが
ストーリーも面白かったです。
サスペンスとロマンスのバランスも良く、113分という上映時間も短すぎず長すぎずちょうど良い!
タバコを吸ったり、恐怖に怯えたり、疑心暗鬼になってピーター(ケーリー・グラント)を尾行したり
ピーターにぐいぐい迫ってみたりと、コロコロ表情の変わるレジーナ(オードリー)が魅力的。
レジーナとピーターの軽快なやり取りも素敵でした。
ぐいぐい迫るレジーナを、のらりくらりとかわすピーター。
大人の男の余裕な姿がカッコイイ!!
とはいえ、ぐらりときているのは随所に見て取れます。
ピーターの「25万ドルより無礼な女を選ぶか!?」このセリフ、好きです。
ピーターのシャワーシーンで見せたレジーナの笑顔、コレまた最高でした。
ロマンティック・サスペンスと侮るなかれ。
二転三転するストーリーに最後の大団円。
まさに映画!!な映画でした。