現在首位阪神とは2ゲーム差につけ、中断期間が終わる8月13日からの後半戦からの逆転を狙う読売ジャイアンツ。
怪我人や新型コロナによる選手の離脱など苦しい時期はありましたが、十分に優勝を狙える位置にまでチーム状況も上がってきていますが、大きな課題となっているのが外国人野手。
今季はジャスティン・スモーク、エリック・テームズとMLBで実績を残す選手を果敢に獲得するなど、オフの補強の中では大きなウエイトを占める部分でした。
しかし新型コロナウイルスの影響で新規入国の制限が長期化したことで、来日が大幅に遅れ、両名が1軍に昇格した最初の試合ではテームズがアキレス腱断裂の大怪我を負い、治療のために帰国。
スモークも奮闘を続けていたものの、家族の来日を希望する中で入国制限の解除が全くもって見通せない状況が続き、交流戦終了後に退団の意思を伝え、チームを離れました。
その後はウィーラーの活躍などで大きな穴とまでは行きませんが、外国人枠が空いた状態で前半戦を終えるという状況でした。
そんな中で8月6日、複数のスポーツ紙が巨人が今季シンシナティ・レッズでプレーしていたスコット・ハイネマン外野手と基本合意に達したと報じました。
【巨人】逆転Vキーマン新外国人スコット・ハイネマン獲得へ…走攻守そろった前レッズ28歳外野手、性格も日本向き(スポーツ報知)
巨人が、新外国人選手として前レッズのスコット・ハイネマン外野手(28)の獲得を目指していることが5日、分かった。既に条件面では基本合意に達しているもようで、球団側は背番号「28」を用意している。細部の詰めを経て、正式契約となる見込みだ。
シュアな打撃、堅実な守備、走塁の“三拍子”そろったタイプで、獲得が決まれば8月中の来日を目指す方針だ。首位・阪神を2ゲーム差で追いかける後半戦へ向けて、層に厚みを増す補強になる。
ハイネマンは右投げ右打ちでアベレージを残せる好打者だ。メジャー通算5本塁打、3Aでは通算166試合に出場して打率.304を残すなどシュアな打撃にパンチ力を秘め、広角に快打を飛ばせるのも特長の一つ。15年ドラフト11巡目でレンジャーズから指名を受け、19年にMLBデビュー。
今季はレッズでプレーしたが、19試合で打率.100、2本塁打、3打点の成績でマイナー降格。3Aで17試合打率.279、1本塁打、4打点、4盗塁をマークしていたが、7月19日に自由契約となっていた。
まだ28歳と若く、中堅を本職とした外野の全ポジションと一塁をこなせる守備力と、足も含めた高いアスリート能力も魅力。
レンジャーズ時代を知る米球界関係者が、「とにかくエネルギッシュで労を惜しまず、高い献身性を持つチームプレーヤー」と証言するように、性格も日本向きと判断。さらなる成長も見込めるとして獲得に踏み切った。
今回は巨人が獲得する見通しとなったスコット・ハイネマン外野手について紹介します。
バランスの取れたアスリート型外野手 3A通算打率.304、20本塁打、OPS827と結果を残す
スコット・ハイネマンはアメリカ合衆国・カルフォルニア州出身の28歳。右投右打の外野手です。
2015年ドラフトで11巡目(全体318位)でテキサス・レンジャーズから指名され、プロ入り。ただ入団直後に右足首の手術を受けたため、試合には出場しなかった。
2016年からプロでのキャリアをスタートさせ、2018年に3Aに昇格。
2018年は3Aで107試合打率.295、11本塁打、57打点、OPS.784と活躍を見せ、3Aのオールスターゲームにも出場。またオフには40人枠入りを果たした。
2019年は怪我の影響で出遅れたが、3Aで42試合打率.340、8本塁打、25打点、OPS.966と好成績。活躍が評価されたことで、8月2日デトロイト・タイガース戦でメジャー初昇格、初出場。
メジャーでは25試合打率.213、2本塁打、7打点、OPS.679を記録した。
2020年は主にセンターとして起用され、24試合打率.154、1本塁打、7打点、OPS.454と前年を下回る成績に終わるなど不調だった。
また12月16日には1対1のトレードでシンシナティ・レッズへ移籍。
2021年はメジャーで19試合打率.100、2本塁打、3打点、OPS.506と結果を残せず、6月28日にDFAとなり、マイナー契約を結んで3Aに降格。3Aでは17試合打率.279、1本塁打、4打点、OPS.763を記録していたが、7月19日に自由契約となった。
直後にレッズの球団広報ジェイミー・ラムジー氏のTwitterアカウントから「スコット(ハイネマン)は日本でプレーを継続する見込みだ」とツイートがされており、どの球団が獲得するのか注目を集めていました。
成績で読み解く
上記はスコット・ハイネマンのMLB・3Aでのシーズン成績です。
メジャーでは3年間で通算68試合に出場するも、打率.172、出塁率.249、OPS.573と残念ながらメジャーレベルのボールには対応できずに苦しんでしまったという印象です。
ただその中でも一定数の試合出場数や打席を与えられていたというのは、やはり3Aでの成績の良さが期待を持たれていたからというのがあります。
3A初昇格となった2018年は、107試合打率.295、11本塁打、57打点、OPS.784と好成績。翌年は怪我の影響で出遅れたとはいえ、42試合打率.340、8本塁打、25打点、OPS.966と前年を更に超える数字を残し、初のメジャー昇格を果たしました。
今季は3Aでは17試合打率.279、1本塁打、4打点、OPS.763と3Aレベルでは一定の結果を残せる実力があると証明出来たと言えそうです。
選手としては中距離、アベレージ型と言えそうで、主軸に座るというよりは打線に厚みを増すための役割を任されそうな印象です。
MLBレベルのボールに苦戦傾向 今季は打撃のアプローチ面に変化も
上記はスコット・ハイネマンのMLBでの球種別成績と打撃傾向です。
球種別の成績ですが、シーズン成績の箇所でも触れましたが、かなり苦戦しているというのが明確です。ストレート、ツーシーム、カットボールに対しては一定数の数字やISO、SLGなどを示していますが、変化球の対応にはかなり苦戦している印象です。
特にスライダー、カーブに関しては打率が1割にも満たない事やK%やISO、SLGもかなり低い数字に留まっているという状況となっています。データサイトなどでも打者から逃げる変化球やアウトコースへの対応に課題があると評価をされている選手でもあり、アウトコースへの対応がNPBでの活躍を左右する部分なのではないかと考えられます。
また今季のハイネマンは打席でのアプローチに変化が起きている可能性があります。
まずGB/FBが今季は0.67とフライの傾向が強まり、打球角度やBarrel%が前年を大きく上回るなど、明らかにフライを打とうという意識で打席に入っているのではないかと思える数字が出ています。
打球に角度が付けば、当然ながら長打なども増える可能性はあり、近年のMLBやNPBにおいても実践する選手が多くなり、成績を上げる選手もいることは事実です。
ただ気になるのは打球速度が前年を大きく下回る事やWhiff%の値が明らかに悪化している事です。もちろん打席数などの違いはありますが、打席での意識変化が良い形にはなっていない可能性も考えられます。
ただハイネマンは熱心な姿勢や性格をスカウティングレポートで高い評価を受ける選手だけに、コーチなどのアドバイスなどを受け入れてくれる可能性は高いと思われますし、NPBで改善できるのではないかと思われます。
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MLBでのホームラン集
プレー集
スモークやテームズと比べると長打力という部分をハイネマンが補うというのは難しいでしょうが、一方で坂本、丸、岡本、ウィーラーと中軸を担う選手がしっかりと固まっている事を考えると松原、大城、中島らと共に打線に厚みを増す役割を担うことが求められます。
また巨人の外野陣を見ると、右打ちの外野手がかなり少ない編成となっていて、外野3ポジションをしっかりとこなせるハイネマンを補強し、シーズン中盤からポストシーズンまでの戦いにおいて様々な戦い方をすることも可能と言えそうです。
複数の報道を見ると8月中の来日から9月中の1軍合流という部分が多く見られ、入国後の2週間の隔離から2軍での実戦を経て、1軍合流を考えるとプレー期間は20試合前後になる可能性があります。
年齢的な部分を考えると、来シーズンを見据えた補強もある程度は重きを置いている印象もあります。
現状外国人選手を取り巻く環境は、依然として厳しく、家族の来日が叶わない現状は今後の外国人選手の補強にも大きな影響を与えることは確実で、今オフの補強もどの球団も簡単には進まない可能性があり、ハイネマンが短期間で活躍もしくは2年目以降に期待できる印象を残せるかに注目です。