ichimura-za_kawagoe01

市村正親さんのひとり芝居「市村座」の川越公演に行ってきました。

公演の会場はウェスタ川越。川越駅から歩いて5分ほどのきれいな劇場です。会場は満席でした。
ichimura-za_kawagoe02

市村正親さんは川越出身で、地元での初単独公演だと思います。東京・有楽町の日生劇場でも公演を行っているのに、すぐ近くの川越でも公演を行うというのは、やはり地元への思いがあったんでしょうね。先日もフジテレビ系列の「爆買い★スター恩返し」で川越で旧友と再会したり、出身の幼稚園を訪ねて幼稚園児に歌を歌ってあげたりする様子が放送されていました。楽しい番組でした。その番組の中で川越のみなさんにプレゼントした酒樽がロビーに置かれていました。
ichimura-za_kawagoe03

私はここ何年かはあまり市村さんの舞台はあまり見ていなかったのですが、実は30年以上前からのファンで、かなりの本数の舞台を拝見しています。一番記憶に残っているのは日生劇場の「オペラ座の怪人」です。オペラ座の怪人=市村正親、クリスティーヌ=野村玲子、という伝説のキャストの時です。このキャストはCDになっています(もちろん現在は廃盤)が、先日この音源がオペラ座の怪人の作曲家であるAndrew Lloyd Webberの公式ページで無料公開されたようです。

オペラ座の怪人 (1988 Japanese Cast) – Andrew Lloyd Webber (YouTube)

この音源、私はCDで持っています。これは手放せないと思っていたCDです。ラウル役の山口祐一郎さんも合わせて完璧です。オペラ座の怪人(日本語版)は、別キャストで複数の版のCDが発売されましたが、どうもしっくりいかず、この版が私のバイブルになっています。ファントム役の市村さんはもちろん良いですが、クリスティーヌ役の野村玲子さんの癖のない透き通った声がまたいいんですよね。まだ聞いたことがない方は、まずは8曲目のテーマ曲、

16:27 The Phantom Of The Opera | オペラ座の怪人

を聞いてみて下さい!

で、話を戻しますが・・・、
市村座の今回の公演は役者生活50周年、かつ、今まで出演したミュージカル作品の全作品を取り上げるということで、これは見るしかない!と思ってやってきました。

ひとり芝居と題するこの「市村座」の公演もいままで何度か見たことがあります。市村座は団員が市村正親ひとり(笑)なので、本人も大変でしょうが、見ているこちら側も結構大変です。本当に大丈夫?と心配になっちゃうんですよね。今回も上演時間、1幕と2幕を合わせて2時間10分です。しかもひとりで。6時30分開演でアンコールとカーテンコールを含めて実際に公演が終了したのは21時15分だったので、なんと2時間45分も舞台に立ち続けている、という凄さ。1幕と2幕の間の休憩もたった20分しかないなんて、たった20分じゃ休憩もできませんよね。

ichimura-za_kawagoe04

舞台が始まると、客席1Fの左側のドアからサプライズ登場。「キャ~」いう声援が(笑)。通路を通って、観客と軽いハイタッチをしながら舞台へ。そして市村座のテーマソング「御挨拶替」を歌いながら、観客へご挨拶。

一旦引っ込んだ後に「口上」。袴姿で座布団に座って今日の舞台の内容を説明。その後、長男の優汰くん(14歳)を舞台に招き入れます(次男くん(11歳)は今日は来れないとのこと)。優汰くんは前日に期末試験が終わったんだそうで、市村さんがオープニングで登場する時に黄色い声援を浴びていたのをうらやましい、と市村さんと裏で話していたらしく、それを市村さんにバラされて、すねてました。そうであればせっかくだから、今お客さんに黄色い声援をしてもらいなさい、と市村さんに促されて、お客さん協力のもと、優汰くんにキャ~が浴びせられました(笑)。

そして第1幕は、落語の「死神」を市村座風にアレンジした一人芝居。話の内容は落語の「死神」ですが、市村座ということもあって、ところどころに「オペラ座の怪人」の有名なシーンをもじったやりとりが挿入されたり、ロビーに飾られていた地元川越の銘酒「鏡山」を盛り込んだりと遊び心満載でした。わかっている人はクスってきちゃいます。

休憩20分を挟んで、第2幕は今まで出演したミュージカルを全て紹介するという「五十年間全作品人気楽曲披露」(全て漢字にしているところが笑えます)です。

1973年の劇団四季のイエス・キリスト・スーパースター(現在はジーザス・クライスト・スーパースター)から2021年の「オリバー!」まで、時系列で通り抜けるという企画。私が鑑賞した作品もたくさんあって、とても感慨深かったです。先ほど紹介した「オペラ座の怪人」からはテーマ曲の「オペラ座の怪人」と「ザ・ミュージック・オブ・ザ・ナイト」が披露されました。どちらも一部分のみですが、日生劇場で見たときの感動が蘇りました。この2曲は1980年に紅白歌合戦で披露されたオペラ座の怪人、

「オペラ座の怪人」より(From “Phantom of the Opera”)/市村正親(Ichimura Masachika)(YouTube)

と同じアレンジでした。「オペラ座の怪人」に関しては、先日2月21日のNHKの「うたコン」でも披露されていましたね。

その他にもここでしか聞けない曲が満載。披露される曲の中には古すぎて資料が残っておらず、市村さんの自分の台本だけが映し出される曲や資料が残っていなくてゴメンナサイと本人自ら謝罪する(笑)場面もありました。

そして演目の最後は「御存知十八番『俵星玄蕃』」。いわゆる浪曲というジャンルなんだと思いますが、これがまた良いんですよね。ストーリーは赤穂浪士のスピンオフ的な内容らしいですが、それは理解できなくても、市村さんが歌う節回しの耳障りが良いんです。雪に見立てた紙吹雪が舞う中、歌い続ける市村さんは格好いい!

そして歌い終わると観客がおひねりを舞台に投げ入れる恒例の「おひねりタイム」。お札が貼り付けられた首にぶら下げるタイプのおひねりや色々な変わった形のおひねりも舞台に投げ入れられ、それを全て拾おうとする市村さん。長男の優汰くんも袖から舞台に招き入れて、おひねりを全部拾いきろうとしています。まだ1つ残ってるぞ、と優汰くんに指示する姿、笑えます。

本編が終了し、アンコールまでの間にバンドのみなさんの紹介。各々自分が紹介される時にソロで演奏します。バンドの紹介の最後に市村さんが再登場。今回のアンコールは、市村さんの今までの舞台に対する思いを歌詞にしたものに、ピアノ担当かつ音楽監修の上柴はじめ氏が曲をつけた新曲「役者ほど素敵な人生はない」が披露されました。スクリーンには市村さんが出演した全公演の一覧(ミュージカル、ストレートプレイを含め全公演)がスクロールされるなか、この曲を聴いているとジーンときました。

市村さん、本当におつかれさまでした。
そしてこれからもできるだけ長く、私たちに素敵な舞台を見せてください!