735) がんになったら甘い果物は止めなさい(その2):フルクトース(果糖)は体に有毒である

図:穀物(米、小麦、トウモロコシ、イモ類など)に含まれる糖質はグルコースが多数結合したデンプンが主体。果物や清涼飲料水やケーキやアイスクリームなどにはグルコースやフルクトースのような単糖類と、グルコースとフルクトースから構成される蔗糖(スクロース)や異性化液糖(高フルクトース・コーンシロップ)が多く含まれる。グルコースに比べてフルクトースは血糖上昇作用やインスリン分泌刺激作用は弱い。しかし、甘味による脳の報酬系の刺激作用、肝臓におけるインスリン抵抗性の誘導作用、肝臓における中性脂肪合成亢進、脂肪肝の発症、高脂血症・動脈硬化・虚血性心疾患の発症促進、肥満・2型糖尿病・メタボリック症候群の発症促進、がんの発生や進展の促進、タンパク質の糖化や老化の促進などの作用においては、フルクトースの方がグルコースより強い。つまり、グルコースよりフルクトースの方が体に対する毒性がより強く、健康に悪いと言える。

735) がんになったら甘い果物は止めなさい(その2):フルクトース(果糖)は体に有毒である

【なぜ果物にフルクトース(果糖)が含まれるのか】
生物は生存や繁栄に有利なように進化していきます。動けない植物が動物から食べ尽くされないように様々な毒を持っているのも進化の結果です。
さて、果実というのは、その植物の種子を含みます。植物は動けないので、その種を繁栄させるためには、できるだけ多くを遠くまで運んでもらう方が有利になります。
つまり、動物に多く運ばれるほど種の繁栄につながります。

そこで、動物に多く食べてもらい、遠くへ種子を運んでもらうために種子の周りにカロリーが多く、甘味の強い糖分(つまり果糖)の多い果肉をつけるようになった(進化した)と言われています。
果糖の甘みはブドウ糖の2倍以上と言われています。
つまり、果糖の多い果実をつけるほど種の繁栄に有利になり、自然淘汰に生き残ることになります。

一方、多くの果実は秋(つまり、冬の前)に熟します。太古の昔は、冬になると食糧が極端に少なくなります。フルクトースは体脂肪を増やす作用があります。余ったカロリーを効率よく脂肪に変換する特徴があります(後述)。
つまり、食糧が少なくなる冬になる前に、フルクトース(果糖)を多く摂取して体脂肪を増やしておくことは動物の生存にも有利になります。

植物がカロリーと甘味の強いフルクトースを多く含む果実をつけることによって動物が多く食べることによって種子を遠くへばらまくことができます。一方、フルクトースを多く摂取することは動物にとって食糧の少ない冬を乗り切るのに有利になります。つまり、植物と動物の利害が一致することになります。

【用量が毒を決める】
毒も少量を使えば薬になる」ことがあります。逆に「薬でも多く服用すると毒」になります。
食べ物も過剰に摂取すれば体に有害になります。
体に必須のビタミンやミネラルでも過剰摂取するといろんな副作用(過剰症)がでてきます。
用量が毒を決める(The dose determines the poison)」というのはパラケルスス(Paracelsus: 16世紀に活躍した医学者兼錬金術師)の言葉です。どんなものでも摂取量が多くなれば毒になりうるということです。

体に悪い食品のリストを作成すると、何がトップになるかは意見が分かれるかもしれません。動物性脂肪や加工肉(ベーコンやハムなど)や高温で加熱調理した赤身の肉は健康に良くない食品です。
しかし、栄養学の専門家の多くがトップにもってくるのは「精製した砂糖(refined sugar)」、つまり白砂糖です。
精製した砂糖など糖類の摂り過ぎが肥満や2型糖尿病やメタボリック症候群やがんや認知症など多くの疾患を増やしていることは、多くの研究者が指摘しています。

糖類(ブドウ糖や果糖などの単糖類と蔗糖などの二糖類)の摂取量に関して、世界保健機関(WHO)は2014年3月に発表した新しい指針(案)では摂取カロリーの5%以下(1日の糖類摂取量を約25g以下)にすることを目標にしています。
最近は、白砂糖よりも異性化液糖(高果糖コーンシロップ、果糖ブドウ糖液糖などとも呼ばれる)の有害性が問題視されています。

砂糖も異性化液糖もともにグルコースとフルクトースの2種類の単糖からなります。砂糖(蔗糖)はこの2つの単糖が結合している二糖ですが、異性化液糖はそれぞれが単体で存在するので、小腸からの吸収は砂糖より早いので健康により悪いと言えます。
異性化液糖の場合、グルコースよりフルクトースの含有割合が高い場合はさらに有害性が高くなるかもしれません。グルコースよりもフルクトースの摂り過ぎが特に健康に悪いと考えられているからです(後述)。
精製した糖質や砂糖やこれらで作ったお菓子やジャンクフードはエンプティ・カロリー(empty calories)といって非難されています。エンプティ・カロリーというのは、カロリーだけしかなく体を作る栄養素(タンパク質やビタミンやミネラル)が含まれていなことを意味します。
カロリーがあればエネルギー産生の役にはたちます。しかし、体に有害作用があれば、カロリーのメリットは無くなります。
フルクトースはエンプティカロリーの一種であることは間違いありませんが、単なるエンプティカロリーよりもっと悪く、健康を害する作用があるという意見が多くあります。
例えば、以下のような総説論文があります。米国メリーランド大学医学部の内分泌学の研究者からの論文です。

Fructose consumption and cancer: is there a connection?(フルクトース消費とがん:関連があるのか?)Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 19(5):367-74.2012年

【要旨】
この総説の目的:がん細胞の代謝はグルコース(ブドウ糖)の取込みと嫌気性解糖系が亢進しているのが特徴である。先進国では砂糖(糖類)の消費が顕著に増えており、特に米国では精製したフルクトース(果糖)の摂取量がこの30年間で急激に増加している。
フルクトースは解糖系においてグルコースに代わる炭素骨格を供給するが、解糖系の2つの律速段階を飛び越えてその下流のグルコースの代謝系に入り込む。(注:フルクトースの代謝はフィードバック制御がかからないということ)
解糖系はがん細胞の増殖を支える主要なエネルギー産生源であることから、この総説では、グルコースとフルクトースの解糖系での代謝の制御に焦点を当て、さらに、フルクトースががん細胞の増殖を促進するメカニズムについて考察する。

最近の研究報告:疫学研究から、フルクトースの摂取量の増加が膵臓がんと小腸がんの発生リスクを高めることが示されている。その他のがんのリスクとも関連する可能性がある。フルクトースはペントース・リン酸経路を亢進し、タンパク合成を促進し、その結果、間接的にがん細胞の増殖を促進する可能性が示唆される。培養細胞を使った実験では、フルクトースががん細胞の悪性度を高め転移を促進する可能性が示唆されている

まとめ:グルコースはがん細胞の増殖を全体的に促進するが、フルクトースはタンパク合成を促進し、がん細胞の悪性度を高める作用がある。現代の食生活においてフルクトースの摂取量が増えており、特に子供や若い成人において消費量が高い。したがって、フルクトースの健康に及ぼす影響を理解し、慢性疾患の発生にどのように関与しているかを理解することは重要である。

フルクトースががんの発生や進展に悪い影響を及ぼすかどうかはまだ確定しているわけではありません。ただ、複数の疫学研究で、フルクトースの摂取量の増加が幾つかのがんの発生リスクを高める結果が報告されています。
また培養がん細胞を使った実験で、培養液にフルクトースを添加すると同じ濃度のグルコースより増殖が促進したり、浸潤性や転移能が高まる実験結果が報告されており、フルクトースの摂取はがんに悪影響を及ぼす可能性が報告されています。

100%果物ジュースががんの発生リスクを高めることを前回(734話)解説しました。果物にはグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)とスクロース(蔗糖)の糖類が多く含まれることが発がんリスクと関連しています。
現時点までの研究結果からは、がん患者さんはフルクトースの摂取は減らした方が良いと言えます。

【フルクトースとグルコース】

それ以上に加水分解されない糖類を単糖(monosaccharide)と言います。複数の単糖が結合すると、結合した単糖の数に応じて、二糖オリゴ糖多糖という大きな糖類になります。

生物にとってエネルギー源となる単糖の代表はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)です。ともに6つの炭素から構成され、化学式はC6H12O6で同じですが構造が異なります(異性体という)。
蔗糖(スクロース)はグルコースとフルクトースが一個づつ結合した二糖です(下図)。

図:スクロース(蔗糖)はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した2糖で、澱粉はブドウ糖が多数結合している。これらの糖質は消化管の消化酵素でそれぞれの単糖に分解されて体内に吸収される。

食事から摂取する糖質の代表は、穀物やイモ類などに含まれる澱粉(デンプン)ですが、澱粉はグルコースが多数重合した多糖で、植物が光合成で作り出します。
動物は食品中に含まれる澱粉を消化管内の消化酵素で最終的にグルコースまで分解して小腸から吸収し、細胞内に取込まれたグルコースは解糖系とTCA回路と電子伝達系によってエネルギー(ATP)を作って、生命活動に使用することになります。


一方フルクトース (fructose)は、果糖(fruit sugar)とも呼ばれるように果物に多く含まれます。全ての糖の中で最も水に溶けやすく、甘みは砂糖の1.5倍以上、グルコースの2倍以上あり、しかもコストが低いので、加工食品や飲料の甘味剤として多く使われています。

砂糖や異性化液糖がデンプンより健康に悪い理由の一つは、砂糖や異性化液糖はグルコースの吸収が早いので、インスリンの分泌刺激が強いからです。
砂糖と異性化液糖の半分はフルクトースであるため、グルコース単独のデンプンより健康に良さそうに思われるかもしれません。実際は逆で、砂糖と異性化液糖はフルクトースを半分含むので健康に悪いということになっています。その理由は数多くあります。

【グルコースを異性化すると甘いフルクトースに変わる】
穀物の糖質は主にデンプン(澱粉)です。前述のごとく、デンプンはグルコース(ブドウ糖)が多数結合した構造をしており、デンプンを酸や酵素で分解するとグルコースが得られます。
グルコースはインスリンの分泌を促進し、あまり甘くありません。

一方、グルコースの異性体であるフルクトースは非常に甘く、しかもインスリンの分泌を刺激しません。インスリンのグリセミック指数は19でグルコースの5分の1です。
異性体というのは分子式は同じですが、原子の結合状態や立体配置が異なるために異なった性質を示す化合物です。グルコースとフルクトースの分子式はC6H12O6ですが、構造が少し違います(下図)。

図:グルコースとフルクトースは異性体の関係にあり、ともに分子式はC6H12O6であるが、立体構造が異なる。グルコースはインスリン分泌を刺激し、甘くない。一方フルクトースはインスリン分泌を刺激せず、非常に甘い。

砂糖の主成分であるスクロース(蔗糖)はグルコースとフルクトースが結合した二糖類です。砂糖が甘いのはフルクトースが含まれるからです。
フルクトースは天然に存在する糖の中で最も甘く、グルコースの2.3倍、蔗糖の1.7倍の甘さがあり、特に冷たい条件で甘味が増すため、清涼飲料水やアイスクリームの甘味を増すために添加されています。

グルコースをイソメラーゼという酵素やアルカリで処理するとフルクトースに変換(異性化)できます。デンプンを分解して得たグルコースの一部をフルクトースに異性化したものが異性化液糖と言われるものです。
グルコースの一部をフルクトースに変えることによって甘味を増すのが目的です。砂糖と同様にグルコースとフルクトースの2つの単糖からなり、砂糖よりも安価に製造できるため、砂糖の代わりに清涼飲料水など多くの食品に使用されています。

日本では、フルクトース(果糖)の含有率が50%未満のものをブドウ糖果糖液糖、フルクトース含有率が50%以上90%未満のものを果糖ブドウ糖液糖、フルクトース含有率が90%以上のものを高果糖液糖と呼んでいます。

米国ではトウモロコシのデンプン(コーンスターチ)を原料に作成した高フルクトース・コーンシロップ(high-fructose corn syrup)が多くの飲料や食品に添加されています。高フルクトース・コーンシロップの多くはフルクトースが55%、グルコースが45%の組成になっています。

フルクトースはグルコースに比べてインスリン分泌を刺激する作用が弱いので、肥満や糖尿病を防ぐ作用があるように思われますが、実際は全く逆で、肥満や糖尿病や高脂血症や動脈硬化やがんを増やすことが明らかになっています。

【フルクトースは多く摂取すると毒になる】
フルクトースが生理的に存在するのは精液の中だけです。精子のエネルギー源になるためです。しかし、フルクトースは体内でグルコースから生成されるので、食事から摂取する必要はありません。つまり、食事から摂取する必要のない栄養素と言えます。
フルクトースを摂取すれば体内でエネルギー源にはなるので、適量であれば問題はありません。摂取カロリー量が消費カロリー量を超えなければ、理論的には肥満を引き起こすことはありません。しかし、摂取カロリーが過剰な状況になると、フルクトースは人間の代謝に対して悪い作用を示すことになるのです。

フルクトースは甘味が強いので、脳の報酬系を刺激して甘味中毒を引き起こし、食事の摂取量を増やします。タンパク質を糖化する作用が強く、動脈硬化や皮膚の老化を促進します。
活性酸素の産生を増やし、肝臓における中性脂肪の合成を促進し、高脂血症を引き起こします。さらにインスリン抵抗性を高めて、肥満や2型糖尿病やメタボリック症候群を引き起こします。さらにがんの発生や進展を促進します。

摂取カロリーが消費カロリーを上回っているのが肥満の第一の原因であることは明らかですが、フルクトースは食事摂取量を増やし、いくら摂取しても満腹にはならず、余ったカロリーを脂肪に変換させるので、肥満を促進する作用があります。
このような作用はアルコール摂取と似ているという指摘があります。果糖には人を酔わせる作用はありませんが、その不健康作用はアルコールと匹敵すると言われています。
アルコールは適量であれば、寿命を延ばすということになっています。血液循環を良くして心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを低下させるからです。しかし、フルクトースにはそのような作用は報告されていません。
カロリーが過剰な状況で、お菓子や果物や清涼飲料水から多量のフルクトースを摂取するのはアルコールより健康に悪い可能性があります。

【フルクトースが肥満を増やしている】
米国ではこの30年の間に肥満が2倍以上に増えていますが、ちょうど高フルクトース・コーンシロップの消費量が増えた時期と重なるため、米国を含め世界中で起こっている肥満やメタボリック症候群の増加の原因としてフルクトースの摂取過剰が指摘されるようになっています(下図)。

図:米国では1970年代以降、高フルクトース・コーンシロップ(high-fructose corn syrup: HFCS)の消費が急速に増えている。

フルクトース(果糖)はグリセミック指数が低く、インスリン分泌を刺激しないので、グルコース(ブドウ糖)よりも健康的で、肥満を起こしにくいと思っている方は多いようです。インスリンは体脂肪の合成を促進し、肥満を促進します。 
しかし、フルクトースは肝臓に取込まれて中性脂肪に変換されやすい糖です(この理由は後述)。食事からのカロリー摂取が過剰でなければグルコースに変換されてエネルギー源として使われるので肥満は起こしませんが、摂取カロリーが過剰な場合は、フルクトースの量が多いほど体脂肪を増やしやすいのです。

さらに、フルクトース自体はインスリン分泌を刺激する作用は弱いのですが、フルクトースはグルコースのインスリン分泌刺激を増強するという報告があります。(フルクトースはc-Jun N末端キナーゼ-1を活性化してインスリンレセプター基質-1の発現を亢進するという機序などが報告されている)
つまり、フルクトースとグルコースを一緒に大量に摂取すると、インスリン分泌が増えて肥満やがんの発生を促進する可能性が指摘されています。したがって、高フルクトース・コーンシロップなどの異性化液糖や果物や蜂蜜に含まれる糖分(ブドウ糖と果糖と蔗糖が多い)は、デンプン(グルコースが多数結合したもの)が主体のご飯やパンよりも肥満を促進する作用が強いということになります。

フルクトースの肥満促進作用が指摘されてから、最近は高フルクトース・コーンシロップの消費は減少傾向にあります。しかし、肥満は減少していないので、肥満の原因は他にもあると考えられています。砂糖の消費が減って増えたのが人工甘味料で、最近はカロリーゼロの人工甘味料が肥満を増やしている可能性が指摘されています。(人工甘味料が肥満を起こすメカニズムは348話を参照)
いずれにしても、甘味に執着していては肥満は減少できないということです。

【フルクトースは肝臓で全て取り込まれる】
食事に含まれるグルコースは消化管から吸収されて門脈に入ってまず肝臓に入りますが、肝細胞に取込まれるのは20%程度で、多くは全身の細胞に運ばれてエネルギー産生に使われます。グルコースは全ての細胞のエネルギー産生に必要なので、エネルギー産生量に応じて分配されるように制御されています。そして、余ったグルコースは肝臓や骨格筋や脂肪組織でグリコーゲンや脂肪として貯蔵されます。

一方、フルクトースはほぼ100%が肝細胞に取り込まれます。フルクトースを取込むグルコーストランスポーター5(GLUT5)は肝細胞にしか発現していないからです。(がん細胞はGLUT5の発現が亢進してフルクトースをエネルギー源として利用している)
グルコースとフルクトースはヘキソース(六炭糖)と言います。これらヘキソースの6位のヒドロキシル基(OH基)をリン酸化するのがヘキソキナーゼです。
グルコーストランスポーターから取り込まれたグルコースがヘキソキナーゼでリン酸化されるとグルコーストランスポーターを通ることができなくなります。つまり、細胞内に取り込まれたグルコースを細胞内に止めるためにリン酸化するのがヘキソキナーゼです。
6位がリン酸化されてグルコース-6リン酸に変換されたあと、解糖系で代謝され、さらにTCA回路と電子伝達系でATPが産生されます。

【フルクトースの代謝はフィードバック阻害が効かない】
解糖系ではグルコース-6リン酸からイソメラーゼでフルクトース-6リン酸に変換され、さらにホスホフルクトキナーゼで1位がリン酸化されてフルクトース-1,6ビスリン酸になり、さらにジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒドに分解されて解糖系が進行します。
この解糖系ではヘキソキナーゼとホスホフルクトキナーゼのところでフィードバック制御を受けています
つまり、グルコースが細胞内に多く取り込まれてATPが十分に産生されれば、解糖系の進行を止める制御機構が存在します。

ヘキソキナーゼはその反応産物であるグルコース-6リン酸で阻害され、ホスホフルクトキナーゼはTCA回路で生成されるクエン酸と電子伝達系で産生されるATPによってフィードバック阻害を受けます。解糖系がストップするとグルコース-6リン酸からグリコーゲン合成が進行して余ったグルコースはグリコーゲンとして貯蔵されます。

肝臓に存在するヘキソキナーゼはグルコースに特異的なグルコキナーゼで、フルクトースの6位をリン酸化するヘキソキナーゼがありません。
肝細胞内に入ってきたフルクトースはまずフルクトキナーゼで1位の水酸基がリン酸化されてフルクトース-1リン酸に変換され、さらにアルドラーゼでフルクトース-1,6ビスリン酸からジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒドに分解されて解糖系に入っていきます。

ヘキソキナーゼや解糖系によるグルコースの代謝は、細胞内エネルギーの状態やインスリンレベルによって厳密に調節されていますが、肝細胞に入ったフルクトースは、解糖系のフィードバック制御が行われるヘキソキナーゼとホスホフルクトキナーゼの反応系をバイパスして解糖系に入るので、フルクトースの解糖系での代謝は歯止めがなく、入ってきたフルクトースは全て解糖系で代謝されることになります(下図)。

図:肝臓において、フルクトースはフルクトキナーゼでフルクトース-1リン酸に変換されて、ついでフルクトース-1,6−ビスリン酸、グリセルアルデヒド-3リン酸に代謝されて解糖系に入っていく。解糖系はヘキソキナーゼとホスホフルクトキナーゼのステップでフィードバック阻害を受けているので、グルコースの取込みが多くなると解糖系は反応がストップするように制御されている。しかし、フルクトースはこの2つの制御をバイパスして解糖系に入るので、フルクトースが肝細胞に多く取り込まれると、全てが解糖系とTCA回路で代謝される。フルクトースは脂肪合成に関与する酵素の活性を高めるので、アセチルCoAから脂肪酸合成の経路が促進されて中性脂肪の合成が亢進し、肥満や高脂血症や動脈硬化や脂肪肝の発症を促進する。

【フルクトースは肝臓での中性脂肪の合成を促進する】
空腹時にグルコースが不足しておれば、フルクトースはフルクトース-1,6ビスリン酸から解糖系を逆に進む糖新生によってグルコースに変換され血糖の維持に使われます。
エネルギー産生が足りなければ、フルクトースは解糖系とTCA回路と電子伝達系でATP産生に使われます。
細胞内のATPが十分であれば、TCA回路で産生されたクエン酸はミトコンドリアを出て細胞質内でアセチルCoAに変換され、さらに脂肪酸合成へと進みます。
フルクトースは脂肪酸を合成する酵素系の発現と活性を高める作用があります。

グルコースとフルクトースを同時に摂取した場合(砂糖や異性化糖液や果物)は、グルコースが解糖系とTCA回路を占拠するため、フルクトースはもっぱら脂肪合成に回されることになります。フルクトース単独よりフルクトースとグルコースを一緒に摂取すると脂肪合成は3倍になると報告されています。
フルクトースを多く摂取すると食後の血中の中性脂肪やLDLコレステロールの濃度が上がることが知られています。
LDLコレステロールは、肝臓でつくられたコレステロールを各臓器に運ぶ働きをしている低比重リポたんぱくのことです。細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血管内に放置し、動脈硬化を引き起こす原因となります。

【フルクトースは肝臓のインスリン抵抗性を高める】
フルクトースの過剰摂取が肝臓における炎症を引き起こし、非アルコール性脂肪肝の原因になり、さらにインスリン抵抗性を高めて肥満糖尿病メタボリック症候群を引き起こすことが報告されています。
極端な摂取でなくても、中等度の摂取でインスリン抵抗性を高めることが臨床試験で確認されています。以下のような報告があります。

Moderate amounts of fructose consumption impair insulin sensitivity in healthy young men: a randomized controlled trial.(中等量のフルクトース摂取が健常な若い男性におけるインスリン感受性を障害する:ランダム化対照試験)Diabetes Care 36(1): 150-156, 2013

【要旨】
背景:高カロリーで高フルクトースの食事が、ヒトにおいてインスリン感受性と脂質代謝に悪い影響を及ぼすことは多くの研究で繰り返し指摘されてきた。しかしながら、通常量のフルクトース摂取の影響については十分に検討されていない。この研究では、中等量のフルクトースとスクロース(蔗糖)の摂取が糖代謝と脂質代謝に及ぼす影響を検討し、グルコース単独摂取の場合と比較した。

方法:健康で正常体重の男性ボランティア(21から25歳)9人がこの二重盲検ランダム化クロスオーバー試験に参加した。被験者は4種類の異なる糖類を添加した飲料(1日600ml)をそれぞれ3週間づつ摂取した。その4種類とは1日40gのフルクトース、1日80gのフルクトース、1日80gのグルコース、1日80gのスクロース(蔗糖)であった。内因性のグルコース産生、空腹時の血清脂質、血糖値、インスリン濃度を測定した。

結果:インスリンによる肝臓におけるグルコース産生量の低下は、高グルコース(グルコース80g/日)に比べて高フルクトース(フルクトース80g/日)で有意に低かった。抑制率は高フルクトース摂取群で59.4 ± 11.0%、高グルコース群で70.3 ± 10.5%で、統計的に有意の差であった。(注:インスリンは肝臓におけるグルコース産生を抑制する作用があるので、この結果はフルクトース摂取がグルコース摂取に比べてインスリン抵抗性を高めることを意味する
しかし、空腹時の血糖、インスリン濃度、C-ペプチドには差は認めなかった。(注:C-ペプチドはインスリンが合成される前段階のプロインスリンが、分解されるときに発生する物質で、ほとんどが分解されないまま血液中を循環し、尿とともに排出されるので、血中や尿中のC-ペプチドを測定すると、インスリンがどの程度膵臓から分泌されているのかが評価できる。)
高グルコース摂取(グルコース80g/日)に比べて、中用量フルクトース(フルクトース40g/日)と高用量フルクトース(フルクトース80g/日)、高用量スクロース(スクロース80g/日)を摂取した群では、LDLコレステロールと総コレステロールの値が有意に上昇した。
フリーの脂肪酸は中用量フルクトース摂取で有意に上昇したが、高用量フルクトース群と高用量スクロース群では上昇は認めなかった。試験中のエネルギー摂取量は試験開始前と変化はなかった。

結論:1日40gという中程度のフルクトースあるいはスクロース摂取は、同程度の量のグルコースと比べて、肝臓のインスリン感受性を低下させ、脂質合成を高めることがこの研究で示された。

極端に多い量のフルクトースでなくても、1日40gのフルクトースを毎日摂取すると肝臓でのインスリン抵抗性を高めて中性脂肪やコレステロールの合成を高める作用があるということです。
食品に含まれている糖類(グルコース、フルクトース、スクロースなど)の半分以上がフルクトースなので、全糖類摂取量が80gくらいの摂取で糖質と脂質の代謝系に大きな悪影響が起こる可能性を示唆しています。

現在では、多くの食品に砂糖や異性化液糖(果糖ブドウ糖液糖など)が加えられており、米国では全フルクトース摂取量の平均は一人1日80gを超えています
日本でも、砂糖の多いお菓子やケーキや清涼飲料水を多く摂取している人は1日40g以上のフルクトースは摂取しています。

【フルクトースは老化を促進する】
タンパク質を糖化する作用はフルクトースはグルコースの7倍といわれています。タンパク質の糖化は老化を促進します。長期的に大量のフルクトースを摂取していると糖化や老化を促進することが報告されています。以下のような報告があります。

Long-term fructose consumption accelerates glycation and several age-related variables in male rats.(オスのラットにおいて、長期におよぶフルクトースの摂取は糖化と老化関連事象を促進する)J Nutr. 128(9): 1442-9, 1998

1970年代からフルクトースの摂取量が増えており、フルクトースは他の還元糖と同じようにタンパク質をメイラード反応を介して糖化し、糖尿病における様々な合併症の発症と関連し、老化を促進する作用が指摘されています。
そこでこの論文では、ラットを使って実験しています。
飲み水として、250g/Lの濃度でフルクトース、グルコース、スクロース(蔗糖)の糖類液を作成して自由に飲ませ、タンパク質の糖化の度合いや脂質過酸化の程度、皮膚のコラーゲンのクロスリンクの程度、糖化最終生成物(Advanced glycation end products)を比較しています。

この3群の間に血糖値(血中のグルコースの濃度)には差はみとめませんでしたが、グルコース投与や蔗糖投与群に比べて、フルクトース投与群では、血中のフルクトース、コレステロース、フルクトサミン、糖化ヘモグロビンの濃度が有意に上昇し、尿中の過酸化脂質の指標も上昇していました
皮膚のコラーゲンの糖化やクロスリンクの程度がフルクトース投与群で最も高かったということです
つまり、この実験結果はフルクトースの摂取量が多いと老化を促進する可能性を示唆しています。

炭水化物は、水酸基(-OH)を多数持ち、さらに、アルデヒド基(-CHO)またはケトン基(>C=O)のどちらかを持っています。アルデヒド基を持つ単糖をアルドース(ポリヒドロキシアルデヒド)といい、ケトン基を持つ単糖をケトース(ポリヒドロキシケトン)といいます。
酸素原子と二重結合でつながっている炭素を末端に持つものがアルドースで、内部に持つものがケトースということになります。グルコース(ブドウ糖)はアルドース、フルクトース(果糖)はケトースになります(下図)。

 

図:糖質は水酸基(-OH)を多数持ち、アルデヒド基(-CHO)かケトン基(>C=O)を持つ。アルデヒド基を持つ単糖をアルドース、ケトン基を持つ単糖をケトースと呼ぶ。グルコースはアルドースで、フルクトースはケトースになる。グルコースもフルクトースも還元性をもち、タンパク質やアミノ酸と結合する。

分子内に遊離性のアルデヒド基やケトン基を持っていると還元性を示すので、このような糖類を還元糖と言います。「還元」というのは、他の物質から酸素を奪い、自分は酸化される性質です。
この還元糖の性質があるため、グルコースやフルクトースはタンパク質やアミノ酸と反応します。

料理で食材を加熱すると、グルコースやフルクトースのような還元糖とアミノ化合物(タンパク質やペプチドやアミノ酸)が反応して様々な物質ができます。これらの物質は料理の味や香りや色とも関係しています。
この反応はアミノカルボニル反応、あるいは発見者の名前をとってメイラード(Maillard)反応と呼ばれています。
このメイラード反応は非酵素的な反応で、加熱によって短時間で進行しますが、常温でも長い時間をかけて進行します。ホットケーキを焼くと褐色になるのは、卵や牛乳のタンパク質と砂糖が反応するからです。味噌や醤油の色もメイラード反応によって生成した成分の色です。
生体内でグルコースやフルクトースなどの還元糖がタンパク質に結合する糖化反応も生体内で起こるメイラード反応です。

体内で生成した糖化タンパク質はその後分解して様々な低分子物質が生成します。これらの物質を糖化最終生成物(advanced glycation endproducts;AGE)と言います。AGE(エイ・ジー・イー)というのは糖化反応による生成物の総称で、多数の種類が知られています。このAGEという物質が、さらにタンパク質を変性させ、炎症や酸化ストレスを高めて老化を促進します。
AGEは細胞や組織の働きを障害します。すなわち、AGEは細胞外の結合組織に蓄積して結合組織のタンパク質(コラーゲンやエラスチンなど)をクロスリンク(架橋)して、弾力性を低下させます。これは血管や皮膚が硬くなる原因になります。

AGEは細胞のタンパク質も架橋して変性させます。グルコースが細胞質内の解糖系で代謝される途中の物質がタンパク質を糖化させることが知られています。
糖の摂取が多くなり、細胞内での糖代謝が亢進すると細胞内のAGEも増えます。細胞膜や細胞内のタンパク質にAGEが結合すると細胞の老化が進み、働きが低下します。

【フルクトースは多く摂取すると毒になる】
フルクトースが生理的に存在するのは精液の中だけです。精子のエネルギー源になるためです。しかし、フルクトースは体内でグルコースから生成されるので、食事から摂取する必要はありません。つまり、食事から摂取する必要のない栄養素と言えます。
フルクトースを摂取すれば体内でエネルギー源にはなるので、適量であれば問題はありません。しかし、フルクトースは摂取量が多くなると、人間の代謝に対して悪い作用を多く持っています。

フルクトースは甘味が強いので、脳の報酬系を刺激して甘味中毒を引き起こし、食事の摂取量を増やします
糖化作用が強く、動脈硬化や皮膚の老化を促進します。
活性酸素の産生を増やし、肝臓における中性脂肪の合成を促進し、高脂血症を引き起こします。さらにインスリン抵抗性を高めて、肥満や2型糖尿病やメタボリック症候群を引き起こします。
さらにがんの発生や進展を促進します。(フルクトースの発がん促進作用については329話で解説しています)

摂取カロリーが消費カロリーを上回っているのが肥満の第一の原因であることは明らかですが、フルクトースは食事摂取量を増やし、いくら摂取しても満腹にはならず、余ったカロリーを脂肪に変換させるので、肥満を促進する作用があります。

【糖質と甘味は中毒になる】
生命維持の根源は「快感」にあると言えます。「食による快感」は個体維持のためであり、「性による快感」は種族維持のためにあります。このように人間を含めて動物は「気持ちがよい」とか「快感」を求めることが行動の重要な動機になります。

このような快感が生じる仕組みは脳内にあり、「脳内報酬系」と呼ばれています。脳内報酬系は、人や動物の脳において、欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快感の感覚を与える神経系です。

腹側被蓋野から側坐核、および、前頭前野などに投射されているA10神経系(中脳皮質ドーパミン作動性神経系)と呼ばれる神経系が脳の快楽を誘導する「脳内報酬系」のメインの経路となっています(図)。

図21:中脳の腹側被蓋野にはA10細胞集団と呼ばれるドーパミン作動性ニューロン(神経伝達物質としてドーパミンを放出する神経細胞)が多く存在する。側坐核は快楽中枢の一つ(報酬系)に属する神経核で、腹側被蓋野のドパミン投射を受け、前頭前野に投射して快感を感じる。この神経経路を脳内報酬系と呼ばれている。

ラットの実験で、この神経系に電極を埋め込んで電気刺激をするとラットは盛んにレバーを押して電気刺激を求めたことから、この神経系が活性化すると快感を感じることが発見されました。 
A10神経系で主要な役割を果たす神経伝達物質がドーパミンです。ドーパミンはアミノ酸のチロシンから作られるアミンの一種で、人間の脳機能を活発化させ、快感を作り出し、意欲的な活動を作り出す神経伝達物質です。
A10神経系が刺激されると、ドーパミンが放出され、脳内に心地良い感情が生ずると考えられています。
このシステムは、正常な快感とともに、麻薬や覚せい剤のような薬物による快感や、そのような薬物への依存の形成にも関わることがよく知られています。

脳内報酬系においてドーパミン放出を促進し快感を生じると、それが条件付け刺激になって依存症中毒という状態になります。コカインのような覚せい剤やモルヒネなどの麻薬のように依存性をもつ物質は、ドーパミン神経系(脳内報酬系)を賦活します。

このような依存性のある薬物は連用すると、同じ量を摂取しても快感の度合いが次第に小さくなります。そのため、快感を得るためにさらに摂取量を増やすようになります。さらに、その薬物が入ってこなくなると、ドーパミン神経系が低下し、不安症状やイライラ感などの不快な気分が生じます。これが禁断症状(離脱症状)です。


このように、脳内報酬系を活性化して依存性になる薬物では、次第に摂取量が増えることや離脱症状の存在、その薬物の摂取を渇望することなどが特徴です。
糖質も甘味もこのような薬物依存と同じ作用をすることが動物実験などで明らかになっています。つまり、快感を求めて甘味や糖質の摂取を求め、次第に摂取量が増え、摂取しないとイライラなどの禁断症状が出てきます。


ラットの実験で、コカインよりも甘味の方がより脳内報酬系を刺激するという結果が報告されています。つまり、甘味はコカインよりも中毒(依存性)になりやすいという実験結果です。論文のタイトルは「Intense sweetness surpasses cocaine reward.(強い甘味はコカイン報酬に勝る)」となっています。(PLoS One. 2007 Aug 1;2(8):e698.)

砂糖の多い食品や飲料の過剰摂取は甘味による快感によって引き起こされ、これは薬物依存との共通性が指摘されています。そこで、この論文の著者らは、甘味による依存性(甘味中毒)と薬物に対する依存性(薬物中毒)のどちらが強いかを比較する目的で実験を実施しています。
この実験では、ラットを2つのレバー(ドアの取手)があるケージに入れ、一つのレバーを押すとコカインが静脈注射され、もう一つのレバーを押すとサッカリンの入った水を20秒間だけ飲めるような仕組みを作って実験しています。するとほとんどのラットはサッカリンの入った水を飲むレバーを多く押したという結果が得られたと言うことです。

サッカリンは砂糖の200倍以上の甘味があるカロリーゼロの人口甘味料です。コカインは中枢神経を興奮させて強い快感を得るので薬物依存症(薬物中毒)になりやすい覚醒剤です。
サッカリンの代わりに砂糖でも同じ結果でした。サッカリンに対する嗜好はコカインの投与量を増やしても変わらず、コカイン中毒になったラットを使っても、サッカリンの方を選ぶという結果が得られました。つまり、この実験結果は、甘味に対する中毒はコカイン中毒よりも勝るということを示しています。

グルコース(ブドウ糖)は脳神経の主なエネルギー源です。したがって、糖質の多い食事で血糖が上がることは脳に取っては快感となり、報酬系を活性化するように糖質を求めるようになります。つまり、覚せい剤中毒と同じメカニズムで糖質中毒になることが知られています。
 
また、甘味自体が味覚神経系を介して報酬系を活性化することが報告されています。そして、前述のように甘味に対する中毒はコカイン中毒よりも強いことがラットの実験で示されています。

さらに、甘味物質や糖質は脳内麻薬と言われるβ-エンドルフィンの産生を増加させることがラットを用いた実験で報告されています。
エンドルフィンは「体内で分泌されるモルヒネ」という意味です。マラソンなどで長時間走り続けると気分が高揚してくる作用「ランナーズハイ」は、エンドルフィンの分泌によるものとの説があり、性行為をするとベータ・-エンドルフィンが分泌されると言われています。

つまり、甘味物質や糖質は脳内報酬系のドーパミンと、脳内麻薬のエンドルフィンを増やすことによって、強い快感を感じるようになります

図:ブドウ糖は脳神経の主なエネルギー源であるため、糖質の多い食事は脳にとっては快感となり、報酬系を活性化する。甘味自体も味覚神経系と脳を介して報酬系を活性化する。糖質も甘味も脳内麻薬(エンドルフィンなど)の分泌を促進する。つまり、糖質も甘味も脳を介して快感を与えるため中毒になる。

砂糖の主成分である蔗糖はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が繋がった二糖です。高フルクトース・コーンシロップ(果糖ブドウ糖液糖)はグルコースとフルクトースが混ざった糖液です。グルコースは脳のエネルギー源として報酬系を活性化し、フルクトースはグルコースの2倍の甘さがあるので甘味によって報酬系を活性化すると考えられます。
つまり、砂糖や高フルクトース・コーンシロップは中毒になりやすい食品と言えます。甘い果物も蔗糖とグルコースとフルクトースが一緒に含まれるので中毒になりやすいと言えます。


多くの人々の食事において、精製した糖(蔗糖や果糖や異性化液糖など)は人間の歴史においてつい最近まで存在しませんでした。しかし今日では、このような精製した糖の豊富な食事が増えています。そして、糖質や甘いものが止められない人が増えています。これが、肥満や糖尿病が急激に増えている原因にもなっています。
甘味や糖質に対する中毒は、甘味や糖質を断つことによって克服することは可能です。甘い食品が止められない人は、自分が中毒になっていることに気づいて、甘味や糖質依存から脱却する努力が必要です。 
「果物は健康に良いから、いくら甘くても果物であれば問題ない」という認識は間違いであることを理解する必要があります。
がん研究の領域では、「フルクトース(果糖)はがんを促進する」というエビデンスが増えています。

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