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中国という国(89)  習近平の中国

2022年11月11日 | 日記

「二つの確立」を軸に習近平中国が誕生した。習氏は、権威を高める習氏の党の核心としての地位と、習氏の政治思想の指導的な地位を確固たるものとする「二つの確立」を軸に習近平中国を誕生させた。

◆中国共産党の幹部人事を決める5年に1度の第20回党大会で、習近平(シー・ジンピン)総書記は「これからの5年間は、社会主義現代化国家の全面的な建設が始まる重要な時期だ」と強調した。「最悪の事態も想定した思考を堅持しなくてはいけない」とも述べ、習体制のもとでの今後の結束を訴えた。党トップの総書記は2期10年との慣習があるが、この慣習を破って異例の3期目に入る事への正当性を強調した。

◆「機会の公平を進め、低所得者の所得を増やし、中間層を拡大し、所得分配機能をルール化し、富の蓄積メカニズムを作る」とし、これを政治スローガンとして「(ともに豊かになる)共同富裕」を掲げる。習氏はこの発言を通じて共同富裕の重要性を訴え、推進する考えを示した。

◆習氏は過去5年間の成果を強調し、その中で「台湾独立勢力と外部勢力の干渉という深刻な挑発に直面した」と指摘し、台湾統一方針について、「今後も決して武力行使の放棄を約束しない。必要なあらゆる措置をとる選択肢を持ち続ける」とした。台湾問題に介入を深めるバイデン米政権や台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)政権を威嚇した。習氏は「断固として反分裂・反干渉の重大な闘争を展開し、国家主権と領土を守った」とも強調。米国などの台湾問題への介入をけん制するとともに、習指導部の台湾政策を正当化した。習氏は「台湾問題は中国人自身のことであり、中国人が自分で決めなくてはいけない」と主張。「祖国の完全な統一は必ず実現しなくてはならず、また必ず実現できる」と訴えた。「平和統一の見通しを得るために最大限の努力をする」とも述べた。

◆「覇権主義と強権主義に反対し、いかなる一国主義や保護主義にも反対する」と強調した。米国との長期対立を見据えた発言だ。習氏は新型コロナウイルスのワクチン供与を中心とした海外との協力が「国際的な称賛を勝ち取った」とも主張した。「中国の国際的影響力が著しく向上した」と成果を誇示した。

経済政策については「内需拡大戦略の実施と供給側構造改革の深化を結びつける」と発言。消費拡大を後押しするとともに、イノベーション(技術革新)を根本的な原動力に質の高い発展を目指す考えを示した。習氏は「国内大循環の原動力と信頼性を強化し、国際循環の質の水準を高める」とも述べた。習指導部は内需に軸足を置きつつ、外需と好循環させて質の高い新たな成長につなげる「双循環」構想を掲げている。今回、この構想を推進する方針を改めて強調した。

◆中国共産党の第20回党大会で、人事などでかつて影響力を持っていた江沢民(ジアン・ズォーミン)元総書記、朱鎔基・元首相はともに90歳を超えて健康上の理由からか姿を見せなかった。引退した元最高指導部メンバーを指す長老の存在感低下を如実に表した。

◆「反腐敗闘争を深く発展させなければならない」と言う習氏。政権の長期化で「独裁のワナ」に陥る可能性も指摘されている。習氏は政権基盤の強化を目的に反腐敗運動を展開し、この結果粛清すればするほど潜在的な敵が増え統制を強めねばならず、悪循環に陥れば政権基盤が揺らぎかねない危険に陥る可能性もある。