今回も本の紹介です。
私がこのブログで紹介するのは『死』に関する本が多いのですが、今回は珍しく『生』についてです。
「人間らしい生活とは何か?」について考えるきっかけになればと思い、この本を紹介します。
『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎・太田出版)
言わずと知れた、哲学研究者・國分功一郎先生の著作です。
私が國分先生を初めて知ったのは旧版の『暇と退屈の倫理学』が出版された直後なので、2011年だったかと思います。奇抜なタイトルにひかれて読み始めたのですが、ぐいぐいと引き込まれるように読んだのがつい昨日の事のようです。
この本がきっかけで、國分先生はテレビやラジオ・講演会や雑誌等々で広く知られるようになりました。
440頁にも及ぶ哲学・倫理学書を簡潔に紹介する力量は私にはありませんが、ひとことで言えば著者の関心は、「人間らしい生活とは何か?」です。
パスカルの有名な断章(「部屋にじっとしていられないから、人間は不幸を招く」)を引用しつつ、人間は部屋でじっとしていられないから熱中できる気晴らしを求める。それがすべての不幸の源泉となる。現代の消費社会はそこにつけ込んで、現代人は「終わりなき消費のゲーム」を強要され、その結果、私たちは「非人間的状況」(疎外)に陥ってしまっている。
この状況を脱するにはどうすれば良いのか……
文化人類学や経済学、社会論に行動学…あらゆる学問体系を総動員しつつ「退屈論の最高峰」と著者が考えるハイデッガーの『形而上学の根本諸概念』に接近します。
この本の中で、著者は「楽しむためには訓練が必要」とし、私が常日頃興味を持っている「食」に関してこう語っています(p.356~)。
たしかに私たちは毎日食べている。しかし、実は食べてはいないかもしれない。単なる栄養として物を口から摂取しているかも知れない。あるいは、おいしいものをおいしいと感じているのではなくて、おいしいと言われているものをおいしいと言うために口を動かしているかも知れない。
もしそうならば、私たちは食べることができるようにならねばならない。
そして、ファスト・フードとスロー・フードの違いについて要約すればこのように語っています(p.411~)。
「ファスト・フードはその食事に含まれている情報量が少ないから早く食べられる(インフォ・プア・フード)。
一方、スロー・フードには味わうに値する大量の情報が含まれているため、それを身体で処理するのに大変な時間がかかり、結果としてゆっくり食べられる(インフォ・リッチ・フード)。
つまり、ファスト/スローは、結果であって原因ではない。それらの結果をもたらすのは食事に含まれる情報の量である。
情報量が少ない食事をゆっくり食べても何の意味もない。情報量が多い食事、味わうに値する食事を提供することこそが重要なのだ」と……。
食事に含まれる「情報」とは、味や香り、見栄えや価格、あるいは食べ〇グの点数等だけでなく、いつ、どこで、誰によって、どのように作られたかということも含まれるのでしょう。
そのような「情報」をもしっかりと文字通り「噛み分け」られるような食事を心がけたいと思います。
……ともあれこの本は、平易な文体で熱く勢いのあるポジティブな思考が貫かれた國分先生らしい著書に仕上がっています。増補新版にあたって付け加えられた論考「傷と運命」も読みごたえがあります。
ぜひご一読ください。
先日食べた「情報量」たっぷりの蕎麦
誰と食べるかも大切ですね♪
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