対峙したカエルは絞り出すような口調で理由を語る。


「やっぱり今回の前に地震もあって、そしてコロナもあって、今回やん。

さすがにむごいなというのが」


今回とは主として九州地方を襲った今夏の豪雨災害のことだ。これに地震、

コロナ禍。三重苦に襲われた場所が熊本である。


日課にしている晩酌をしているときに、報道の映像で惨状を見るにつけて

背中を押されてるように感じた。「やる」と決めた。明くる朝に気が変わ

ってしまってはいけない。


おもむろにDMをする。宛先は千田純生さん。ギリギリの費用でデザイン

をやってもらえないかとお願いをした。すると無償で描きますとの返事が

届いた。更にロアッソ熊本の事務員さんに連絡を取る。パッといちカエル

が言ったところで簡単に通る話ではないことは百も承知だ。でも一刻も早

くという想いを伝えた。有難いことに翌日にはイラスト使用の許諾を得る。


こうして、チャリティーTシャツの目途が付いた。胸には千田先生、一平

くん、ロアッソくんが並んでデザインに。


そして協力してくれるTシャツ屋さんと交渉。Tシャツ屋さん曰く、

「200枚程度は売れるのでは。200枚越えて売れてきたら顏が青くな

 ってゆくけん見よって。」


予測と異なり反響は大きく、最初の段階で早くも発注枚数は200を超えた。

一平くん「刷ってくれる?」

「顏青くなってきました?」とTシャツ屋さん。


Tシャツ屋さんがもう、ヤバい。「無理や!」

売上げの全額を寄付と言っていたが原価だけは回収しての寄付となった。

変更するまでには蛙の胸の内では葛藤があったのではあるが。


最終的にこのチャリティーTシャツでの義援金総額は5,380,930円にまで

膨らみ、ロアッソ熊本を通じて熊本県へと災害復興支援金として贈られた。


「怪しい」「動きが早過ぎる」といった言葉があったりもしたが、

「早いに越したことはないやろ」っと一平くんは感じ、動いたまでのこと。

むしろ2週間もかかってしまったとすら思っている。Tシャツを購入して

くれた皆んなには感謝しかない。


「でも、オイラより愛媛FCのボランティアスタッフのほうがすごいよな

 って思うよね。チームを支えるいうんは。出来ることが各々違うやん。

 お金持っとったら、お金あげたらそれはそれで助かるチームもあるし、

 お金は出せんけど、ちょっと手伝いますいうサポートもある。自分の出来

 ることをやりよるだけなんやろうけど偉いなあと思う。一年に3回くらい

 『偉いねー』って言うもん(笑)。俺今日テント5張り立ててそのあと

 ゴール動かしてとかって話聞くけど、ようやるなぁって思うもん。だって

 強制もされてないわけやん。すごいなぁ。」とも一平くんは語る。


各々が出来ることを着々とやってゆく。当たり前のように聞こえるが実行に

移すには意志が要る。でも意志あるところに道はひらかれる。



挿絵
                ※画はあくまでもイメージです

 ※本稿は2020年7月の取材をもとに構成しています。



 Text ;中村マサト(フリーランス)
 挿絵 ;ろすモン(twID:@fabian0318)