伏見稲荷大社の物語 90話記念 小説 正一位狐国稲荷神社 宮司と巫女狐の禁断の恋

 東山には人間がお詣りする稲荷神社があるが、この稲荷神社から真西の西山には狐が詣る正一位狐国稲荷神社(現・元稲荷社)がある。本家の稲荷神社の社殿の土地やお山もこの稲荷山を境内とする藤森神社からお借りしているものだが、この狐国稲荷神社も向日神社からの借り物になる。神社の北側には卑弥呼の時代の全長94メーターで前方後方墳の元稲荷古墳がある。神社の地下には社務所や神楽殿と通路が張り巡らせていてこの古墳の石室には狐国稲荷神社の祭神の「宇迦之御魂神」が祀られている。つまり、地面から出ている神社の境内は小ぶりだが地下は宮司や神職、巫女狐ら約100匹が住む大所帯の神社になる。

 この狐国稲荷神社は全国に展開している狐稲荷神社の総本宮で日本国に住むアカギツネ、クロギツネ、ギンギツネ、シロギツネの共同の神社になる。宮司は世襲制で代々アカギツネの8代目の源八狐が宮司を勤めている。その他の神職や巫女狐はそれぞれの狐の種族の稲荷神社から派遣されて2年間の修行を終えて神職及び巫女の資格を得てその狐の種族の稲荷神社で神職になる。

 巫女の白菊の種族はシロギツネで15歳で修行のために関東平野から単身で総本宮に入り修行1年目でお神楽の巫女舞の名人と龍笛の名人となり宮司の源八狐からも褒められていた。白菊は色が白いのは当然だが背が高くてそれに鼻筋が通ったキツネ顔の超美人で宮司は修行中の白菊に恋をしていたが、それは禁断の恋で狐界では種族の違う狐との恋愛などは先祖代々禁止されてきた。

 これは個々の狐の種族の種を守り子孫繁栄するには当然のことで日本国には4種類の狐族が生息しているが、これは共通の課題で子供が産まれると真っ先に教育されるのがこの種族を守るという民族教育になる。しかしながら長い歴史の中では種族の違う狐同士が愛し合い子供を授かる事例もあったが、それが見つかるとその子供は即日殺されることもあった。

 宮司の仕事は神社の繁栄と種族の揉め事の仲裁などの裁判官の役割もしているのでこれらの異種族の恋愛問題も解決していた。それら相談に来た狐に適確なアドバイスをしていた。その相談の例は、クロギツネの雄とシロギツネの雌との恋愛だが、宮司は
そのクロギツネに、
「クロギツネとシロギツネの間に産まれた狐は白黒の模様でパンダ狐になる。そのパンダ狐とアカギツネの間に産まれた子供は三毛ギツネになる。つまり、混血雑種及びハーフ狐になるが、こうなれば種の保存どころか性格も狩りの仕方も変わりどの狐の純血も破壊されて神から天罰が降る」
 この宮司の意見に対してクロギツネは、
「し、しかし、同じイヌ科の犬は日本どころか世界中から輸入されて異種交配がされても犬界からはなんら問題が提起されてはいませんが…?」
「たしかに犬も猫も人間の手で人間に都合のいいように血を遊ばれているが、それは犬も猫も人間から餌を貰わなくては生きてはいけないからで我々狐は人間とは一線を画しても生きてはいける」
「そうですか、それなら私はシロギツネとの愛を諦めます」

 こうして宮司は愛し合っている狐を無下にも引き裂いてきたが、その考えは間違いではないのでこれに対してはなんの反省もいていないばかりかこの宮司の裁定を狐4種族も最高裁判所の判例として長年受け継ぎまだ表向きには雑種キツネは存在していなかった。ただ、京の都ではそうだが、地方では異種交配がなされていたが、これら産まれた雑種キツネは親から引き離されたり、または夫婦と小狐共々越後の国の佐渡ヶ島に流されていた。

 狐は夜行性のために昼間は土を掘った穴で寝ている。そして夜は野ネズミやモグラ、それにウサギの狩りをしているが、この狐国稲荷神社の狐の参拝者も夜間で神楽殿での巫女狐の神楽舞と雅楽の演奏も毎夜数回演じられる。宮司の源八狐はもはや宮司の立場ではなく16歳の白菊の舞を一人の雄キツネとして観覧していた。踊っている白菊も参拝者のために踊っているのではなく心の中では宮司さんを意識していたのでまだ幼い白菊は出来るだけ女の魅力の視線をテレパシーに変えて宮司に発信していたが、そこは以心伝心で源八狐にも十分伝わっていた。

 しかし、宮司はアカギツネ、白菊はシロギツネでこの狐界では禁断の恋でそれ以上のことはお互い自粛していたが、自粛すれはするほど恋しくなるのが恋というものになる。それから半年白菊は総本宮での2年間の修行を終え関東平野に帰るのは三ヶ月後になっていた。白菊が巫女の仕事が終わるのが早朝の4時になる。それからまだ真っ暗な地上の向日神社の外拝殿で白菊得意の龍笛の練習を毎日のようにしていた。

 外拝殿から北200メーターには小高い丘の元稲荷古墳があるが、宮司の源八はこの丘の頂上から外拝殿を見ながら白菊が吹く龍笛の音色を楽しんでいた。狐は耳と眼が良く、それに嗅覚は人間の千倍~1万倍もあり月明かりだけでも白菊の巫女姿や匂いを楽しめる。これは白菊も同じで北風の時は宮司の匂いが白菊に、南風の時は白菊の匂いが宮司まで届く。白菊が演奏している龍笛の音色は「立ち昇る龍の鳴き声」と例えられて龍笛の名前がある。

 宮司が恋しい白菊の姿を古墳から見ていたが、それが2ヶ月も続いて1ヶ月後の2月1日には総本宮の修行も終わり白菊は生まれ故郷の関東平野に帰ることになってはいたが、これを止めることが出来ないことは宮司が一番良く知っていたから白菊に近づくことさえ自粛していた。

 最後の夜の1月31日、この日は南風が強くて白菊の笛を吹く息づかいまで風に乗って宮司の鼻まで運ばれて来た。ところが白菊のいつもの匂いより悩ましいフエロモンの匂いが宮司の鼻から入り脳を強烈に刺激していた。この狐の発情期は1月から3月でその発情する日数は1日から3日しかなくこの日以外は雄を受け入れず妊娠もしなかった。その日がたまたま白菊の発情の初日になったので宮司は白菊のフエロモンに翻弄された脳は理性を忘れて古墳の坂を転がる様に駆け抜けて向日神社の外拝殿に一足飛びで駆け上がり白菊を抱き寄せていた。

 白菊は抵抗して、
「宮司さん、それは絶対にダメです~私たちは狐界の掟を破った大罪人として佐渡ヶ島に流されます」
「私は白菊と2人で佐渡ヶ島に流されるのではなく白菊との新婚旅行として佐渡ヶ島に行く決意をした。白菊…私と一緒に佐渡ヶ島で家庭を持とう」
「嬉しい~私は宮司さまとなら鬼ヶ島でも八丈島でも付いて行きます」

 こうして愛し合う2匹は愛の交尾を終えた後に宮司は白菊に、
「実は私が裁定して佐渡ヶ島に島流しした狐たちはどうしているかと気になって部下に調査を命じたが、その調査報告を読むと佐渡ヶ島の狐は毛の色や民族の違いなんかの差別や偏見もなく自由に恋愛をして子供を育てているという。そのせいかパンダ狐や三毛狐に四毛狐、紅白狐は珍しくもなく、中にはヒョウ柄やトラ柄までいるそうだ。生活は人間が金の採掘のために掘って廃坑になった横穴に住み夏は涼しく冬は暖かいそうだ。それに農民や漁民とも共存共栄して調査した狐は佐渡ヶ島は狐にとってはパラダイスになると言っていた。私はこの佐渡ヶ島に「正一位佐渡ヶ島稲荷神社」を建立して宮司になる、白菊は巫女として私を助けてほしい」

 宮司の源八は25歳、白菊は17歳の2人は佐渡ヶ島までの161里(約644キロ)の新婚旅行に出かけたが、狐界のトップが絶対あってはならない異種族との駆け落ちに若い狐たちは大いに喜び異種狐との交際が大ブームになったそうな。
     (おわり)
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