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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】唐沢家の四本の百合:小池真理子

 

 

唐沢家の四本の百合:小池真理子著のレビューです。

 

細かな心理描写と閉塞感。目が離せないミステリー

 

やっぱり小池さんのミステリは面白い!と再確認した「唐沢家の四本の百合」。

新刊予約に出遅れてしまい予約は見送り。けどけど、どうしても小池さんの小説が読みたくなってしまい未読の本を探していたら、こちらの作品に辿りつきました。

 

ミステリで登場人物がうじゃうじゃ出て来てきたり、時間があちこち飛ぶようなものが苦手なのですが、小池さんの作品はそういうストレスを一切感じず内容に没頭できる。出てくる人々の特徴や気持ちなどがしっかりこちらに伝わってくるし、ミステリと人間模様がとてもうまく絡まっているから無理なく読めるのでしょう。そしてなにより、流れるような滑らかで美しい文章が心地よい。

 

 

 

さて今回は、3兄弟の3人の嫁たちと、義父、そして義父の後妻の連れ子という唐沢家で起きた事件を巡る物語。裕福で恵まれた環境で生活する女性たち。ある日、義父の提案で別荘に出かけることになった。先に出発した女性たちはその晩、大雪にみまわれる。そんな中、一通の速達が届く。

 

この速達をきっかけに、物語は得体のしれない恐怖の中に.....。雪に閉じ込められるという閉塞感と、何が起きているか分らない不安。やがて、徐々に事件の内容が明かされていくのだが、その内容がまた人間関係をどんどん明るみにさせ、心理的にゾワゾワするものなのだ。

 

そして最後の最後に長男の嫁が明かすことも、薄々解ってはいたけれど、結構ガツンとやられる感じで...。

 

ということで、ネタバレ回避のためあらすじ等は省きますが、ポイントは後妻の美しい連れ子。彼女は過去に後妻と唐沢家の長男を乗せた車を運転し、事故を起こしている。後妻と長男は死亡。残された彼女は歩けなくなったものの、唐沢家に残り、義父たちと一緒に生活を続けている。彼女が今回の事件の大きな鍵になる人物です。魔性です。

 

誰かを愛する気持ちのなかに潜むほんの小さな魔物。これに気づいた時に見える景色は.....。本当に怖いのものはなんだろう。

 

ということで、新刊が読めなくて落胆していましたが、この作品が読めて逆に良かったなぁと。小池さんの作品で読み逃している作品ががまだありそうなので、ちょっとチェックしてみたいと思いました。