引退間近の東邦号到着、スイッチャーで安中製錬所へ【役目を終える安中貨物 東邦号 2/2】 | 湘南軽便鉄道のブログ

湘南軽便鉄道のブログ

「湘南軽便鉄道」です。

本ブログは鉄道・バス・船舶・航空機等について、記録も兼ねて記事掲載。

その他、5インチゲージ自家用乗用鉄道「湘南軽便鉄道」についても掲載。路線は湘南本線(ベランダ線・路程約0.01km)があったが現在廃止。新たな庭園鉄道敷設の構想中。

テーマ:

(前回記事の続き)


(JR信越本線 安中駅に到着した安中貨物・東邦号)





役目を終える安中貨物 東邦号

2025年(令和7年)3月末で運行終了予定の通称「安中貨物(東邦号)」。

安中貨物(東邦号)は、東邦亜鉛株式会社が、同社の小名浜製錬所(福島県いわき市、1963年(昭和38年)創業)と安中製錬所(群馬県安中市、1937年(昭和12年)創業)間で、亜鉛焼鉱等輸送のため、昭和40年頃から半世紀以上にわたり運行されてきた貨物列車。JR貨物に委託し、日曜・祝祭日を除く一日一往復の運行。

使用車両は、JR貨物EH500形交直流両用電気機関車(愛称「eco-power 金太郎」、仙台総合鉄道部所属)+タキ1200形亜鉛焼鉱専用貨車(タンク車)。

現在のルートは、小名浜駅〜(福島臨海鉄道)〜泉駅〜(JR常磐線)〜北小金駅〜(JR武蔵野線)〜大宮操車場〜(JR高崎線)〜高崎〜(JR信越本線)〜安中駅。

東邦亜鉛株式会社は、2025年(令和7年)3月末までに安中製錬所の稼働を停止予定(小名浜製錬所に集約)であり、これに伴い、同年3月15日(土)に定期運行を終えた「安中貨物」は、同年3月末で、臨時運行も含め全運行を終える予定。


なお、東邦亜鉛株式会社では、事業再生計画の中で、亜鉛リサイクルのため、閉鎖される安中製錬所に溶融炉を新設し、小名浜製錬所との間を結ぶ貨物列車については今後「活用を検討」するとのことであるが、将来的に貨物列車が復活するかどうかまだ分からない。





17時頃、安中駅構内に作業員がスタンバイ。

福島県の泉(小名浜)を午前11時41分に出発した安中貨物・東邦号がやって来た。


定刻17時07分、群馬県安中市の安中(あんなか)駅に到着


(安中貨物・往路)

列車種別︰高速

列車番号︰5094〜5097

編成内容︰鉱石

泉(小名浜)11:41発→安中17:07着


牽引機は、JR貨物仙台総合鉄道部所属のEH500形交直流両用電気機関車「EH500-27号機」。愛称は、「eco-power 金太郎」。


群馬県まで唯一乗入れる交直流両用機


後ろに貨車(タンク車)を連ねる。


この貨物列車名は元々「東邦号」と称するが、あまり広まらず、現在は一般的に「安中貨物」「安中号」と呼ばれる。


EH500形電気機関車は、国鉄時代のEH10形以来となる2車体連結・主電動機軸8軸使用のH級機関車。


タキ1200形亜鉛焼鉱専用貨車(タンク車)を連ねる。


貨車は、「キー」という大きなブレーキ音を立てながら停車。


この日の貨車は、僅か4両。


東邦亜鉛は2021年(令和3年)11月に亜鉛の焙焼工程を小名浜製錬所に集約し、ここ安中製錬所の焙焼炉を休止しており、他の主要設備も2025年(令和7年)3月末までに稼働停止予定。


安中製錬所の稼働停止が近いため、貨物の輸送量も僅かしかないものと思われる。


異彩を放つ茶色い貨物車両

現在では数少ない専用貨車

先頭から、「タキ1200-19」、「タキ1200-18」、「タキ1200-20」、「タキ1200-3」



東邦亜鉛株式会社が保有する専用貨車




EH500型電気機関車の車体側面には、愛称の「eco-power 金太郎」のイラストなどが描かれている。


岡山機関区に初めて配置された省電力大出力機のEF210型電気機関車の愛称が「ECO-POWER 桃太郎」であり、これと対をなす形で、主に東日本で活躍するEH500型電気機関車には、「ECO-POWER 金太郎」の愛称が付いた。



2004年(平成16年)東芝製のEH500-27号機



安中駅到着後、すぐにEH500形電気機関車が切り離され、ここからは東邦亜鉛のスイッチャーにバトンタッチ。



JR貨物仙台総合鉄道部所属の区名札





切り離された電気機関車が去っていく。

夕方の安中駅


タキ1200形亜鉛焼鉱専用貨車(タンク車)は、2010年(平成22年)から2011年(平成23年)にかけて日本車輌製造で20両製造された全長11.3mの私有貨車。



東邦亜鉛株式会社が所有し、JR貨物の車籍を有する。










車体には「小名浜駅常備」の文字

亜鉛焼鉱専用貨車


電気機関車が切り離された東邦亜鉛専用貨車

待機していた東邦亜鉛の構内入換用ディーゼル機関車(スイッチャー)は、こちら側の前照灯が点灯。

東邦亜鉛のスイッチャーが、タキ1200形タンク車を引き取りに近づいてくる。






新潟トランシス製の30tディーゼル機関車「DB302」。「DB301」と2両在籍。

JR貨物安中駅と東邦亜鉛安中製錬所間で、貨車の輸送を担う。






スイッチャーが貨車に連結。



貨車を連結すると、すぐにスイッチャーは発車。

スイッチャーが一度に牽引する貨車は2両。


安中製錬所に向かう。






3番線には、先程、貨車から切り離されたEH500型電気機関車がやって来る。










EH500型電気機関車は反対側へと走り去る。


そして側線の先端で停車。復路の安中発・小名浜行き貨物列車(安中貨物 東邦号)の発車時刻(20時04分)までしばらく休憩。


スイッチャーが一度に牽引するタンク車は2両のため、もう2両は取り残される。


スイッチャーに牽引された貨車は、スイッチバックして、東邦亜鉛安中製錬所専用線に入る。

スイッチャーが後ろから貨車を押す。








安中駅から安中精錬所に向かう引込線の勾配はきつく、スイッチャーはエンジンを唸らせ推進運転。


スイッチャーが後ろから、鉱物を満載した貨車を押すには、2両が限界。

スイッチャーは汽笛を鳴らしながら、上り勾配の専用線に入っていく。


急カーブ、急勾配の専用線





1937年(昭和12年)創業の安中製錬所

まるで要塞のよう。






2両のタキ1200は、スイッチャーが再びやって来るのを待つ。

夕方の安中駅






側線の先で休憩に入るEH500型電気機関車


安中製錬所からスイッチャーが戻ってくる。






単機で下り勾配なので、足取りは軽やか。







あの場所でスイッチバックして、こちらにやって来る。











ここに留まっていた、残り2両のタキ1200貨車と連結


2018年(平成30年)、新潟トランシス製の「DB302」号機


東邦亜鉛安中製錬所に向け発車










この日の「安中貨物」の貨車は全部で4両しかないので、スイッチャーで安中駅〜安中製錬所間を2両ずつ運んでも、2往復で済む。

フル編成のときは、夜までかかる入換え作業が、この日は貨車が4両のみのため、30分程度で終わった。




スイッチバックし、後ろ向きに専用線に入る。

登り勾配を重々しく走り去る。

汽笛を鳴らし、エンジンを唸らせ、安中製錬所へ。



このような光景を見られるのもあと僅か。

東邦亜鉛安中製錬所の稼働停止により、50年以上に渡る「安中貨物」は、その長い歴史に幕を下ろす。

東邦亜鉛株式会社では、事業再生計画の中で、亜鉛リサイクルのため、閉鎖される安中製錬所に溶融炉を新設し、小名浜製錬所との間を結ぶ貨物列車については今後「活用を検討」するとのことであるが、将来的に貨物列車が復活するかどうかまだ分からない。


さようなら「安中貨物 東邦号」



夜になれば、安中製錬所の夜景が浮かび上がり、異彩を放つ。






ちなみに、安中製錬所から小名浜製錬所へ積載の無い空の貨車の返送便は以下の通り。

(安中貨物・復路)

列車種別︰高速

列車番号︰5098〜(5095)

編成内容︰鉱石返空

安中20:04→泉(小名浜)翌朝6:32



JR信越本線・安中駅構内

夕暮れの安中




安中駅を後に…

JR信越本線・高崎行き普通列車で、安中駅を後に。

17時41分安中(あんなか)駅発車。



高崎(たかさき)駅17時53分着






★動画↓


安中貨物 2025(令和7)年3月中旬




鉄道旅行ランキングへ

にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ
にほんブログ村


(終わり)