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「中流危機を越えて」雑感:労使関係と経済2

2022年09月28日 15時03分41秒 | 労働問題
「中流危機を越えて」雑感:労使関係と経済2
30年に亘る長いデフレ不況に苦しんだ日本経済でしたが、2013~14年の日銀の政策転換による異次元金融緩和で$1=120円に回復、これで日本経済は回復と多くの人は見ていました。

しかし結果は意外で、前回の最後の部分で述べましたように、円レートが正常に戻っても日本経済は成長力を取り戻せなかったのです。

この鍵を標記NHKスペシャルの取り上げた「ワッセナー合意」と標記NHKスペシャルの学者と労使のパネリストの発言の中に見ることが出来ます。

日本について見ますと、ワッセナー合意に先立つこと7年1973年に始まった石油危機によるインフレを1975年の春闘からの「労使の合理的対応」で克服しています。結果、日本は欧米先進国が苦しんだスタグフレーションにはなりませんでした。

欧米先進国は、その後スタグフレーション(当時は先進国病と言われた)に苦しみ、米、英、仏などでは政権交代も巻き込んで、先進国病からの脱出は1980年代に持ち越されその中葉までかかっています。
その中でも、オランダの対応は早い方で、しかも政労使合意という形、政権の力ずくでない方法で成功して注目されたのです。

この辺りから見えてくるものは何でしょうか。日本は世界に先駆けてスタグフレーションを経験することも無く「労使の自主的合意で解決し、エズラ・ボーゲルをして『ジャパンアズナンバーワン』と書かしめました。

オランダのワッセナー合意は政労使三者が先進国病の原因に気づき、合理的な賃金決定についてについての合理性の共有の上に立つ合意「ワッセナー合意」に到達その名を残したという事でしょう。

こうして見てきますと、安定した経済成長実現の重要なカギの一つは、インフレ、雇用に直接影響するマクロ(国)レベルの「賃金決定」在り方にある事が見えてきます。

賃金決定は労使の専権事項というのは誰でも知っています。そして大事なことは、労使が、経済の中での賃金決定の重要な役割を認識し、賃金決定が経済合理性に則ったものかどうかという共通認識を持つことのようです。

ヨーロッパでもインフレ嫌い、失業率も低いドイツでは労使の協調行動、賃金決定の生産性原理という考え方があります。
日本では、第一次石油危機克服の際、経営側は「労働問題は雇用が第一義」賃金決定については経営側は「生産性基準原理」、労働側は「経済整合性理論」を前提に春闘の論戦を展開しています。

思想的にドイツに近いオランダが「政労使合意」で問題(先進国病)の解決に取り組んだのも,自然の流れかもしれません。

という事で、話はNHK の番組に戻りますが、出席のパネリストの中で京都大学教授の諸富さんと連合会長代行の松浦さんは、特に熱心に、「政労使三者の話し合い」の徹底を指摘していました。
特に、連合の会長代行が、強くそうした発言をするという事は、いかに政労使三者のコミュニケーションが欠如しているかを物語るものでしょう。

確かにアベノミクス以来、総理大臣は、賃金決定も政府が主導するものと勘違いしているようです。
具体的にどう間違ってきたかはこのブログでは随所に指摘していますが、勘違いの基本は、基本はこれも繰り返しになりますが、聖徳太子の17条の憲法の第17条「夫れ事は独りにて断ずべからず」という事のように思われます。



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