インフレ-ションという言葉は、わが国ではほぼ死語に近い言葉でした。実際にインフレがこの国で発生したのは、1970年代に2度発生したオイルショックの時以来です。80年代後半に発生したバブル経済の時でも、株式と不動産価格は上昇しましたが生活必需品価格はあまり上がっていません。
そのため日銀黒田総裁が、就任早々にデフレからの脱却のため、2%の物価上昇が目標と発言したときはとても違和感を感じました。安易に2%のインフレ目標などといいますが、実際に物価上昇率をコントロールするなど、2階から階下の人に目薬を差す行為に似て、ほぼ不可能なことをできるかのような話です。
40年近くインフレとは無縁な経済が続いたため、政治家にしても情報を提供する官僚にしても、経験や伝承のない経済現象に対応することになります。ロシアのウクライナ侵攻により石油価格が暴騰したとき、岸田内閣は慌てて大手石油会社に補助金を出してガソリン価格上昇を抑える動きにでました。
ところが石油各社は石油在庫を大量に抱えているため、多額の利益を期末には計上することになります。他方で、物価上昇によって苦しい生活を強いられている国民が多数いるのに、石油業界だけを支援するミスはインフレ経済に不慣れな政治家や官僚の準備不足がもたらした間抜けな行動です。
これは日本だけに限らず、世界各国が急なインフレ到来によって政策現場は、不慣れな対応に悩まされています。多分これからも各国でミスは続き、多額のムダな資金をドブに捨てるようなことが起きそうです。少し整理して、このインフレ現象を考えるよいと思います。
インフレが各国で一斉に発生した原因は、2020年に発生したコロナ感染拡大により、各国が感染封じ込めのため多額のコロナ感染対策費を投じたことによって発生しました。コロナ感染のための医療費ばかりでなく、国民の生活を支援するための給付金など資金量は半端ではありません。
資金が大量に一定期間市中に出回りますと、好景気になりますから物価水準は全般的に上昇します。一定の通貨によって購入できる商品やサービスは、物価上昇によって低下します。好景気は次第に過熱して貨幣価値は低下していきます。
通常、各国中央銀行はインフレ対策として、政策金利を上昇させることによって市中に出回る資金量を減らします。インフレの時は、借金してビジネスをすると有利になります。逆に金利を上げることによって、借金をしている人は金利負担が大きくなって、過熱したビジネスにブレーキがかかる仕組みです。
7%8%の欧米と比較して日本の物価はまだ低いですが、この国の経済的な体力が弱っていると考えた方がよさそう。それでも今後本格的に上昇が始まる可能性は大きいです。残念ですが、最後は0円を1円とする通貨切り上げか、インフレを容認して国民に犠牲になってもらうしか、この国を立て直す方法はなさそうです。
【ひと言】
今は世界的規模で広がるインフレに対し、対抗策として金利を引き上げることによって、景気が今以上に拡大するのを阻止して、不況の種を撒くような手法で物価上昇を食い止めています。簡単にインフレを調節することはムリです。
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