ミャンマーよもやま情報局

関西福祉大学 勝田吉彰研究室。科研費研究でミャンマーに通っています。学会発表や論文には入らないやわらかいネタをこちらで発信しています。取材や照会など連絡先はこちらへ myanmar@zaz.att.ne.jp

follow us in feedly

ミャンマー軍の「クーデター」には新型コロナも1枚影響か? アウンサンスーチー氏に懸念されるシナリオ

ミャンマーの軍によるアウンサンスーチー氏拘束と全権掌握案件、メディアに「クーデター」と報じられているものについて。昨日からTV(MBS「ミント!」)や神戸新聞で解説をおこなっているところですが、こちらでも医学分野からの分析を記しておきます。コロナ流行による国際往来抑制が「民主主義のお得感」を低下させていること、御年85歳になられるアウンサンスーチー氏の体調懸念と「外れてほしいシナリオ」。

1.新型コロナと今回の件

ミャンマービジネスにかかわる方々は(そうじゃなくても)ご承知のように、新型コロナ禍のなかで国際往来は大幅に抑制されています。先般の総選挙を経ての感染者増加もあり(総選挙の投票日11月8日は米大統領選と5日しか違わない。すなわちほぼ同時期に選挙戦の3密状態が発生していた)、たとえば日本政府は(変異株問題で閉じるよりずっと以前の10月30日に)レベル引き上げをおこなったりしています。

 これまで軍部が比較的おとなしく、アウンサンスーチー氏を立ててNLDのみなさんの活躍を眺めていた背景に、2011年の民主化以来の西側諸国からの投資ブームでどんどん経済が潤いつつある状況がありました。すなわち「民主主義はお得なのだ」と。ところが昨年来のコロナ禍でビジネス往来が滞るなかで「民主主義のお得感」が低下していたことが、歯止めが効かなくなった要因のひとつと分析しています。あとは、すでにさんざん報じられているような、選挙不正の主張(米国の議事堂で起こったことを見れば、これがいかに人々の感情にエネルギーを注ぐか明らか)だとか、ベンガル系の方々をめぐるあれやこれやだとか、は勿論。

 

もうひとつ、ミャンマーの人権に関して、これまで「うるさ方」として機能してきた欧米諸国が、いまコロナでミャンマーどころではないという事情もありましょう。かつてミャンマー制裁のボス役だったUSAは、つい先日まで独裁系の外国元首とウマがあうトランプ氏で、バイデン政権はその立て直しで精いっぱい(米国民は青組も赤組もミャンマーなんか無関心)。欧州がコロナで引っ張りまわされている状況もまだまだ続く。

 

2.アウンサンスーチー氏の健康状態で管理人が懸念すること。

これまで度重なるアウンサンスーチー氏の軟禁から、おそらく軍部は「直接手荒なこと」はやらないだろうとは予測できます。実際管理人も昨日のTVで「彼女はケガさせられることなくいつかは出てこられるだろう」と発言しました。

しかし、管理人が懸念しているのは「外傷」よりも「疾病」です。軍部が手をあげなくても(身体的暴力を振るわなくても)万一の事態が起こる可能性。かつて平成の軍事政権下で度重なる軟禁をうけていたときは44歳~65歳でした。しかし現在は御年75歳(6月19日をもって76歳)、後期高齢者す。軍部がかつてと同じ感覚で、身体的暴力をともなわない軟禁ならと考えていたら、違う展開もあり得るでしょう。

かの国の国民食ミャンマーカレーを筆頭に、ピーナツ油を使った高脂肪食を摂取してきた血管に何らかのトラブルが起きたら(かの国には症状無き生活習慣病を管理してゆくという発想は乏しい)、一連の出来事で発生したであろう三密状況で側近や自身の感染可能性、そして、軍部のみなさんが何~も考えていなかったら、軟禁されている間に不幸な転帰を辿ってしまったら、一般国民には軍部が手をあげたと映り沸騰してしまう→スーレーパゴダ周辺が怒れる民衆で溢れかえるというのが、管理人にとって「外れて欲しい予測」ということになります。

当管理人は、いまはコロナ対応でなかなかミャンマーに赴く時間(プラス前後の検疫期間)もとれませんが、ヤンゴンでお世話になったみなさんのストレスレベル上昇に懸念をしつつ思いを馳せてゆきたいと思います。

↓ ヤンゴンでの調査盛り込んだ、昨年の出版物です。よろしければ。

f:id:tabibito12:20191223215405p:plain

 

 

www.anzen.mofa.go.jp