異世界こぼれ話 その二十一 「フレデリック・マイヤース後編:その後」 | Siyohです

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音楽とスピリチュアルに生きる、冨山詩曜という人間のブログです

交差通信はその後も続き、1936年には、ヴェロール親子、パイパー夫人、アリス・フレミングにクーム‐テナント夫人その他を加えた霊媒たちを通じて送られてきた通信数は、3000以上になりました。有名な著述家であるコリン・ウィルソンは、いくつかの著書の中で、何度か下記のように述べています。

「総体的に見て、交差通信とウィレット文書[クーム‐テナント夫人が死後に送ってきた回顧録]は死後の生に関して現存する、もっとも有力な証拠であるといえます。誰でも数週間をかけてこれらを研究すれば、マイヤースとガーニー、シジウィックが肉体的な死を超えて交信してきたことを、明白な事実として確信するようになるでしょう。」

でも、これだけの決定的な証拠があるのに、なぜ科学界では未だに、死後の世界はないことになっているのでしょう?

 

理由はまず、ヴェロール夫人が古典文学の学者であり、ニューナム大学でそれを教えていたことにあります。

この大学は、女性の教育のために作られ、シジウィックとその学友たち、つまりマイヤースやガーニーたちによってその基礎が作られました。そして、交差通信の調査側の一人、シジウィック夫人は、後にここの校長となっています。何を言いたいかというと、交差通信に関わっている中心人物たちが、とても親しい間柄だと言うことです。ちなみに、クーム‐テナント夫人はマイヤースの義理の妹なのです。これらから、乱暴でよく調べようとしない人たちは、すべては彼らが仕組んだイカサマだと言います。

 

しかし、アリス・フレミングは、この通信がなければSPRとは何の関係もなかった人です。彼女はブロードウェイで成功していて、生前は本名を明かさず、ホランド夫人と仮名で呼ばれていました。

交差通信を少しでもよく調べれば、そこに何らかの超常現象が起きていることを否定できません。すべてイカサマだと考える短絡的な人は置いておいて、一方、真面目な研究者たちはどう考えたのでしょう。彼らはまず、すべての通信内容はヴェロール夫人の潜在意識とテレパシー、透視で説明できるのではないか、という仮説を立てました。彼女には古典文学の知識が十分にあるので、こうした通信が可能だったというわけです。

 

とは言え、交差通信の数が増えてくると、彼女以外に確かに、亡くなったSPRの人たちの意識が絡んでいるのを否定できなくなってきます。そして最終的に出てきたのは、これらのSPRのメンバーが生きているときに考えていた事柄が、すべてどこかに溜まっていて、霊媒たちはそれにアクセスしているのだという仮説、いわゆる超ESP仮説です。

 

現在のところ、超ESP仮説には太刀打ちができません。それでも、実際に交差通信を調べれば、こんな究極の屁理屈よりも、素直に亡くなった人たちが存在し続けていると考える方が自然だと思えるでしょう。とは言え、この研究が広まりにくい原因が、あると言えばあります。

 

それはまず、通信に混入してくる「ゴミ」です。例えば前回紹介したヘレン・ヴェロールの通信は、ちょっと見ると、単なる戯言の羅列に見えます。あの優秀なパイパー夫人ですら、「Evelyn Hope」の言葉を受けるのにかなり手間取っています。霊界からの通信は難しいのだという優しい目で見ていかないと、重要なポイントが見えて来ず、調査するのが嫌になってくるだけでしょう。

 

もう一つの原因は、内容が難しすぎるということです。通信に引用されているかもしれない本を頑張って特定したとしても、紙の本は検索ができないのです! 古書のデジタル化が進んだ現代でないと、交差通信の研究はおそろしく大変です。

 

交差通信の重要性は、これから再認識されていくのかもしれません。日本でも昔から、過去にこのような実験が合ったのは知られていましたが、その内容について少しでも詳しく書いたのは、私の前回の記事が日本で初めてかもしれません。この機会に日本でも、こうした研究があったことが広く認識されて行けば良いのですが。

 

さて、マイヤースの話に戻しましょう。彼のこの後の業績を語るには、ジェラルディーン・カミンズの名前が欠かせません。

彼女は小説家ですが、1923年、30歳を少し過ぎた頃、SPRのE・B・ギブスの交霊会に出席したときから、彼女の人生はかなり違う方向へと変化していきました。交霊会で興味深い体験をしてから、カミンズは自動書記を試みてみたのです。彼女と一緒に実験をしていたギブスは、彼女の書記に50人ほどの人物が登場してきて、それぞれ異なった文体で自分が死者であると主張するのを目撃してきました。カミンズは自動書記に関して、 第一級の素質があったようです。

 

マイヤースは1924年12月、このカミンズに突然コンタクトしてきました。その日、カミンズとギブスは、ある年輩の夫妻―R大佐夫妻―の招待を受け、そこで交霊会をしていました。R大佐はカミンズのような優秀な人と一緒に交霊会をすれば、亡くなった友人たちが出てくれるのではないかと考えたのです。ところが出てきたのはマイヤースで、彼はSPRの友人たちについて簡単に描写した後、今手がけている交差通信をここでもやりたいと申し出てきました。ギブスは、一応マイヤースの名前くらいは知っていましたが、他の人達は知りません。そして、R大佐はすぐ実験を中断することにしました。

 

この後、ギブスはマイヤースに興味を持ち、カミンズの支配霊である「アスター」に、彼を探してくれるように頼みました。そして一週間ほどが経ち、下記の会話が持たれたのです。

 

【マイヤース】 話しかけてもよろしいか?
【ギブズ】 フレデリック・マイヤースさんですね?
そういう名で呼ばれていた者だ。
あなたに質問してもかまいませんか?
かまいませんとも。私は新しいスピリットライトに引きつけられてここに来た。
先日、ある御老人のところで話しかけてきたのはあなたかどうか知りたいのですが。
その老人を通して話しかけようと思ったのだが、あの時は大変混乱していたようでうまくいかなかった。誰か他の者も話したがっていた……。その他にも邪魔があったのだが、何とか私の通信を送りたいと頑張ってみた。

 

マイヤースに寄ると、霊能力の高い人達はとても光って見えるそうです。彼は新しい霊媒を探していたので、カミンズとR大佐の放つスピリットライトに惹かれてきたわけです。この後、マイヤースとカミンズは協力し、最終的に下記の2冊の本が出版されることになりました。

 

1932 The Road to Immortarity 
1935 Beyond Human Personality

 

マイヤースの死後の研究成果を収めるこの2冊は、いくつかの翻訳が出版されています。私は昔、梅原伸太郎さんという、戦前からの心霊研究者と知り合い、彼の翻訳で読みました。ちなみに彼は、私に心霊研究の正しい歴史を教えてくれた方です。その彼の翻訳ですが、残念ながらあまりこなれた訳とは言えません。興味のある方は、他の翻訳を探してみることをお勧めします。

 

なお、梅原氏の訳は東京スピリチュアリズム・ラボラトリーというサイトで無料公開されています。それぞれどんな本なのかを知る目安として、そちらから目次を引用させていただきましょう。

不滅への道

【序文類】
原書扉・凡例
ジェラルディーン・カミンズによる第四版への序文
オリヴァー・ロッジによる序文
E・B・ギブズによる序文

【第一部 死後の生活】
マイヤーズのはしがき
第一章 生存の目的
第二章 魂の旅程表
第三章 幻想界
第四章 意識
第五章 色彩界
第六章 類魂
第七章 火焔界
第八章 白光の世界
第九章 彼岸ないし無窮
第十章 宇宙
第十一章 形相の世界から
第十二章 死とは何か
第十三章 心霊の進化

【第二部 人間の諸能力その他についての教え】
第十四章 自由意志
第十五章 記憶
第十六章 大記憶
第十七章 注意
第十八章 閾下自我
第十九章 睡眠
第二十章 テレパシー
第二十一章 二つの世界の想念交流
第二十二章 幸福とは
第二十三章 神は愛よりも偉大

【付録】
交差通信の記録(E・B・ギブズ)
要約(E・B・ギブズ)
補遺
1 『クレオパの書』について
2 霊光
3 「他界」からの通信
4 地上生活の記憶を通信する困難
5 動物の死後存続

以前はマイヤースではなくマイヤーズと表記がされていました。もう一冊の目次も紹介しましょう。

人間個性を超えて

【序文】
原書扉・凡例
E・B・ギブズによる序文 (オリバー・ロッジ卿との交霊会記録を含む)
第二版(一九五二年)へのことば(E・B・ギブズ)

【第一部 死直後の世界】
第一章 ケチで、ちっぽけな時代
第二章 意識の発展史
第三章 死後間もない時期の生活
超エーテル世界または霊的世界
第三界における光
第三界における時間
四次元界
愛と結婚
暴君の運命
死後の世界の構造
家族の類魂
夢の子
人間個性と死後存続
生体と連動する複体
病気と複体
自殺
第四章 再生
第五章 同魂同士
第六章 二つの性
第七章 休戦記念日
第八章 一九三四年十一月十一日

【第二部 人間個性を超えた世界】
第九章 存在各界の図
第十章 人間個性を超えて
火星の神秘
金星
蓮華の園(幻想界)
惑星に人は住むのか?
第十一章 太陽人
恒星での生活
太陽人の誕生
恒星上の光
自然霊
ことばと宗教
いわゆる生命力
火の消えた世界
第五界
究極の実在
終局

【第三部 祈りと神秘体験】
第十二章 祈り
集団の祈り
孤独の谷での祈り
賛美と感謝
運命と祈り
静 寂
第十三章 地獄
地獄と死後の生活
われわれは自分で地獄を創るか?
悪人の栄え
第十四章 正しい愛の道
知識と叡智
仏陀として知られるゴータマ
キリスト、仏陀、および霊的世界
ナザリーンとキリストの弟子たち
第十五章 予見と記憶
概念的世界
霊能者の被暗示的性質
第十六章 自然霊
動物の死後存続
第十七章 狂気
第二の処置法
準備期間
地縛霊のいろいろ
老 衰
憂鬱症
幻 覚
妄 想
第十八章 正義

【補遺】
一 肉体と魂と霊(E・B・ギブズ)
二 『人間個性を超えて』(E・B・ギブズ)
三 ヴェルサイユ宮殿の冒険(E・B・ギブズ)

【付録】
魂の旅の旅程表――マイヤーズ通信による他界の構造

面白そうだと思いませんか。是非一度は読んでみてください!

 

マイヤースはこの後1996年にも、スコールグループという、科学者の立ち会いのもとに物理心霊現象を再現することを目的としたグループの実験に現れています。

こんなフィルムが実験中に念写されました。同席していたSPRのメンバーはその後、謎解きに散々悩ませられるのですが、この辺は著書に詳しく書いたので割愛させていただきます。

 

マイヤースの業績、いかがでしたでしょう。私が世界で一番尊敬するのはこの人かもしれません。

 

さて、時代が進み、1900年代後半になってくると宇宙人の進出が目立ってきます。次回はその流れを追ってみましょう。