渡部昇一の本。
まず一言、戦争は外交の一部だ。
さて、初版から四十年ほど経った本だが、この度何かの都合で新刊として本屋に並んでいたので買い込んでみた。
著者自身は大分前に逝去してしまっているのを考えるとおかしな気分だ。
さて本の内容だが、ドイツの戦争を裏から操っていた集団について書かれていた。
俺はてっきり、ドイツの参謀本部はかなり新しい組織だとばかり思っていたのだが、骨格自体はナポレオン戦争の時から有ったようで、少々驚いてしまった。
シャルンホルストとか、グナイゼナウとか、クラヴィッツとか、俺でも知っている名前がこれでもかと並んでいたことにも驚いたが、ある意味これは当然なのだろとも思う。
それだけナポレオン一世が脅威だったという意味で。
さてドイツ参謀本部だが、なかなかに興味深いことが書かれていた。
何よりも興味を引かれたのは鉄血宰相ことビスマルク氏についてだ。
オーストリアとの戦争の終盤でウイーンに攻め込むかどうかの瀬戸際、窓から身投げしたくなるほどに追い詰められていたと書かれていた。
軍人としては誰が見ても分かる明確な結果が欲しかったのは分かるのだが、ビスマルク氏の対フランス戦争を見据えた方針も理解できる。
実際にウイーンへの突入が無かったことで、ドイツとフランスの戦争の時にはオーストリアは敵対しなかった。
これは間違いなくビスマルク氏の方針が正しかったことを意味しているだろう。
なのになぜか、ナポレオン三世を捕虜にしてしまった後、パリへ雪崩れ込んでしまいフランスの恨みを買ってしまっていた。
第一次世界大戦の敗北絡みで報復されたことを考えると、ビスマルク氏の主張通りにパリに攻め込むべきでは無かったのだろうと思う。
まあ実際は無かったことなので、パリに攻め込まなくても敗戦国ドイツは責め立てられたのかも知れないが。
さてもう一つは、戦術的勝利と戦略的勝利と、戦争での勝利は直結しないと言う事を、なぜか忘れてしまう人たちが多いという所。
日露戦争でアメリカの仲介でなんとか勝つことが出来た大日本帝國がその後の戦争で負けた事を例に出すまでも無く、戦争は外交の一部であることを忘れて戦術的、戦場での勝利にこだわってしまう人がやたらに多い印象を受けた、
これは軍人の性なのかも知れないが、いや、アメリカの大統領の誰かも戦争が外交や政治の一部であることを忘れて収拾の付かない戦いに乗り出したりもしていたか。(イラクとかアフガニスタンとか)
この辺はとても興味深い。
全体としてこの本はとても有意義な一冊であると思う。
近い将来日本が戦争するかどうかは分からないが、もしものためにこの本は十代の内に一度は読んでおくべきでは無いかと思う。
わかりやすく戦争と外交、政治について書かれていた。
惜しむらくは、ドイツの参謀本部の人員が多くなることと、その機能が衰えたことについてもう少し詳しく書かれていれば良かったと思うくらいだろうか。
俺では、なんとなくは分かるのだがそれを言葉にして誰かに説明することは出来ない。
と、後書きなどを含めて少々問題のある本だが、時間を作って是非読んでもらいたい。
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