*短編集「統合失調症と精神医学と差別」の短編NO.50
◆音もまたしかり(読み飛ばしてもらっても支障無し)
音についても、みなさんが出す音を例に考察していきます。でも面倒くさかったら、この節はすっ飛ばしてくれても、全然問題ありません。
みなさん、自分のことを、厳格な音楽家だと仮定してみてくれますか。
音色にこだわるみなさんは、楽器の保持の仕方に特別な注意を払います。ふだん楽器を粗末に扱わないよう気をつけるのみならず、その保管の仕方にも気をつけます。湿気対策すら怠りません。
だって、ふだんからちゃんと楽器の保持に努めていないと、いつものように楽器を演奏しても、違った音が出てきてしまいますものね?
またみなさんは、演奏場所の周囲や、演奏場所である建物の立て付け(材料や空間の作り方など)も気にします。
だって、どんな場所で演奏するかによって、音の響きが違ってきますものね?
さらに真面目なみなさんなら、自分の体調にも気を配るかもしれません。だって、楽器を扱う自分の身体がどうあるかでも音が変わってくるかもしれないではありませんか。
さて、そんなみなさんはひょっとすると、演奏会場でのリハーサルで、音の聞こえ方を確認するために、誰かに舞台上で音を出しておいてもらいながら、観客席内を歩き周り、音の聞こえ方を確認するかもしれません。
だって、聴き手の身体がどこにどのようにあるかによっても、音の姿は違ってきますよね? 電柱に歩み寄ると、刻一刻とその姿が大きく、かつ、くっきりしていくのとおなじように、みなさんが舞台に近寄っていくと、刻一刻と音の姿は大きく、かつ、くっきりしていきます(「音量」が大きくなっていくと言っているのではありませんよ)。
耳の穴に指を入れれば、音の姿は小さくなりますし、逆に耳たぶの後ろに手のひらをくっつけてパラボラアンテナのようにすれば、音の姿は大きくかつ、クッキリしますよね。
そしてみなさんはそれから数時間後、演奏会の最中、観客席で物音がするたび、表情につい神経質な色を浮かべてしまうかもしれません。だって、みなさんが出している音は、観客が咳き込んだり、誰かのスマホの着信音が鳴り響いたりすると、その雑音の陰に隠れてしまいますものね。
いまちょっと想像してみてもらってもわかったように、音も一瞬一瞬答えるものですね、楽器、建物、演奏者の身体、聴き手の身体、周りの音等といった「他のものたちと共に在るにあたってどのようにあるか」という問いに?
音もいわゆる、周りの空気を読むもの、ですね?
*今回の最初の記事(1/10)はこちら。
*前回の短編(短編NO.49)はこちら。
*これのpart.1はこちら(今回はpart.4)。
*このシリーズ(全61短編を予定)の記事一覧はこちら。