MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2194 地方交付税とマイナンバーカード

2022年06月29日 | 社会・経済

 金子恭之総務大臣は6月19日、国が自治体に配分する地方交付税の交付金について、来年度から自治体ごとのマイナンバーカード普及率に応じ算定に差をつける方針を明らかにしました。

 これは平たく言えば、マイナンバーカードの普及率が高い都道府県や市町村には、ご褒美として交付金を割り増ししますよという話。カード利用者が多い自治他は、その分デジタル対応のための経費がかかるだろうというのが表向きの理由のようですが、それをまともに受け止める人は少ないでしょう。

 いったい誰が考えたのか。遅れている自治体に取り組みを促そうという政府の思惑はあまりにあからさまで、(国が地方財源の一定額を預かり、財政力の弱い自治体に適正に配分するという)地方財政制度の趣旨を逸脱しているのは明白です。

 もとより、地方交付税の総額が変わらないのであれば、受け取る額が増える自治体があれば、減る自治体もあるのは自明のこと。カードの普及が遅れている自治体から抜いたお金で、普及率の高い自治体に加算するというのでは、「国の横暴」「あまりに恣意的」と批判されても仕方がないような気がします。

 6月21日の(群馬県の地方紙)上毛新聞によれば、地方交付税の配分に係る政府のこうした方針に対し群馬県太田市の清水聖義市長は自身のツイッターで、「筋違いではないか」などと強く反発の姿勢を示しているということです。

 清水市長は上毛新聞の取材に対し、全国のマイナンバーカードの普及率が低迷しているのは「総務省の責任が大きい」と強調。交付税が自治体間の財源の不均衡を調整し、財源不足を補う趣旨のものである点を踏まえ、「地方自治体の権利を侵すのは論外」「普及率が上がらない責任を地方に転嫁しないでほしい」と述べたと記事はしています。

 また、ニュースキャスターの辛坊治郎は6月20日、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組において、政府がマイナンバーカードの普及率に応じて自治体に配る地方交付税の算定に差を付ける理由を「デジタル対応の経費がかかるため」としたことに言及。「本末転倒だ」と苦言を呈したと報じられています。

 マイナンバーカードはそもそも、デジタル化によって行政効率を上げようという政策のはず。それを、マイナンバーカードが普及しているところはデジタル対応の経費がかかるから地方交付税を増やしますというのでは理屈に合わないと氏は言います。

 おそらく、総務省の本音は違うところにある。自治体によって普及率がだいぶ違うという実情があって、(それは)それぞれの自治体の熱意の差によるものだと政府が考えている証左だというのが氏の認識です。

 (結局のところ)政府としては「マイナンバーカードをとにかく普及させてくれ」というのが本音だと氏は話しています。そこで出てきたのが、地方交付税のアップなわけで、いわば「ご褒美」のようなもの。自治体のお尻を叩くための餌なのだろうということです。

 さて、マイナンバーカードについて政府は、来年3月末までにほぼすべての国民に行き渡ることを目標としていますが、6月15日時点の交付枚数は全国でおよそ5694万枚、交付率は人口比で45%、国民の半数以上が未だ手にしていない状況です。

 このため政府(総務省)は、6月30日から「マイナポイント第2弾」の一大キャンペーンを張るとしています。9月末までのキャンペーン期間中であれば、カード新規取得で5,000円、健康保険証の利用登録と公金受取口座の登録で7500円ずつ、併せて20000円相当のポイントがもらえるという1兆8134億円をかけた豪勢な企画です。

 その規模たるや、赤ちゃんからお年寄りまで、国民一人当たりに直しておよそ1万5千円に及びます。財源不足の折、これだけの予算があったら一体何ができるでしょう。

 国民や自治体を「金で買おう」という(ある意味)なりふり構わない政府の方針を、喜んで受け止めている納税者はどの位いるものなのか。政府の意地を賭けたやり方に、なにやら首をかしげたくなるような子どもっぽさを感じるのは、果たして私だけでしょうか。

 



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