今勤めている社会福祉法人のオーナーからお盆に突然の全従業員招集命令。

 

法人のコロナ蔓延終息宣言と拡大防止に尽力してくれた職員を労うと共に金一封の配布、頂いたお中元をくじ引きで山分け…ここまでは良かった。

 

次に紙を渡され、赤字で書かれた職員が1名ずつ呼ばれ立たされる。

 

    

〇〇 ○○。9月より△△へ配属する。

 

異動辞令だ。

たいがいの者が出世。

 

私の名前も赤字であった。

 

特養にて介護見習いとして配属する。

 

今の職場である法人にグループホームのケアマネをしてくれないかと声掛けられて他会社から来たグループホームの介護主任と二人、自分達の理想のグループホームを改革を重ねて作ってきた。

 

いろいろあったが、やっとそれなりのものになってこれからだという時期だった。

 

なぜだ?ケアマネとしての異動ならまだしも介護見習い…名簿では一番下。

 

共に頑張ってきた介護主任は主任を外され副主任のまだ下のグループホームの一般介護職員。

 

身体は震え出し、私は獣の目になっていたそうだ。

隣に座ってた介護主任が

 

 

    

堪えなさい。私も降格だから。

 

と今にも暴れそうな私を必死に制止する。

 

一通りの辞令通達が済んだ後、私は「業務が残っていますので…」と逃げるように一番にその場を去った。

 

オーナーが走ってきた。

 

 

私は金一封の礼を述べた。

この度の異動はオーナーの言うに言えない致し方ないことだと言うのは承知しています。

しかし、特養でしたら近くにもたくさんありますのでわざわざ遠いここまで来る意味もなくなりました。

 

と、直にお別れの気持ちを述べた。

 

 

    

貴方がグループホームで尽力してきたこと、認知症の勉強をしていること、居宅ケアマネの夢があって数年後に主任ケアマネの資格を取得しようとしていることも知っています。

しかし私達夫婦はもう90歳。もうすぐ死にます。

でもこの施設は生き続けます。

その為には貴方がたのように夢があり、頑張っている若い人達に託さなければなりません。

ケアマネは理不尽なことを言われる仕事です。

この異動の理不尽から始まってこの法人の花形である特養の現場でいろんな人の理不尽と向き合って修行して下さい。

この法人のケアマネでいることに変わりはなく、必要な実務経験は併せて踏ませます。

 

 

その時は空っぽになっている私には響かなかったが、その後も介護主任や周りに人に私を説得するようにと電話をかけまくっていたそうだ。

 

降格された介護主任は私あっての介護主任であったと自他共に認め降格を納得したそうだ。

 

何もなければそんなものはブラックな方便だと退職するが、オーナーが入社時から私を可愛がってくれていた事実は変わらず、翌日私は新天地へ挨拶に行った。

 

特養は法人内に二つあり、見返すと私が行く方の新天地の特養のメンバーは社会福祉主事や研修済の職員、元主任などのオーナーから目をかけられたオールスターで再編されており、私以外はこれを見て幹部養成の特進クラスだと言っているらしい。

 

喜びよりも介護技術については素人同然の私がこの中で維持できるのかものすごく不安だ。

 

 

グループホームの方が大変。だから大丈夫。

 

 

そういわれても実感はない。

 

私は夢とケアマネは捨てずとも異動後は封印し、介護見習いとしてまずは尽力しようと思う。

そして特養で役に立つ人間になるように介護福祉士を目指すつもりだ。

 

オーナーが言ったことに偽りはないだろうが、一方で、働き盛りの体格の良い男子を特養の肉体労働で使わないと勿体ないと思っている事実もあるだろう。

今までの法人でも社会福祉士やケアマネを持ってても私をとにかく現場の最前線へ行かそう、行かそうとしていた。

それが男性職員の宿命ではないだろうか。

座ってする仕事は衰えた後でもできるから。

 

たぶんどこに行ってもこの宿命からは逃げられない。

だったらそれで充分役に立つよう現場を極めることが先決だろう。

 

そんな悟りを今回の事件で開けた気がする。

 

これにて私の介護渡世 第4章は終わりを告げる。