人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「在宅医療の真実」小豆畑 丈夫

2022/11/28公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「在宅医療の真実」小豆畑 丈夫


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

入院治療のかわりに在宅治療

在宅医療というと、自宅で死を迎えるというイメージがありますが、実際には終末期の患者さんは1割だけだという。著者の在宅医療サービスを受けている患者の9割は入院治療のかわりに在宅で治療を受けているという。


在宅医療が拡大しているのには、2つの側面があります。一つは病院に入院するとどうしても医療費が高くなってしまうということ。もう一つは自宅で生活することで自由で人間らしい生活を患者さんができることです。これまで日本の病院は医療費を稼ぐためにベッド数を増やして老人を受け入れてきましたが、もはや日本の財政はそうした病院を老人ホームのように使い続けることを維持できないのです。


・ベッドの数だけ需要が生まれる・・・人口あたりの医師数や病床数が多い地域ほど、一人あたりの医療費が高くなりやすい傾向にあります(p37)


在宅医と病院医の連携が取れていない

この本が教えてくれる在宅医療の課題は、在宅医と病院医の連携がまったく取れていないことだという。救急医であった著者の経験では、救急車で運ばれてくる在宅医療の患者の状態が、「どうしてここまで放っておいたのですか?」と言いたくなることが多かったというのです。


著者が在宅医になってわかったのは、在宅医としては、いつも嫌味を言われるので、ますます病院に連絡したくなくなるということです。だから、患者さんがどうしようもなくなってから救急車で運ばれることになるのです。著者が救急医のときに、患者の状態を聞くために在宅医に電話しても、電話に出てくれる在宅医はほとんどいなかったという。それほど在宅医と救急医(病院医)の溝は深いのです。


・「どうしてこんなに悪くなるまで放っておいたのですか?」・・・しだいに在宅医は、病院に連絡すること自体が嫌になります(p176)


近くにいる在宅医を選ぶ

著者のアドバイスは、在宅医療サービスを選ぶときには、「急に具合が悪くなったときにどうするか」を考えるということです。具体的には、急に具合が悪くなったときに対応できる、近くにいる在宅医を選ぶことです。そして、できれば、病状が悪化したときに対処してくれる病院も決めておいて、その病院の医師と在宅医に連携してもらうというのがベストなのです。


そして著者が現在取り組んでいるのは、対立する在宅医と病院医という壁を壊し、在宅医である著者が病院医と事前に連携することなのです。病院医と在宅医との「勉強会」も開催しているという。こうした当たり前のような取り組みが必要であるくらい、在宅医と病院医に対立関係にあることにびっくりしました。もう少し勉強してみたいと思います。


小豆畑さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・「自宅で看取ろう」と最初は意気込んでいたけれど、やっているうちにしんどくなったら、病院や施設を利用すればいいのです(p96)


・心肺蘇生はしなくていいと急変時の方針が決まっているのなら、救急車を呼ぶのは控えるべきです・・・在宅医に連絡をしてください(p190)


・ケアマネジャーは途中で変更することも可能です(p73)


・ショートステイはご家族が心を整える時間(p106)


▼引用は、この本からです
「在宅医療の真実」小豆畑 丈夫
小豆畑 丈夫、光文社


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

第1章 在宅医療は「より良く生きるため」の手段
第2章 初めてでもうまくいく在宅医療の受け方
第3章 家族の負担をなるべく軽く
第4章 さまざまな介護施設・高齢者施設
第5章 生きる意味を問いかける「重度訪問介護」
第6章 在宅医療の落とし穴は「急変時の対応」
第7章 在宅医療と救急医療の連携はいかに可能か



著者経歴

小豆畑丈夫(あずはた たけお)・・・医療法人社団青燈会小豆畑病院理事長・病院長および救急・総合診療科部長。日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野臨床教授。1995年日本大学医学部卒。同大学病院の救命救急センターで研修を終えた後、外科学を専攻。1998年に日本大学医学部大学院に進み、その間に米国アイオワ大学へ留学し、がん遺伝子研究で学位を取得。2006年日本大学医学部附属板橋病院救命救急センターに移り、2013年診療准教授に就任。15年青燈会小豆畑病院院長に就任。大学病院時代の仲間と共に、在宅医療と救急医療を中心とした地域医療に従事している。2017年日本在宅救急研究会(現在、日本在宅救急学会)を結成し、新しい地域医療のあり方を研究・発信し続けている。


日本の医療問題関連書籍

「医療経済の嘘」森田 洋之
「続 ムダな医療」室井一辰
「医療の限界」小松 秀樹
「大往生したけりゃ医療とかかわるな」中村 仁一
「神の手の提言―日本医療に必要な改革」福島 孝徳
「在宅医療の真実」小豆畑 丈夫


この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


ブログランキングにほんブログ村


無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信)
3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメント(1)

在宅医療の真実を書いた小豆畑丈夫です。この本を取り上げて頂き、ありがとうございます。しかも高評価まで頂き感謝しております。

メールなどでお話させていただけますと嬉しいです。

宜しくお願いいたします。

小豆畑丈夫

コメントする


同じカテゴリーの書籍: