デフレ禍とコロナ禍。脱却への考え方は同じです。 | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ


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1月23日公開予定だった『シン・エヴァンゲリオン劇場版 :II』は再び公開延期になりました。

公開日については公式サイトの発表をお待ち下さいm(_ _)m

 

 

 

『呪術廻戦』 2020年10月2日より放送開始。

第2クールから京都校交流編に突入。

 TVアニメ『呪術廻戦』にキャラクターデザインなどで参加しております。

第1弾PV  演出を担当いたしました。

お楽しみに!

 

 

                                                     

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、第三波は1月18日の週に入って、減少傾向になっているようです。

東京都は陽性率が10%まで下がり、実効再生産数も0.91まで下がりました。

年明けから、人出が明確に減った東京は他の地方都市に先んじて減少傾向になりました。横浜や神戸、福岡など、人出が今ひとつ減らなかった都市は感染拡大が長引いて高止まりに近い状態がある。したがって、全国計にしめる東京都の割合は1月7日の32.3%から22.7%まで下がった。

緊急事態宣言は名ばかりで強制力が弱く、街の人出がなかなか減らないそうだ。それでも、地方で平常時ほどまで増えた人出が減ってきているので、今後は感染者数も減っていくでしょう。

問題は、減少して横ばいになる数です。第二波後はすでに落ち着いたと言えない慢性化でした。

同じ失敗をこれからも繰り返すのか。

 

これまでと同様に、感染者数の増加に遅れて死亡者数が増えます。医療機関はいまだ逼迫状況にあり、全体の感染者数を減らす、今後は増やさない、ことが基本的に大切です。

 

 

さて

コロナ禍開始より現在まで、最も声高に主張しているのは「政府の財政拡大による給付と補償の増強・継続化を大前提にすること」です。表現は多少変えてきましたが、財政拡大路線への転換が急務であり大前提なのだ、という考え方に春以降一切変更はありません。

と言いますか、経済を学びはじめて8年以上、デフレ脱却には財政拡大路線への転換が必要だと考えてきた。

 

この考え方は長期的な状況を考えた結果です。

財政拡大を拒否した20数年間、デフレ不況で貧困化と格差拡大が進み、保健医療を含む_全てのと言って良い_公共インフラが弱体化させられ、多くの国民が経済・社会保障・疫病含む災害などから見捨てられた。この土壌に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が侵入し、半ば必然的に大被害をもたらしたわけです。したがって、被害の根本。財政支出を削る前提を改め、財政拡大路線へ転換することが大前提で必要なのです。

 

改善には様々な手当が必要です。ただ単に財政政策を見直しただけでは不十分である、という意見もある。つまり、分配が適切に機能していない問題。アメリカが顕著ですが、政府が投入したお金が特定の分野に偏ってしまう問題だ。したがって、経済構造を改めないかぎり財政拡大しても格差を拡大させるだけである、という論理が成り立つわけで、日本でも金融経済を中心に語る有識者に多い意見だ。

こうした経済構造の問題は、長期的な戦略を立てて対処しなくては改善できませんが、「どうせお金は特定の連中に流れてしまうのだから財政拡大は意味がないのだ」と考えてしまうと、緊縮財政_財政支出の削減_を追認することになり、ますます状況を悪化させる。20年間もデフレが固定してしまった背景に(経済財政に詳しくない一般層では)、このような一種の諦めが作用したと思う。

 

デフレ状況からの教訓は、政府の財政政策は拡張的でなければならない、ということです。

そもそも、GDPは生産・支出・分配の三面で等しいのですから、政府支出を増やせばGDPは増大し生産も分配も増大します。大前提として財政拡大が行われていない状況では、分配を改善することもできないのです。

 

たとえるならこんな具合です。

水源池の水が少ない状態では、水量が少ないから、深くて大きな川にしか流れていかず、浅くて小さな川には流れ込まない。天から水を供給すれば大きな川にまずたくさんの水が流れ込むことになるが、それは嫌だと言って水を増やすのを否定すれば、小さな川は干上がったままなのだ。こうなると、水源池の水を増やしたくない小さな川の意見が、大きな川にとって好都合になる。

水源池に大量の水を供給し、大きな川にも小さな川にも水が流れ込むようにしたその上で、小さな川に流れ込む量が多くなるように工夫していけば良いのです。

 

一部の富裕層や大企業に得をさせたくないから財政拡大は嫌だ、という姿勢は、自分の首を絞めるだけなのです。

 

長期戦略である財政拡大を「財源問題」で否定する間違いは散々書いてきました。

自国通貨を発行している日本には「財源問題」はありません。インフレ率も超低レベルなので、数年間100兆円超えの財政拡大を維持しても年率30%を超えるようなインフレ加熱にはならない。インフレ率が上がってきたら、それは好景気になった、ということです。3〜4%になったら財政を絞るなり金融政策を強化すれば良いのです。

財政拡大路線を否定する材料はマクロ的には存在しません。

しかし、政治的に難しいのは事実だ。

そこで、長期戦略の財政拡大を分離して、やりやすい成長戦略に邁進する状況がつづいた。

経済構造を改めるには時間がかかるものです。当面の対策には財政政策ではなく、個別の改革や規制緩和で対応するべきだと20年以上やってきた結果、最低最悪を実現した。コロナ禍以前のはなしですよ。

 

短期戦略として積極的におこなわれてきたのは、消費増税・改革・規制緩和・グローバル化です。財政支出は年度で考えると莫大になるので四半期へ短期化して考えるようにした。

長期戦略の財政拡大を拒否し、短期戦略へと切り離しておこなった結果、日本は低成長に陥り、国民は貧困化、格差が拡大した。

 

どれだけ政治的に難しかろうが長期戦略たる財政拡大を否定または諦めてはいけないのです。

そもそも、消費税・改革・規制緩和・グローバル化は、財政拡大路線に転換することでほぼ必要なくなります。改革・規制緩和は全てが悪者ではない。つまり、投資が活発になる好景気になれば、生産性のさらなる向上や賃金上昇に適した改革を選べるようになるでしょう。消費税は廃止できる。そういうのを改善と言います。グローバル化は外国とのお付き合いでどうしても必要な程度にやっておけば良いのです。

賃金が上がっていくのを嫌がる大企業や、好景気で貨幣の価値が下がる(資産価値が下がる)のを嫌がる富裕層にしても、全体的な経済状況の好転は長期的な得になるのですから、次第に笑顔になっていきますよ。

 

 

さてさて、コロナ状況において、です。

 

平常時では、財政拡大路線に転換するとして、どんなところに財政的な手当をするかが問題になるでしょう。公共投資や景気刺激策など、ある程度間接的な手段でもって経済循環を促し景気回復へ持っていく。やりながら、うまく行ってないところ是正したり、試行錯誤も必要だ。国民の所得が上がって好景気を実感できるようになるまで、2年はかかるだろうと言われます。

 

では、コロナ禍のような非常事態ではどうなのか。

経済循環を用いた手段では間に合いません。したがって政府は、一度だけとは言え10万円給付金や持続化給付金を配り、企業には融資補助の手当をした。

直接に救う措置が最優先になります。

所得の差を考慮せずに全員に配ったのは正解でした。しかし、当初は制限付きの給付だった。休日に地元に帰って批判を叩きつけられた与党政治家が、東京に戻ってきて党の会議で「一律給付」を必死に訴えて実現したんだそう。「国民の声」がいかに大事かを知らしめた。

非常事態には、直接給付と粗利益補償が必要なのです。

 

感染症の被害を最小化すること。感染症の流行を早期に抑えて、経済活動の再開を早めること。これを重視するならば、財政拡大による給付と補償が大前提でおこなられるのが自然です。

しかし、現実にはそうならなかった。政府は、現在に至るまで「経済を回す」固定観念に縛られており、結果的に感染状況も波状に悪化し続けている。

 

ここでも、長期戦略と短期戦略を分離した失敗がありました。

藤井聡教授だけではありませんが、代表的なので例示せざるを得ません。

肝心なのは考え方です。

 

緊縮財政をずーーーっとやってきた政府が「財政政策を徹底的にやると思えない」、だから、個々人でできる感染対策をしっかりやって経済を回しつづけなければならない、という論理だ。

このように明言せずとも、なんとなく同じように思っている人は多い。藤井教授のツイートに賛同して「財源には限りがありますから、経済を回さなければ」と書いている人が散見された。残念ながら教授の主張は「反緊縮」の呼びかけになっていないどころか、財政破綻論者に自信を与えている。

おそらく、コロナ禍は夏頃には終わると見込んだのでしょう。疫学の専門家もそう考える人がいたし、ボクもそう思っていた。そのため、従前からの財政拡大論を一旦横におき、経済被害を救う「現実論」を打ち立てた。その心情は理解できるし、個別には適切な意見も含まれると思うが、財政拡大論を二の次にしたのはマズかった。正直言って藤井教授の「財政拡大をやると思えない」発言は2020年最大のショックでした。

なぜコロナ禍が拡大長期化したのかと言えば、政府は最初から長期的な財政拡大をする気がなく、短期戦略の集団免疫説を都合よく活用して経済を回そうとしつづけたからだ。外国人観光客のインバウンド収入に固執したことも、その代替案とも言える「Go toキャンペーン」もそれだ。

「財政拡大したくない」

「財政拡大はできない」

「財政拡大するとは思えない」

これらは同じ結果をもたらします。

財政拡大を否定または諦めて、経済を回すのに好都合なスウェーデン方式やコロナ軽視論者を次々取り入れるも、結果は悪い方向へと転がり落ちつづけたのです。

ウイルスは人と人の接触で伝播するのだから、人出が増えれば感染者数が増えるのは当然だ。いくら、年齢層や場所によって緩和して良い、気をつければ大丈夫と言ったところで、人は都合よく瞬間移動できないし、高齢者だけに都合よく接しない生活はできないし、必ずうっかり者が存在する。ウイルスは人間の思想信条や理論や価値観や好不都合など、全く気にしない!

移動と接触の増加、少数の失敗の積み重ねによって、全国的な感染拡大が起こる。そして、「過剰自粛はダメだ」と言っても(「経済を回せ」策の結果)感染拡大が起きれば多くの人々が自主的に自粛をする。結果、感染症被害も経済被害も三度起き、起こる度に拡大長期化したのです。

 

人間の意志で制御できるはず、という考え方は自然災害やウイルスには通用しない。

非常事態には、国家は行政力を発揮して、財政による救済と防止策を主導しなければならない。それこそが政府の役目であり国家の存在理由だ。

 

 

財政拡大を大前提に要求することと、マスク着用や三密回避から緊急事態宣言に至るまで感染対策を求めることは矛盾しません。三橋貴明氏が、「給付と補償を徹底するから、動くな(経済活動を停止する)」とやるのが正解だと言っているように。そしてこの考え方は、経済活動を否定するものではない。むしろ、再生するために必須の財政支援を継続し、コロナを早く抑え込め、と言っているのです。

しかし

新型コロナを軽視して経済を回すべきだと主張することと、給付と補償を求めることは、矛盾になってしまう。「経済を回すなら給付と補償、いらないよね」と否定する政府の姿勢と合致してしまう。財政拡大したくない財務省や政治家には誠に好都合だ。

経済を回して人出が増えれば感染拡大を起こしますから、結果的に経済は止まってしまうのだ。本末転倒です。

そんなよくある考え方のまま、コロナ禍がなんとなく収束したら、財政拡大は永久にできないままデフレ脱却できず、国土強靭化もできないまま巨大地震に直面し、衰退の坂を転がり落ちることになるのです。まー、これまで通りってことですがね。

 

後者の考え方を放置するわけにはいかないし、補強してしまう言論は批判しなければならない。

 

 

デフレ下における経済政策の失敗とそっくり同じ構造にあるのがおわかりいただけだろうか。

 

長期的な財政拡大路線への転換を否定または諦めて、短期視点の消費税・改革・規制緩和・グローバル化に固執した結果、日本は経済衰退して貧困化・格差拡大化した。文化は衰退し、自然災害に対処できなくなって救える命を救えなくした。

状況が悪くなればなるほど、短期戦略に固執する負のループへと陥った。

 かたや

長期的な財政拡大路線への転換を否定または諦めて、短期視点のウイルス対策である集団免疫説や個々人の対策優先に固執した結果、コロナ禍は長期化し、経済被害が増大長期化した。文化は衰退し、供給力が衰弱し、救える命を救えなくしている。

状況が悪くなればなるほど、短期視点に固執する負のループへと陥った。

 

感染症の「五類格下げ」とは、「移民拡大政策」並に泥縄な発想ですが、財政拡大を否定または諦めた上でできること、という意味で全く共通なのです。

 

 

第三波は減少傾向になりつつありますが、ここで長期的に財政拡大しない限り、ワクチンが間に合う前に第四波を招き、さらに長期化させることになる。生活と企業経営は政府が金を出すから安心してくれ、とやるべきです。

財政拡大なしでは、感染状況が落ち着いても生活や企業経営の困窮がつづくので、感染対策が柔軟におこなえず、経済を回そうとすれば、3度の前例通り、感染症の大波がまた起こります。経済被害はさらに悪化し、確実に慢性化します。

 

コロナ禍の長期化にはデフレ禍の長期化とよく似た構造があることに注目してください。

「Withコロナ」の発想は、「Withデフレ」とそっくりなのです。つまり、諦めは悪化の更新になる。

 

デフレ不況と同じ元凶を絶たねば、コロナ禍の最中もその後も、悪化がつづくことになるのです。前例は嫌と言うほどありますから、必ずなる。

コロナ禍の今こそ、政府に財政拡大させることを諦めてはいけないのだ。

 

 

長期的な財政拡大路線への転換が大前提。

非常時には直接の給付と補償を増強・継続化することが大前提。長期的な財政支援が不可欠だ。

その上で、短期的な感染対策や医療環境の改善策も同時におこなう。

個別の感染対策論をいちいち否定するつもりはありません。しかし、財政支援と分離するのではなく、同時並行でやろう。

感染症はどうしても発生します。しかし、大波を起こさず早期に抑え込むには、デフレ脱却と同じく、財政拡大路線への転換が大前提で必要なのです。

 

 

 

 

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