平穏な時こそ最悪を想定して準備しよう | Tempo rubato

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遅れ気味な年内の仕事に集中している間に12月になりました。びっくりです。

 

さて、日本のCOVID-19感染者数・重症死亡者数は低いレベルを維持していて、去年の第1波前の3月初旬、あるいは第2波前の7月前半頃の状態です。都道県別で見ると、半数以上が「ゼロコロナ」を実現できています。

この状態がつづいてくれると精神的に平穏で良いですね。

 

半数以上の県がゼロコロナで東京大阪など大都市圏も10人台の低水準。「第6波前」を引き伸ばしてくのが望ましいと思います。

 

そのためには、平穏な時こそやるべきこと、を改めて確認し、出来ているか、政府や地方行政はどうなのか、チェックしていく必要があるでしょう。

 

 

日常生活レベルの心理というのが、案外大きく作用するのが政治です。

なぜなら、大多数の国民が持つ心理、生活習慣、慣れ、というものが社会全体を動かすフライホイールのように作用するからです。フライホイールは、動かすまでは重くて大変ですが、動き出せば小さな力で安定して回転し続けます。一方、止めようとしてもなかなか止まらず強い力が必要。社会心理や政治の方向性とよく似ています。

 

再三書いていますが、日本はCOVID-19災害を受ける前から30年近い不況の只中にいます。

バブル崩壊後にデフレ不況が起こされて、1998年から経済全体を表す統計データは軒並み悪化、つまり貧困化していったのです。部分を取り出せばデフレ期でも好調なところはあるんでしょうが、全体的には不況です。同じように、COVID-19災害の最中にもあまり打撃を受けなかった分野や、感染せず普通に暮らせている人もたくさんいるわけです。しかし、まずは全体的な状況を観察して対処を考えなければ、いづれは今そうでもないところに不況や災害は巡ってくるのです。

経済を観察するようになった10年ほど前と地続きで、COVID-19災害に入った去年2月以降を観察して得たひとつの結論は、「そう悪くもない」部分を取り出す正常性バイアスや楽観論は禁物だ、ということです。

 

 

日本が、人口や経済規模が近い諸外国に比べて感染状況が軽い理由。これも何度か書きましたが、日本特有の「自粛力」の賜物だろうと考えています。もちろん、国や地方の行政が良い方に作用したこともあるでしょうし、今年からはワクチン接種が予想外に進んだことも好材料でした。ただ、それら部分部分に作用する全体的かつ基礎的な特性が、日本の感染状況を軽くする土台になっていたと考えざるを得ません。日本に特有の「自粛力」を抜きにして、比較的軽度な感染状況や、10月以降の望ましい状態も説明できないと考えます。

 

「自粛力」の正体はなんなのか。それは、日本の気候風土に大きく関わります。

毎年の台風大雨大雪、忘れた頃にやってくる大地震や大津波。楽観すれば大被害を被る教訓は、それこそDNAレベルで日本人に浸透しています。

硬い言い方をすれば

何も起きていない平穏な時から最悪を想定して準備しておく。

程度はともかく、これが理屈でなく個人や社会の常識として根付いています。

 

日本では「空気」が社会を支配していると言われます。同調圧力が強いとかね。

何事にも良し悪しあるものです。

心理療法士の河合隼雄さんは、日本を「母性的な社会」であると指摘します。氏が注意を促しているように、女性男性の性差のことではありませんし、善し悪しでもありません。

何もかも包み込んで丸く収めようとするのが母性的社会です。小さな違いは包み込んでお互いが手をつないで和を作ることで平穏な社会を作ろうとする。しかし、方向違いな行動や考えは社会を乱すと抑え込まれます。一方で、欧米など西洋は「父性的な社会」で、物事を切断して区別し、不要なものは切り捨てていくはっきりとしたやり方で平穏な社会を作ろうとする。国際政治というものは主に父性的社会の原理で動いています。

 

毎年起こる中小の災害と、いつ起こるかわからない大災害を避けられない、逃げ場のない島国。さらに海岸線まで迫った山々に区切られた小さな平地、あるいは山間の小さな盆地で暮らしてきた日本人は、小さな共同体を丸く収めていなければ平穏な生活が送れない。弱者や異論者を区別して切り捨てたりいちいち戦ってたら小さな共同体は成り立たなくなるからです。

(日本の場合)支配者、王、天皇、総理大臣… どう言っても構いませんが、誰か一人が指示命令せずとも、その共同体の「空気」というものが、平時における安全保障の原動力になっていて、現代日本でも多かれ少なかれ根底に残っているのだと考えます。

 

それが観察できたのが、感染状況と街の人出のデータでした。第1波前からすでに、行政が指示(休校休業や自粛要請)する前から、街の人出は減っていました。

NHKがまとめているサイトは2020年2月17日からのデータですが、平均の人出を超えているのは2月16日の日曜日だけで、平日も土日も、すでに平年以下に減っています。そして、去年も書いたように、人出を減らした最も大きな「事件」は志村けんさんが亡くなったことでした。

誰もが知っている有名人というだけでなく、「顔見知りのおじさん」のように親しんでいた人が亡くなった意味は絶大だった。西洋的な、区別された上下構造とは別な、共同体に同居する「顔見知りのおじさん」が社会の「空気」を変えたのです。

 

日本やアジア諸国は欧米よりも公衆衛生的および社会的対策(PHSM)の基礎レベルが高いと言えます。日本人の多くはマスクに抵抗がないので装着義務を課す必要がありません。しかし、欧米では人権侵害だとデモが起こってしまいます。欧米諸外国ではロックダウンを命じないとできない人流抑制が、日本では「自粛要請」で実現できてしまう。もちろん自粛に丸投げする弊害はありますが、感染防護においては、基礎的なレベルが高いのだろうと思います。これも、日本的な社会心理が根底にあるからではないか。

 

衆院選のあと書きましたが、維新の会の大阪での圧倒的勝利も、同じような日本的原理があると考えます。……良し悪しあるわけです。

 

 

どれだけ科学技術が進歩し、西洋の概念や生活様式に慣れていても、数千年か数万年レベルで積み上げられた「日本人」というものはそう簡単に変わらない。根底には古くからの意識があって、意識・無意識を問わず、日本的なやり方を選んでいく。それが良いこともあれば、悪いこともあるのです。

 

「空気」の支配は良し悪しありますが、こと災害への対処では良い要素のほうが多いように思います。平時から気をつけておく意識が、誰かの指示がなくともやられている。社会常識として共有されているのは強みだと思います。

 

ただ、政治の鈍感さは度し難く、国民が自主的に感染防護をすれば経済被害が出るのは予想するまでもないことです。最初に書いたように、日本経済はコロナ前から最悪だったからです。

安倍政権時はどうにか一律10万円給付等をやりましたが、一度だけで継続しなかった。企業には融資補助が主で、返済が必要なため災害が長引くと倒産企業が増えてしまっています。菅政権でも消極的で、岸田政権は最初こそ勢いよく言っていたが、積極財政とは言えない小出しの財政支援に後退しそうです。

財政支援をやってないと言えば間違いですが、不十分なのです。

 

動き出したフライホイールを止めるには強い力が必要です。

超長期デフレで節約に慣れてしまった国民とその国民に選ばれる政治家は、どちらも財政支出を増やすことに踏み出せない。余程賢い政治家でも、頭で必要だと考えたとしても組織の「空気」に抗うことができないのです。

岸田総理や(安倍支持派が応援する)高市政調会長にしても、巨大な緊縮フライホイールを止める期待をしましたが、どうでしょうか。

民主的な方法では限界があります。

村民が迷ってことが進まなくなってしまったら、長老が出てきて「やるべし」と言わねばならないのかもしれません。しかし、現代日本に長老はいません。

 

 

去年4月頃から1年以上かけて、日本人は感染防護を考えながら生活するのに慣れてきました。

ワクチン接種率の上昇、デルタ株の飽和・弱体化などウイルス側の説もありますが、複数要因が重なって現在の良い状況がもたらされていると考えます。理由を一つに絞ることはできません。しかし、ワクチン抑えてからロックダウンを解除しマスクを外して平時に戻した欧米で再拡大が起きています。この違いを説明するには、日本的な「自粛力」を考えざるを得ないのです。

 

 

感染者数が少なくなれば、またはゼロコロナを実現できている県では、初期対応がしやすくなりまります。

去年2月の失敗を教訓に、外から入れないように規制強化し、様々な検査を拡充し、少しでも感染者が出たら増えないよう隔離・治療する地道な対策が必要です。重症者数や病床使用数を基準にするのは、感染者数が多い時の次善策です。現在のような好状態で同じ基準を使ったら、感染者数が増えるまで見過ごすことになり、緊急事態を呼び込んでしまいます。わざわざ悪くする方法を選んではいけません。良い状態を長くするために、状況を見て、フェイルセーフで方法を選びましょう。

 

COVID-19の新しい変異種、オミクロン株が南アフリカから世界へ伝播しはじめています。まだ詳しいことがわかりませんが、去年1、2月の失敗を繰り返さないようにしてもらいたい。

 

 

どれだけ先かわかりませんが、SARS-CoV-2が他のウイルスや風邪と左程変わらなくなって、平時の状態に戻せるようになるまで、感染者が少ない状況を維持することが回復を早めることになるのだろうと思います。

それまで政治家は、平時の経済を前提にするのではなく、非常事態で国民全員を救う取り組みに集中し継続していただきたい。まず大前提として最低3年間財政支出を増やすことです。

理論や説得は重要ですが、実行しなければ改善はありません。

 

 

ところで

関東北部、山梨県富士五湖、和歌山県紀伊水道、トカラ列島で頻発してる地震。九州や小笠原諸島の火山活動など、気になっています。

何かが起きていたとわかるのは、大災害が起きた時です。

平穏な時こそ最悪を想定して準備しなければならない。

 

 

 

 

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