地主という存在
昔の話だが、脱サラして30代に入った頃から経営者の人たちと交流を持つようになった。
そこで感じた経営者と地主との違い。
中小企業の経営者の場合、自分そのものが商品であるという認識を持っている。
普段からの言動や、気配りができるか否かなどで常に人物評価されていて、イコール自分の会社の評価もされているという意識がある。まさしく自分自身が営業のトップであり商品なのだ、と。
なので、一見派手でイケイケなかんじの人でも実は礼儀正しくて驚くような気配りをしてくれたりする。
世の中のことをよく理解しているので、自分の立ち位置や他の人の関係性など正確に把握している。こういうのを帝王学と言うのかわからないが、さすがだなとその振る舞いを勉強させていただいたものだ。
しかし中にはそうではない人もいた。
地主という人種である。
なんというか、人にアタマを下げなくても食っていける人ってホントにダメだなと感じた。
経営者同士の付き合いだと頼み頼まれみたいなものがあった場合、その謝意の表し方というのはとても重要だ(自分という人間の売り込みの機会でもあるし)。
しかし地主はやってもらうのは当たり前で、そのお返しはしない。
イベントの時でも腰を下ろしたまま下働きをしようともしない。
地主と聞いてなるほどなと思ったものだ。受け取るだけが仕事だと人間として成長しないのか、と。
もちろん、今、不動産業界に身をおいて、そういう人はたまたまでほとんどはそんな人ではないことはよくわかっているし、彼らの気苦労もよく理解できるようになった。
ご先祖の代からの広大な農地だった土地に鉄道が通り、勝手に都市計画地域に指定され、農業をやらないと宅地並み課税。好むと好まざるとにかかわらず土地を収益化しなければ税金に潰される。
訪ねてくる業者に相談すれば食い物にされる。向こうからくる人間なんて信用できなくなる。
孤独な戦いで自然とガードが固くなる。地主はお気楽な商売ではないのだ。
気配り営業で器用に生き抜く中小企業経営者と人種が違うだけなのだ。
地主もご先祖からの土地を減らさないよう、悩みながら頑張っている。
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