都市住民への移住支援・情報提供を行っている特定非営利活動法人・100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センターは、相談者・セミナー参加者を対象に、地方移住に関するアンケートを毎年実施している。

 

<調査概要>

調査対象:ふるさと回帰⽀援センター(東京)窓口利⽤者(相談者)、主催・共催セミナー・相談会等参加者

調査手法:上記対象者へのアンケート(相談カード)

調査時期:2020年1月7日〜12月26日

回答数:7,606件

 

1 新型コロナの影響を受け、移住相談会・セミナーの開催減少、オンラインへの移行が顕著に

  ふるさと回帰支援センターへの2020年の相談件数(面談・電話・メール・見学・セミナー参加)は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、前年比で約22%減となった。また、面談は、4月、5月の緊急事態宣言の発出を受け、ふるさと回帰支援センターを休館し、職員が在宅勤務に移行したことで、前年より約20%減少している。一方で、電話・メールの相談は前年より約25%増加し、セミナー・見学を除くと、前年比約105%となっている。

   新型コロナの影響で移住相談会・セミナー等が中止(2月~5月の開催中止:94回)になり、開催数は前年の36%減にとどまったほか、参加者数も前年の約44%と大きく減少している。開催形式も特に緊急事態宣言明けの6月以降を見ると、約86%がオンライン・ハイブリッド型となっている。

  さらに、オンライン化によって、相談者の居住地も首都圏一辺倒だったものが、近畿圏・中部圏からの参加者も増加し、居住地に左右されないというオンラインの最大のメリットが表れている。

 

 

2 窓口相談者では静岡県が初の1位、セミナー参加者では和歌山県が1位

   2020年の移住希望地ランキングは、上記の理由でオンラインセミナーが増えたため、窓口相談とセミナー参加者それぞれのランキングを算出した。

  窓口相談では、全ての年代からの人気が高かった静岡県が1位となった。静岡県は新型コロナ禍でも出張相談会をオンラインに切り替えるなど体制整え、相談件数を落とさなかった。また、同じくオンライン出張相談を強化した山梨県も2位になっている。また、9位に神奈川県、10位に群馬県、12位に茨城県、13位に栃木県が入った。コロナ禍で在宅勤務となり、職場へのアクセスを重視していた人が、出勤時間よりも「もう一部屋」の余裕を求めての引っ越しに近い感覚での移住希望が増え、東京の郊外の概念がさらに拡張していったものと考えられる。

  セミナー参加者では、和歌山県が1位、2位には広島県、3位には佐賀県が入った。それぞれ移住への入り口としてライト層が参加しやすいオンラインイベントを多数開催し、「しごと」「すまい」といった、移住者の関心事だけでなく、地域の食材や地酒、謎解きなど、様々なテーマによる集客に成功し、首都圏以外からの参加者を増やしたことがあげられる。

 

3 新型コロナが移住に与えた影響

  新型コロナによって改めて「テレワーク」「リモートワーク」が注目を集めた。相談者からも「テレワーク」「リモートワーク」の言葉が登場するようになり、希望する就労形態の中に新たに項目を加えた(希望者:約1.5%)。リモートワークによって、転職しない移住が実現することになり、移住のネックとなっていた仕事の問題が解決したことで、「1年以内の移住」希望が前年より6.1ポイント増加したほか、移住希望先の地域類型として「地方都市」を挙げる割合は68.5%と根強い人気であった。また、「農村」を挙げる割合が17.9%から22.0%へと4.1ポイント増加している。なお、農村を希望する年代は40歳代が27.0%と一番多くなっている。

   こうした影響はセンターを知った経緯にもおよび、「インターネット検索等」によるものが過去最大の54.3%となったほか、「自治体HP」も過去最大の21.1%と、前年よりも12.7ポイントも上昇している。