京都のむかし話/京都のむかし話研究会編/日本標準/1975年
ひとりの男が用事がすんで帰る途中、頭から雪をかぶったお地蔵さんが寒そうにしているのをみて、背負って帰り、囲炉裏の火をぼうぼうに燃やし、火にあたらせます。
まっかにもえる囲炉裏の火で、ぬくもりが家の中いっぱいにひろがり、おじぞうさんの顔もやさしい顔になりました。すると、どういうことか、お地蔵さんの口から、ぽろっとひとつぶ、白い米がこばれます。びっくりしてみていると、またぽろり、またぽろりと、米のつぶがこぼれでてきた。おかしなことに、家の人が一日食べられる量になるととまります。
つぎの日も、次の日も米がぽろぽろ出てくるので、家のもんは両手をあわせて感謝していた。
ところが人間というのは、だんだん欲が出てくる。お地蔵さんの口を、もっと大きくすると、たくさん米が出てくるんじゃないかと考え、金てこで、お地蔵さんの口を、ほじくって大きくすると・・・。
いくら米を作っても、年貢米としておさめなければならなかった人々の嘆きにも、ふれられています。