MMTに依拠する「反緊縮」も財務省の主導する「万年緊縮」もナンセンス | 加納有輝彦

MMTに依拠する「反緊縮」も財務省の主導する「万年緊縮」もナンセンス

MMTに依拠する「反緊縮」も財務省の主導する「万年緊縮」もナンセンス

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「プライマリーバランス黒字化目標」なんていらない

https://agora-web.jp/archives/2054690.html

池田 信夫 アゴラ研究所所長(学術博士)

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この記事の中にある、~MMTに依拠する「反緊縮」も財務省の主導する「万年緊縮」もナンセンス~

という見出しに大いに興味をそそられた。


備忘録として、池田氏の投稿に語句を補足して記録しておきます。これはもっぱら自らの学習のためのものです。ご参考まで。あるいは、ご意見がございましたら、ぜひご教示を。

 

※大川隆法総裁が、ご著書「減量の経済学」において、政府は1200兆円の財政赤字の返済計画を示すべき(p243)と書いておられ、これはおそらくMMT反緊縮派(例えば、藤井聡京大教授等)から猛反発を受けるであろう箇所に思え、理解を深める必要を感じました。


 大川総裁は、「反緊縮」VS「万年緊縮」の構図では語られておられないことは理解しています。国民から借りたお金(輪転機を回してるだけで国民から借りてはいないともいえますが)は、国民に返すという当然の商道徳に立ち返ってのお話。政府は、国民から借りたお金を返す(減税)どころか、増税でお返ししている始末。最終的には、政府の借金を帳消しにする「徳政令」という超法規的措置もある。

 

実際、江戸幕府は、「商人から借りたお金を踏み倒す」ことを何度もやっている。これは商人たちの革命勢力への応援の動機となりました。


 国も、地方も行政府は、「財政赤字の真の意味」を理解してない。財政赤字の究極の意味は、「公務員の皆さんの給料が払えません。出勤しなくてよろしい。仕事はなくなりました。」これを大川総裁はシビアな視点で語られている。


以下、池田信夫氏、表記投稿。一部、字句を補足、削除。
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経済財政諮問会議に、内閣府の新しい経済財政試算が提出された。財政健全化の目安となる国と地方を合わせたプライマリーバランス(PB:収入と支出のバランス)黒字化の実現時期を昨年7月の試算に比べて1年早め、2026年度とした。

 

 しかし自民党では「PB黒字化を凍結しろ」という高市政調会長などの財政バラマキ派が勢いを増し、政調会の「財政再建本部」の看板を財政政策検討本部と変えた。彼らの依拠するMMTによれば、財政赤字は(大インフレにならない限り)いくら大きくしてもいい。

 

これに対して財政再建派が巻き返し、岸田首相直轄の財政健全化推進本部ができた。「検討本部」の最高顧問は安倍元首相、「健全化本部」の最高顧問は麻生副総裁と党内を二分する状況になっているが、これは争点がまちがっている。PBの黒字化なんて無意味な目標なのだ。

 

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ゼロ金利制約の強いときは財政赤字が必要だ


〇財務省のPB黒字化目標の理論的根拠は「PBが均衡して(長期金利)≦(名目成長率)なら政府債務は安定化する」というドーマー条件だが、これはおかしい。

 

〇日本ではこの10年、一貫して(長期金利)<(名目成長率)であり、この状況がずっと続くなら、PBが均衡しなくても、政府債務(残高のGDP比)は安定する。わかりやすくいうと、ゼロ金利の国債で今までの(金利のついた)国債を借り換えれば借金は減ってゆくからだ。


〇ブランシャールも指摘するように、問題は政府債務ではなく、マクロ経済の動学的効率性である。これは資源配分の時間を通じての配分が効率的かどうかという基準で、長期金利と名目成長率の大小関係で次のようにわけられる。

 

★1 長期金利>名目成長率>0:動学的に効率的

 

 この場合には民間投資が効率的なので、政府投資を増やすべきではない。財政赤字は民間投資をクラウディングアウト(政府による国債の大量発行に伴う金利上昇などにより、民間の経済活動が圧迫されること)して将来世代の所得を減らすので、緊縮財政が望ましい。これが標準的なマクロ経済学の想定している環境である。

 

★2 名目成長率>長期金利>0:非効率的・低金利

この場合は金利が成長率より低いため、政府支出は民間投資をクラウディングアウトしないので、政府は失業を減らすために財政赤字を増やすべきだ。これがケインズの想定していた1930年代の状況に近い。

 

★3 名目成長率>長期金利=0:非効率的・ゼロ金利制約

 日本経済は現在、ゼロ金利(自然利子率<0)で3の状態である。このようにゼロ金利制約の強いときはPB赤字が必要だ。少なくとも2の状態にしてこの状況を脱却し、金融政策がきく状態に正常化しないといけない。

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「反緊縮」も「万年緊縮」もナンセンス

 

名目成長率>長期金利>0の状態では財政は維持可能だが、名目成長率>長期金利>0の状態でPB赤字が大きくなると危険である。この場合もただちに財政が破綻するわけではないが、投資家が政府債務に不安を抱いて国債を売却すると金利が上がり、政府債務が自己実現的に発散する可能性がある。

 

このような政府債務の発散を防ぐには、潜在成長率(自然利子率)を高める必要がある。そのためには、財政支出の社会的収益率が長期金利より高いことが条件だ。その結果、長期金利が上がって長期金利=名目成長率になったらPB赤字を減らせばよい。

 

こう整理すると、MMTのような「反緊縮」も、財務省のような「万年緊縮」も、理論的には正しくないことがわかる。今までは世界的に名目成長率>長期金利=0:ゼロ金利制約

の状況だったが、これからインフレになると名目金利が上がり、名目成長率>長期金利>0の状況になる可能性がある。長期金利>名目成長率>0になると、財政バラマキは有害無益だ。

 

だからPBではなく動学的効率性を基準にして財政運営を行う必要があるが、ここで問題は、財政支出の社会的収益性をどういう基準でみるかである。

 

これは定義によってGDPで計測できない。ブランシャールは感染症対策や気候変動対策を例にあげているが、政府投資の外部経済性を客観的に計測する必要がある。ここでも基準になるのは長期金利であり、金利を恣意的に設定している内閣府のモデルは使えない。

 

MMTが元祖とあおぐラーナーは、ケインズの流れをくむ「新正統派」の経済学者で、経済政策の目的は財政の安定ではなく経済の安定だと述べた。財政運営はPBの帳尻合わせではなく、動学的効率性を基準にして目標を設定すべきだ。

 

*ブランシャールのくわしい分析については、彼の日銀レクチャー参照。

 

 

 

 

 

 

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