静かな大地 | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

諸事情で夏の終わりに札幌に1週間ほど滞在しました。

私は2度目の北海道で札幌は初めて。

 

昨今の状況から無理もないのでしょうけれど、

お盆が過ぎたとはいえ8月中なのに飛行機はガラガラ。

減便していてこれでは観光業は本当に厳しい……。

なるべく出歩く機会を減らすべくミニキッチンのついた宿を

予約しましたが、これも直前なのに余裕で取れる。

こちらとしてはありがたいことだけれども、

やっぱり喜ぶ気持ちだけにはなかなかなれないものです。

 

そうは言っても酷暑の関東から出てきた身としては

北海道の爽やかな気候はなによりの贅沢、涼しい!

「今日なんて暑くて参っちゃいますよ」と

現地の方はおっしゃっていたけれども、

これで暑いのか……日本は縦に長いんだな、と実感しました。

 

出かけるにあたっていちばん心配だったことは、

コロナの流行っている地域からの客として

接触する当地の方々に不快に思わせてしまうこと。

夫とも「どちらから?」と言われたらどうしよう?なんて話しました。

でもそんな不安は全くの杞憂で。

皆さん心の中で思うことはあるかもしれないけれど、

優しく温かく接してくださってとてもありがたかったです。

かつて訪れた函館もそうだったけれど、北海道、優しい。

 

お宿は民泊とホテルの中間くらい。

放っておいてもらえるのと広々しているのが宿にいる時間の長い

私たちにはうってつけでした。

場所もすすきののすぐ近くで便利でもあるし、

昼と夜とで街の見せる表情ががらりと変わるのも面白い。

歓楽街に詳しくありませんが、なんだろう?

夜の街としてすごくあけっぴろげというか明るいというか。

ちょっと前までは女性が暗くなってから一人で歩かない方がいいと

聞いていたけれど、表通りを使う限り怖さはなかったような?

時代で街の雰囲気もずいぶん変わっているのかなと感じました。

 

外出を少しセーブするというテーマなので、することは料理。

このために調味料一式と道具も少し持ち込んで、

出かけるのはとにかく市場。

二条市場は町中にあって便利だけれど、

うーん、ここは観光客のお土産専門って感じかな?次!

ちょっと地下鉄に乗って札幌中央市場場外へ。

ここの方が規模は大きいけれどやっぱり半分くらい観光客向け。

並んでいるものはステキだけれど、求めているのはこれじゃない。

 

悶々としながら地図を漠然と眺めていたら、

なんと宿のすぐ近くに小さな字で「すすきの市場」と書いてある。

「市場」という名の施設(ラーメン横丁みたいな)かな?と思っていたら

これが本当にちゃんと市場でした。

公営住宅1階の狭い路地の両側に、魚を扱うお店をメインに

お肉屋さん八百屋さんやお菓子屋さんまであって、全部で20軒ほど。

歩いていても呼び込みなんて全然なくてものすごく静か。

近隣の飲食店の方が使っているんだろうなという感じです。

注文を受けたらしき様々な魚介が各々トロ箱に収まっていて、

ううむ、これは小売りをしてくれない業態なのかしら?

でも私が買い物したいのはこういうところなんです。

だって二条でも場外でもお目にかかれなかった立派なツブ貝もある。値段が出ていなくて怖いけど。

聞くだけ聞いてみよう、年寄りの図々しさを最大限に活用だ!

 

あのー、小売りはしていただけるんでしょうか?

「できるけど……」

じゃあツブ貝はひとつおいくらくらい?あ、それなら買える。

貝から外してもらえます?

「そうすると今日中に食べないとダメよ?」

やっぱりよその人って分かっちゃうんですね。

でも大丈夫、すぐ食べますから。

腑に落ちない顔をしている魚屋さんに事情を説明すると、

丁寧に調理しやすいように処理してくださって、

結構大胆なサービスまでしてくれてとてもありがたかったです。

「ふーん、そんな宿泊施設もあるんだ?どこから来たの?」なんて

一度ほぐれると会話も弾んですごく楽しいお買い物。

 

宿に戻ってお刺身やらパスタやらにしてみれば、素材は絶品。

お店が仕入れるものと同じなのだから当たり前ですね。

北寄貝なんて初めてさばきました、ありがとうYouTube!

この後も専門学校の直売所で美味しい野菜を手に入れたりして、

宿での料理環境が(素材的に)大変贅沢なことに。

ここで販売しているソフトクリームが素晴らしくて、

牛乳と飲むヨーグルトを買ってみたらこれも美味しい。

香りの高い小粒の苺やプラムも美味しくてデザートまで充実。

作って食べるのに大忙しでした。

 

ちょっとお出かけもしたし外食もしたけれど、

一番心に残ったのは食材のクオリティの高さでした。

それから人が優しいこと。

この時期ですから複雑な思いで迎えてくださっているはずなのに、

皆さんとても親切で、その気持ちがいろいろな意味で沁みました。

「北海道はあちこちから来た人の集まりだから、

よそから来た人に抵抗がなくて好奇心があるのよ」

と滞在中に聞きましたけれど、本当にそうなのかも。

 

途中で読むものが尽きて本を1冊買いました。

萱野茂さんの「アイヌと神々の物語」。

帰ってきてからは池澤夏樹さんの「静かな大地」を読みながら、

ウポポイに行かなかったのはどうだったのかな?と煩悶したりも。

しばらくは静か(だった)大地のことに思いを馳せて過ごします。

 


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