術後5年 | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

5年前の今日、お腹を切ってパンパンの子宮を摘出しました。

10年ひと昔というから、二分の一昔の話になったのですね。

 

この1年は公私ともに心身の疲れた年でした。

コロナで世間が大騒ぎになって、

さすがにぼんやりの私も多少は神経がとがっていたかもしれません。

加えて個人的な心配の多い時期でした。

常に心が締め付けられるようで、

24時間身体の末端が冷えて震えているような感じ。

身体の調子が悪いと頭の回転もさらに鈍くなって、

考えることもマイナスに偏りがちに。

生活環境も変わって、借り暮らしのようなまだ落ち着かない気持ち。

こうなると面白いことに術後の傷辺りがむずむずするのです。

 

全然痛くはなくてそれはとてもありがたいことだけれど、

ここしばらくなかった頻度で傷の自己主張が強い。

「わたしはここです」とおっしゃっているような……。

具体的にはむずむずともくすぐったいともいえない微弱なもの。

支障は皆無と言っていいレベルなので無視すればいいのだけれど、

そうはさせてくれない地味な主張の激しさよ。

そんなに張り切ってくれなくてもいいのに……。

 

調子が悪いと弱いところに出るというのはこういうことなのですね。

私の今回のケースは単に術後の傷に

ほのかな違和感くらいだから大した問題はないけれど、

これで身体に大きなウィークポイントがあって調子を落とすと

ダメージが大変なんだろうなーと想像しました。

それにつけても年々染み入る健康のありがたみよ、という気分。

年と共にますます身体と精神が絶妙に微妙なバランスで

なんとか成り立っているような。

 

若いときには人生の先輩各位から、

「若いっていいわよ」と散々言われたけれど、

いまいちピンと来ていなかったし、

そう言われること自体も割と嫌でした。

若いというのは経験も知識も貧しくて早く成熟したいと思っていた。

のだけれど、年月を重ねれば誰でもステキに熟するわけではなく、

精神の乏しさは(私の場合)あまり変わらないと気が付いたのは

うかつなことに結構最近です。

今なら「若さの良さ」も多少は理解できて、

若い人たちを眺めるのは楽しいことですが、

「若いっていいのよ、ありがたく思いなさい」と言う気にはなれない。

若さの特権に無頓着なまま若さを謳歌することそのものが

若い人の健全で清潔な態度かなとも思えます。

でも年寄特有のお説教がぽろっと口から出ないように

気を付けなければ私も危なっかしいかも。

用心しよっと。

 

そんな五十路の術後5年は総括的には問題ありません。

体調がよかったらきっと傷のむずむずも少なかっただろうし。

特にどこか悪くすることもなく病院とは殆ど無縁で過ごしました。

行ったのは歯医者さんの定期健診、あとは突発事故で眼科に一度。

ありがたいことです。

 

傷そのものは一応まだあります。

凹凸はほぼなくなって、触っても感じるのが難しいくらい。

縫った後の部分だけが細ーく皮膚の色が違って、

周りよりも白い線がお腹に一本走っています。

これは縫った時に再生した新しい皮膚なのかしら?

いつ何時見てもここをざっくり切って中から内臓を取り出したのに、

その後縫ってもらったらちゃんと閉じてほぼ元通りというのが、

「人体の神秘&医学スゴイ」と感動できます。

 

この秋に引っ越しをして手術してもらった病院を直接目にする機会も

なくなるだろうし、手術の記憶はますます薄れていくのかも。

5年も経ったのだからそれが当たり前とも思いますし、

無頓着でいられることは運がいいなとも思います。

むしろ、よく開腹手術をする決心がついたなと、

当時の私にインタビューしたい気持ち。

決断するほど身体がしんどかったのでしょうけれど、

その時の感覚も今は随分ぼんやりしています。

忘却という機能は人にとって大事なんだなとしみじみ。

でも治してもらえてよかったな、ありがたいな、

という気持ちは忘れないようにしなければ。

 

今はコロナで病院も大変な時期。

それでも病気は待ってくれないものですから、

現在子宮筋腫を持って治療をお悩みのお方には

随分と逡巡の多い辛い時だろうなと思います。

平常の時期でさえ、命に関わらない、割と患者任せな治療方針。

しんどい身体の現状と手術への迷いとの間で揺れるのは、

術後のみなさんは多かれ少なかれ経験しているはずのこと。

そこにコロナ感染の心配がもうひとつかぶさるとなると、

決心するまでの過程も入院中の心配も術後の療養も、

何もない時よりも悩みや恐れが格段に増えそうです。

これは筋腫に限った話ではなくあらゆる病気に言えますね。

つい先日「コロナで通院を控えるので病気を放置しがち」

というニュースも耳にしました。

医療の現場が逼迫しているのも事実だし、

病気を抱えて生活に差しさわりが出ている人たちがいるのも事実。

ただでさえ嬉しくはない決断をもっと苦しくしているこの状態が、

本当に早く治まってほしいです。

そして今まで当たり前にできていたことが戻ってきたときに、

そのありがたみを世界中の疾患のある方、医療従事者の方が

もれなく享受できる日が、1日でも早く訪れますように。

 


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