五十路の引っ越し | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

前回の引っ越しは13年前、37歳の時。

大阪から神奈川まで、夏の盛りでした。

 

引っ越しを決めてから当日までの週末にことごとく夫が出張で、

留守の間にひとりでふうふう言いながら荷造りした記憶があります。

新居の面積が従来の2割ダウンだったので、

それなりにものの処分もしなくてはならず。

長距離のため搬出と搬入は日をまたぎました。

今考えればホテルに泊まればいいのに、

どういうつもりかスーツケースに各々枕と毛布を詰めて、

大阪から荷物を送りだした後、最終便で移動して、

何もない新居のダイニングでごろ寝したのも今ではいい思い出。

 

そんな引っ越しの記憶がアップデートされないまま、迎えた今回。

こんなもんでしょ、と思っていたものが

全然そうではありませんでした。

リミットは1か月、これは結構な余裕。

加えて夫もリモートとはいえ在宅。

それなら楽勝だよねーと高をくくっていたのに。

 

まあまずびっくりするほど体力がありませんでした。

段ボールひとつをいっぱいにすると、

「よくできました!休みましょう!」モードになってしまう。

引っ越し作業ってこんなに億劫だったかしら?

狭い面積の中でいかに効率的に使わないものから荷造りするか、

パズルのように考えるのはむしろ楽しいのだけれど。

高く積み上げた段ボールに本を箱詰めするために、

椅子に乗って作業していると。

……腕が上がらなくなってくる、ついでに腰も痛い。

確かに体力に自信はない方だけれども、

それにしてもこんなにひ弱だったかなぁ?

13年というのはそれなりの年月なんだな、としみじみ。

30代は若かったのですね。

 

老けたのは体力だけではなくて決断力も。

少し前から空っぽになった旧祖母宅を整理していて、

ものの納め時についても考えるようになっていました。

ある意味この時期の引っ越しは所持品スリム化のチャンスでもある。

ここで思い切らないと、今後ずるずる引きずってしまいそう。

なのに。

いろいろと決められない、うじうじしてしまう。

 

悩む要因は大雑把にふたつ。

「今後使えるかもしれない」と「気持ちが残っている」。

このふたつが両立してくれればことは簡単なのだけれど、

大抵のものたちがどちらか片方の理由で困ってしまうのです。

 

例えば文房具や画材。

「お前はいつからそこにいるのかね?」というようなものが、

恥ずかしい話ですけれどごろごろ出てくる。

全部一か所に集合させて試し書きしたりして使えないものは処分。

まではいいけれど、使えるものを今後本当に使うのか?

老後にタダでお絵描き出来るよと思っているけれど、

そもそもそんなに心穏やかな老後はやってくるのかしら?

大体最近のお絵描きはほぼデジタルだし。

でもこの辺りはほぼ夫の領域なので、残留。

 

気持ちの問題なのは頂いたものがほとんど。

物自体だけでなくその時の情景などもセットでついてくるので、

なかなか踏ん切りのつけ辛いものです。

長いこと私信を保存する気質でしたがこれは思い切って処分。

幼稚園の頃の年賀状まで出てきて我ながら呆れますが、

これを名残りに自分の気持ちを成仏させました。

これだけ長期間堪能したならもういいでしょう、という気分。

それからアルバムも全処分。

遺品整理経験のあるお方にはわかっていただけると思うのですが、

人さまの写真って捨て辛い……ですよね?

「おばあちゃん若ーい」などと言っているうちはまだいい。

「誰?」ってなるとものすごく困ってしまう。

なので極少数のお気に入りを小さな箱に移して、

卒業アルバムも結婚式のアルバムもさようならです。

子供がいたりすると見せる相手がいるから

とっておく価値もあるんだろうなと思ったり。

 

頂き物は長い年月が経って充分お付き合いしたと自負できるものは

「今までありがとうございました」と心の中で頭を下げてお別れ。

それでもやはり、形見分けやどうしても離れられないものもあります。

あまりにうんうん唸っていたら夫に、

「そんなにシャカリキにならなくても……。

スペースがないわけじゃないんだし、無理することないんだよ?」

と言われてちょっと我に返りました。

一緒に過ごしたいお気に入りがあるというのも幸せなことと思って、完全な断捨離は私には無理だと悟って、

ほんの少しだけ無駄のある暮らしを続ける予定です。

 

お別れか残留か迷うものの中にクマのぬいぐるみがありました。

イギリスの友人からプレゼントされたシュタイフの限定テディベア。

20年以上一緒にいて、

でも実はファンシーは私の得意分野ではありません。

そんな時、ちょうどクリスマス前に友人とそのお嬢さん(5歳)に

会う機会がありました。

ずっと箱の中にいて新品同様だし気心も知れた友人なので、

首にかわいいリボンで金のベルを付けて渡したら。

箱を開いた瞬間の娘さんの曇りのない笑顔が極上で、

よいところにお嫁入させてもらったと感謝の気持ちで嬉しくて。

同時に引っ越し作業にもきれいな終止符が打たれたような、

そんな納まりのいい年末になりました。

 


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