「…同じ階の麗亜ちゃんと、将輝君。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.105.

ドキドキ それからまた1週間後の夕方。
理沙の病室には和奏。

そんな病室のドアをノックする音。和奏、
「…はい。」

ドアを開けて…。車椅子に乗った少女。

和奏、
「あっ。」

少女、女性にお辞儀をして、
「にんにちは。」

少女が乗っている車椅子を押しての少年、頭をペコリと…、
「ども。」

和奏、目をパチクリと…。

理沙、
「麗亜ちゃ~~ん。将輝く~~ん。」

和奏、目をパチクリとさせて、ふたりと理沙に、首を右左に…。

理沙、笑顔で、
「おかあさん、同じ階の麗亜ちゃんと、将輝君。ほら、話したでしょ。屋上で、私の事、先生に教えてくれた…。」

和奏、瞬間、
「あ~~~。」
そして、すかさず椅子から立ち上がり、ふたりに丁寧にお辞儀をして、
「ありがとうねぇ~~。うんうんうん。本当にありがとう~~。」
そして車椅子に手を掛けて、そして少年の肩に…。
「どうぞ、どうぞ。」

麗亜、理沙の傍まで、
「お姉ちゃん。」

理沙、
「うん。」

将輝はムッツリと…。

和奏、理沙の右に…。そして、ふたりを見て、
「麗亜…ちゃん。…そして、将輝…くん…???」

将輝、
「あっ、はい。菅田将輝、菅田麗亜。です。」

和奏、すぐさま、
「え゛っ???…すだまさきって…。」
すかさず右手で口を押えて…。

そんな母親を見て理沙、そして麗亜も、
「かかかかか。」
「うん。」

理沙、
「やっぱり…。私だって、最初、そうだったもん。」
将輝を見て、
「名前がすだまさき。芸能人の菅田将暉と…。でも、最後のキの字が…、ほら。芸能人の方は、最後の漢字、軍の隣が日なんだけど…。将輝君の字は、軍に光。」

和奏、懸命に漢字を思い出し…、空を見ながら、数回頷く。
「うんうんうん。なるほど…。…って、どういう漢字だっけ…???」

その声に理沙も麗亜も、
「かかかかか。」

麗亜、理沙の右手を握り、
「お姉ちゃん…。」


そして、暫く麗亜と話して和やかな雰囲気に…。
和奏も、時折将輝と話して、高校が鴻上高校、2年で、今、バスケをしていることなど…。
凡そ20数分。

そして将輝、持っているのが重くなったのか、
右手にぶら下げていた袋を持ち上げベッドの端に。和奏、顔を傾げて…。

将輝、
「あっ、これ…。もしかしたら…って思って…。俺…。あっ、いや…、僕…、ここの看護婦さん。そして、僕の…叔母さんとも相談して、探して…みたんだ…。」
袋の中から、数冊の本。

和奏、その数冊の本を見て、
「これ…って…???……。えっ…???」

全て、身障者のための…、著書である。

「理沙…さん…。中学の時は…剣道。そして今は…、バレーって聞いて…。」

和奏、
「うんうんうん。」
その中の一冊のページを捲りながら…。

理沙、
「おかあさん…。どんな本…???」

和奏、理沙に笑顔で、
「ほら~~。」

将輝、
「それに…、負けず嫌いだって…。」

理沙、ページを見ると、片足のない人間が義足をして走り幅跳びをしている画像。
見た瞬間、理沙、いきなり般若のような形相になり、いきなり本を将輝に投げつける。
「何考えてんのよ、まだ車椅子にも乗れないのにっ。まだ、何も前に進んでないのにっ。無責任。」

将輝、いきなりの理沙の表情に顔を強張らせて。

麗亜も同じように、
「おねえ…ちゃん。」

和奏、急に態度を変えた娘に、
「理沙。」

理沙、表情は硬く、
「出てって。出てって。出てってっ!!!」

和奏、
「理沙っ!!!」

おろおろする麗亜。将輝も同様におろおろと…。
そして車椅子を引き、
「麗亜…、帰ろ…。」

その声に麗亜、兄を見上げて、力なく、
「…うん。」

理沙は顔を強張らせて下を向いている。

和奏、咄嗟に、ふたりに駆け寄り、
「ごめんねぇ~~。ほんとにごめん。」

将輝、そんな女性に、首を振り、
「いいえ…。なんか…、悪いこと…したみたい…。」

和奏、そんな声に、懸命に首を振り、
「ううん。ううん。そんな事ない。そんな事、ないよ~~。うんうん。」
そしてドアに。
ドアを開けて、ふたりを外に…。そしてドアを閉めて。和奏、ふたりに深々と頭を下げて、
「ほんとうにごめんなさい。ねね、また、いつでも、遊びに来て。お願い。」

そんな景色をナースステーションから歩いてきた女性。
「あの…、何か…???」







信じて…良かった。   vol.021.   「…同じ階の麗亜ちゃんと、将輝君。」

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