小泉和裕 名フィル音楽監督ラスト公演 東京特別公演 (3月29日・東京オペラシティ) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

3月31日で、名フィル音楽監督を退任、4月より名誉音楽監督となる小泉和裕の音楽監督としての最後のコンサート。

 

曲目はベートーヴェン「交響曲第1番」「交響曲第3番《英雄》」

堂々とした巨匠的な分厚い響きのベートーヴェン。名フィルは14型、コントラバスは7台。コンサートマスターは首席客演の荒井英治。

 

《英雄》が素晴らしかった。特に第2楽章「葬送行進曲」は充実の極み。冒頭のコントラバスの低音は、地響きがするような迫力。オーボエのソロも陰りがあり、良く歌う。トリオではフルートが美しく歌う。

展開部の第2ヴァイオリンに始まる三重フーガは白眉。ホルンとトランペットが咆哮する悲劇的な高まりの荘厳さは、小泉と名フィルが到達した音楽的な頂点を示していた。

 

第1楽章は速めのテンポで進む。提示部繰り返しはなし。展開部第3変奏の低弦が充実。コーダの6回のスフォルツァンドが強烈。

 

第3楽章スケルツォは畳みかけるような推進力がある。トリオのホルン三重奏も決まる。

 

第4楽章の主題の変奏も充実。特に第234小節目からの対位法的な展開が素晴らしく、名フィルの自発的な演奏と小泉がひとつになって盛り上がって行く。オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンとつないでいくポーコアンダンテも、ゆっくりと進める。

 

最後の第7変奏の全管弦楽による壮大なクライマックスの金管の強奏、渾身の弦のあと、コーダに入り、最後はプレストで堂々と締めくくった。

 

小泉和裕名フィルの総決算にふさわしい名演。

 

前半の「交響曲第1番」は、重みのある巨匠的な演奏。第4楽章にそれがよく表れていた。序奏から大シンフォニーという印象。主部は荒井英治のリードで弦のまとまりがとても良い。展開部も爽快に進む。コーダは激しく終えた。