米国にはトイレを貸さなければいけない法律がある

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前回、前々回と、英国の障害者用トイレ事情、腸や膀胱に問題を抱えている人々の緊急時対応について紹介しました。
今回は、米国(アメリカ合衆国)の、トイレアクセス法について紹介します。

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トイレアクセス法って何?

日本で「従業員専用トイレ」というのを見たことありますよね?
米国では、従業員専用トイレでも、従業員以外の人に貸さなければいけない、という法律があります。

英語で、「Restroom Access Act」といいます。

通称、アリーズ法(Ally’s Law )としても知られ、米国の多くの州で可決されました。
この法律は、クローン病、潰瘍性大腸炎、ストーマのある人など、腸や膀胱に問題を抱えている人、特定の病状のある人が、公衆トイレが利用できないときに、緊急にトイレを利用できるようにすることを目的としています。

全ての小売店が ” お客様用トイレ ” を備えているわけではないので、特定の病状のある人が緊急時に ” 従業員専用トイレ ” にアクセスできるようにすることが義務付けられました。

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発端

14歳のアリーは、母親と一緒に大きな小売店で買い物をしていたときに、クローン病によりトイレに行きたい衝動が突発しました。
公衆トイレがなかったので、従業員専用トイレを使えるように頼みましが、店舗マネージャーにトイレへのアクセスを拒否されました。
その結果、彼女は店内で汚れてしまいました。

このことが州の代表者に伝わり、病状があり緊急に必要なときに、従業員専用のトイレにアクセスできるようにすることを宣言する法案が起草されました。
そして、2005年8月にイリノイ州で法制化しました。
それ以来、他の16州が独自に法律を可決しています。

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対象者は?

トイレアクセス法に該当する条件のいくつかの例は次のとおりです。

・ クローン病(CD)
・ 潰瘍性大腸炎(UC)
・ 他のタイプの炎症性腸疾患(IBD)
・ 過敏性腸症候群(IBS)
・ ストーマ装具の装着
・ トイレへの即時アクセスを必要とする永続的または一時的な体調
・ いくつかの州では、妊娠

つまり、排便に不安がある症状を持った人々が対象です。

トイレにアクセスするには、医療専門家が署名した病状を示す証明書、国の組織が発行した身分証明書などを提示する必要があります。

なお、法律は州ごとに若干異なる場合があります。
たとえば、条件に妊娠を含む州もあれば、含まない州もあります。
また、全ての州が、署名された医療文書の代わりに身分証明書を受け入れるわけではありません。

拒否した場合は?

小売店は、有効な書類を持っている人に対してトイレにアクセスすることを拒否した場合、罰金が科せられる可能性があります。
罰則は州ごとに異なります。

ただし、次の場合、小売店はアクセスを拒否することができます。
・ 従業員が3人未満の場合(店舗が損傷したり盗難にあったりする可能性があるため)
・ 従業員専用トイレが患者にとって不安全な場所にある場合
・ 従業員専用トイレが小売店にとって明らかなセキュリティーリスクがある場所にある場合

法律はどの州にある?

トイレアクセス法を採用している州は、次のとりです。

・ コロラド
・ コネチカット
・ デラウェア
・ イリノイ
・ ケンタッキー
・ メイン
・ メリーランド
・ マサチューセッツ
・ ミシガン
・ ミネソタ
・ ニューヨーク
・ オハイオ
・ オレゴン
・ テネシー
・ テキサス
・ ウィスコンシン
・ ワシントン

Crohn’s & Colitis Foundation(クローン病および大腸炎財団) のサイトで、各州の地図上の場所と法律の内容を見ることができます。↓
https://www.crohnscolitisfoundation.org/get-involved/be-an-advocate/restroom-access

Googleマップより

以上、アリーズ法について書きました。
日本の場合は、お客様用トイレに「このトイレは従業員も利用させていただいております。」という張り紙をよく見かけます。
なので、日本国内においては、アリーズ法のような法律が効果的な場所は限られるかもしれません。

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