認知症なれど静かに暮らす母時折尋ねる吾を忘れる
「忘れてもいいよ私が覚えてる」言えばほんのり母は笑まいて
たまに見る母は菩薩の貌をしてどちら様かと吾に聞きたり
母が逝きかなりの年月が立つけれど
その晩年は波瀾万丈だった
仕事が忙しい私は
母の近くにいる姉に
全てを委ねていた
たまに訪ねてゆく私を
認知の母は覚えていない
最後の数年は静かに暮らしていた
穏やかな笑顔を見せて
それだけが救いだった
その姉ももういない
そして次は私の番だ
何もかもなくなってしまい
思い残すことはない
私の人生は完結している
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