レンズ収差の主な種類と解決策!理解を深めて失敗しないレンズ選び

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画質を左右するレンズ収差とは?主な種類と解決策 カメラ基礎知識

カメラのレンズ性能や画質はレンズ収差が重要で、スペック上の数値だけでは判断が難しい場合がほとんどです。像のぼやけ、歪み、色の滲みなどの収差を出来る限り抑えることでレンズの良し悪しが決まります。

今回は、カメラの画質を大きく左右するレンズ収差の種類と解決策をご紹介します。

カメラのレンズ収差とは?

カメラのレンズ収差とは、レンズを通して物体の像を作る際、像のぼやけ、歪み、色滲みなど、実際の見た目との差が生じる現象の事を言います。『物体の像を作る』と言うのは、光がレンズを通りカメラのセンサーへ画像として記録するという意味になります。

レンズ収差が発生する原因としては、光の波長(色)やレンズの屈折率の違い、レンズの形状や素材が大きく影響していて、非常に複雑なもので完璧に収差を抑える事は難しいとされています。

画質を左右するレンズ収差

基本的にレンズ収差は高性能で高価なレンズほど抑えられていて、『収差が少ない=画質が良い』と言う事でもあります。一眼カメラのレンズが複数枚のレンズで構成されているのは様々な収差を抑える為で、収差が少ない高性能なレンズは、それだけ手間やコストがかかり高価になると言うのも納得です。

焦点距離やズームの有無などの違いがあっても、物体の像を忠実に再現できるように、レンズの大きさや形、枚数、材質などを変え、レンズ収差を出来るだけ抑えるように設計されています。

同じ焦点距離、同じ絞り値のレンズでも画質が違うのは、収差をどれだけ抑えてあるかによって左右されるという事です。

レンズ収差は大きく分けると2種類

レンズ収差の種類は大きく分けて、光の波長(色)の違いから発生する色収差と、レンズの形状によって発生する単色収差に分けることができます。

更に色収差は、軸上色収差、倍率色収差の2つに分けられます。一方の単色収差はザイデル五収差とも言われ、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の5つに分けられます。

レンズ収差の解決策

レンズ収差の理想的な解決策は、光学的にレンズ収差を抑えた高性能なレンズを使うことで、最良の画質を得ることができますが、収差の少ない高性能なレンズは高価になります。

一般的なレンズでも可能なレンズ収差の解決策としては、撮影時のカメラの設定や撮影後にソフトウェアを使うという方法もあります。

撮影時にレンズ収差を抑えたい場合は、全ての収差に効果があるわけではないのですが、絞り開放よりも少し絞ることでレンズ収差を軽減させることが可能です。また、撮影後にRAW現像や写真編集ソフトなどを使用して、一部のレンズ収差を軽減させるといったデジタル補正も効果的です。

色収差

色収差は、簡単に言うと色ズレによる像のぼやけや色滲みのことです。

色収差の原因は、光に含まれるそれぞの色(RGB)は異なる波長を持っていて、レンズを通る際の屈折率が変わります。それぞれの光の屈折が微妙にズレて、焦点の位置に差が生じたのが色収差です。

色収差は、明暗差の激しい箇所に発生しやすいのが特徴で、安価なレンズ程出やすく、比較的高価なレンズでは抑えられる傾向にあります。この色収差によって発生した色滲みはフリンジとも呼ばれ、写真編集ソフトで補正する事が可能で、ある程度目立たなくする事ができます。

軸上色収差

軸上色収差は、中央付近に発生する前後の色のピント位置のズレによる色滲みの収差です。

軸上色収差とは?

解決方法

  • 撮影時:絞ると改善される
  • 撮影後:画像処理ソフトで補正可能

倍率色収差

倍率色収差は、四隅周辺で発生する色ズレによる、色滲みの収差です。

斜めに入射した光は、色によって異なる屈折率によって色ごとに像の大きさに違いが生じ、被写体に縁や紫色などの色滲みが現れます。特に四隅周辺の倍率差が大きくなる広角レンズで発生しやすくなる収差です。

倍率色収差とは?

残念ながら、倍率色収差は絞っても改善することはできません。

色収差によるフリンジ

四隅付近で緑や青、紫などのフリンジが発生した例

解決方法

  • 撮影時:絞っても効果なし
  • 撮影後:画像処理ソフトで補正可能

倍率色収差は、パープルフリンジや青ハロとか呼ばれるもので、Lightroomである程度軽減させて、目立たなくさせる事ができます。ただし、過度に発生したパープルフリンジは完全に補正することは難しく、若干縁が残ってしまいます

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単色収差(ザイデル五収差)

単色収差(ザイデル五収差)はレンズの形状によって発生し、像の形が歪になる収差の為、画像編集ソフトで後から補正するのが難しいのが特徴です。

球面収差

球面収差は、解像感の無いぼんやりとした感じになる収差のことです。原因は、レンズが球面になっている為、光の入射角の微妙な違いにより一点に結像できずに、前後にズレることでぼやけてしまいます。

解決方法

  • 撮影時:絞ると改善される
  • 撮影後:画像処理ソフトでは難しい

コマ収差

コマ収差は、像が彗星のように尾を引いてぼやける収差のことで、特に四隅周辺付近に発生し、星景や天体写真などで良く見られます。原因は、レンズに斜めから入った光が、一点に結像できずに中央から外側に流れる様にズレる事で発生します。

コマ収差の例

左上付近に発生した彗星のように尾を引いているコマ収差の例

解決方法

  • 撮影時:絞ると改善される
  • 撮影後:画像処理ソフトでは難しい

非点収差

非点収差は、その名の通り点が点にならない収差で四隅付近で発生します。星景撮影では良く見る星が尖ったように写る収差は、厳密に言うと非点収差とコマ収差、それ以外の収差が混ざり合った複合型で、サジタルコマフレアとも言われています。

サジタルコマフレアの例

非点収差とコマ収差などが混ざり合ったサジタルコマフレアの例

解決方法

  • 撮影時:絞ると改善される
  • 撮影後:画像処理ソフトでは難しいが、裏技で対応可能
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像面湾曲

像面湾曲は、中心付近ではシャープな像なのに周辺ではぼやけた像になり、逆にピント位置を中心からずらすと、周辺の像はシャープになのに中心の像がぼやけるといった収差です。

解決方法

  • 撮影時:絞っても、あまり効果なし
  • 撮影後:画像処理ソフトでは難しい

歪曲収差

歪曲収差は、その名の通り像全体の形が歪む収差でディストーションとも言われ、中心に向けて広がる【たる型】と、中心に向けて細くなる【糸まき型】があります。

歪曲収差

歪曲収差:たる型と糸まき型の違い

歪曲収差は画像編集ソフトやカメラ内でデジタル補正することが可能ですが、その分画質が劣化するので、できるだけレンズ側で光学的に収差が抑えられている方が良いに越したことはありません。

あえて、歪曲収差をそのままにしているのが魚眼レンズで、製作コストが抑えられるという理由で比較的安価なレンズが多いようです。

解決方法

  • 撮影時:絞っても効果なし
  • 撮影後:画像処理ソフトで補正可能

まとめ

レンズ収差には色々な種類があり、レンズの設計者ではない素人にとっては技術的な要素が多く難しい話なので、全てを覚える必要は無いと思います。ただし、収差によっては撮影時に絞ることで緩和されたり、撮影後に写真編集ソフトで軽減させることが出来るので、多少の知識があった方が役に立つかと思います。

また、レンズ選びの際に収差の事を知っていれば、スペックの数値だけでは判断できない写りの良し悪しを、レビュー記事などを参考にして、少しでも良いレンズを選ぶことが可能になるのではないでしょうか?