新聞広告で30万部突破と書かれていてちょっと驚いた。「王様のブランチ」などでも紹介されたようだけど30万はすごい。ヨシタケシンスケと又吉直樹の相乗効果なのか。ううむ。
さて、この本、アマゾンの紹介文とかでは内容がよく分からなかったのだが、発想自体がなかなかだった。本好きのある国の王様が2人の男(表紙で分かるようにヨシタケと又吉の姿をしてる)に頼む。わしは目が悪くなりもう本が読めなくなった。お前たちが世界中をまわって珍しい本を見つけて、その本の話をわしにしてくれ、と。2人は旅に出て1年後に戻り、王様に見聞した本の話をすることになる。ま、こういう設定を作ったということです。
この後は交代で王様に本の話をすることになる。一夜目は又吉で文章だけ、二夜目はヨシタケでこちらは絵と文。全部で十三夜ある。本と言ってもすべて架空の本。これはもうそれぞれのセンスが問われるわけだ。又吉編で登場するのはとんでもない速さで走っていて誰も読むことができない本だとか、警察におわれている本。もちろんその説明が書かれている。ヨシタケ編はその国の人間はみんな持っている本だとか、輪郭がボンヤリしていて読むことができない本などなど。いろいろとおもしろい。
その中でも白眉は又吉の第七夜、41ページにものぼる大長編「誰も死なない本」だ。いやいやこれはすごい。小5の岬真一のクラスに竹内春が転校生としてやってくる。将来は絵本作家になりたい2人が密かに始める交換ノート。自分が描いた絵にもう1人がセリフを入れるという遊びのノートだ。それは交換日記に発展し2人は仲良くなっていく。とにかくこのやり取りが素晴らしいからぜひ読んで欲しい。しかし、その後…。
まぁ楽しめたのであまり文句は言いたくはないけど、このタイトルはどうかなぁ。まぁ分からないではないけれど、ちょっとつまらない。最後の最後のオチにも関係してるけどこのオチもつまらないしなぁ。う〜ん残念!!
◆DATA 又吉直樹・ヨシタケシンスケ 「その本は」(ポプラ社)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピー、引用も)
きみは読みたい?
輪郭がぼんやりして
読むことができない本。
◯又吉直樹、他の本の書評などはこちら!
◯ヨシタケシンスケ 、他の絵本の感想などはこちら!
2022.10.5 どうも気温の差が激しくて良くないな。今日の東京は雨。読書は宮部みゆき「よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続」。
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