【大亜細亜・第二号】トランプ大統領就任の意味と興亜の使命 | 大アジア研究会

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「トランプ大統領」就任の意味


二〇一六年十一月八日は、百年後の世界史においても重要な日として記されることだろう。アメリカ大統領選の共和党候補であるドナルド・トランプ氏が、第四十五代アメリカ合衆国大統領に当選した日である。トランプ氏の大統領就任の意味は、むろんマスコミが垂れ流すような、暴言癖のある政治経験のない大富豪がポピュリズムによりアメリカ大統領に上り詰めたといった話ではない。グローバリズムによる貧富の格差、社会の荒廃、アイデンティティの希薄化がついに臨界点に達したと見るべきであろう。トランプ大統領就任はこれからの国際秩序が激変期を迎えたことを予感させるものであった。同じく本年、フィリピンでドゥテルテ政権が誕生した。ドゥテルテは麻薬や犯罪に対する厳しい対応と放言で話題になり「フィリピンのトランプ」と呼ばれたが、麻薬や犯罪の温床である貧富の格差や貧困への不満、汚職の横行への憤りがドゥテルテの「世直し」への大きな期待となって表れた。その面では、確かにトランプとドゥテルテは似たような背景を背負って登場した政治指導者ということができる。
トランプ大統領は保護貿易的な政策を打ち出しているが、伝統的に門戸開放政策を取るアメリカにおいてこのような大統領が出たことは世界に衝撃を与えた。もちろんトランプ氏が大統領として既存の勢力とどの程度対決し、どの程度融和するかは未知数ではあるが、「TPPからの離脱」「関税の引き上げ」「不法移民の排除」「減税(ただし富裕層は増税)」といった公約を掲げる大統領が誕生したこと自体が、時代の流れが大きく変わったことを示すものである。ましてや、トランプの登場により「自主防衛」「TPP反対」「核武装」といったわれわれが以前から唱えていた政策の実現は、一挙に現実味を帯びてきた。


外国発の自立の危険性


トランプが掲げる政策の一つに「在日米軍の駐留経費を日本が大幅増額せねば撤退する」といったものがある。これは、日本の対米自立を促すというよりは「日本がアメリカから一方的に見放される」状況に陥るものでしかない。むしろアメリカが国際的な安全保障の責任を負う「世界の警察」の役目から降りたがっているというアメリカ社会の「本音」を示すものでしかない。
対米自立は必然的に自主防衛を伴う。従って自ら国を守る覚悟が政治家にも国民にも求められる。トランプの意向だからという理由でなされる対米自立には、この覚悟が欠けている。そのような態度で国が維持できるはずがない。そもそも「アメリカの意向だから」と言う理由で「対米自立」をするのは本当に「自立」なのだろうか。むしろアメリカに翻弄されて自ら政治・外交方針を決められない、「自立」とは程遠い政治ではないだろうか。わが国に求められていることは、即刻自主防衛体制を樹立することである。もはや自主防衛体制の確立なしに今後激変期を迎える国際政治は乗り切れないと自覚すべきである。


興亜論が提示する使命

 

創刊号でも述べた、今後の国際社会を考える上での二つの視点を再掲する。

一つは冷戦以来続いてきた「価値観外交」はもはや通用しないということである。今後の国際社会は好むと好まざるとにかかわらず、利害関係や謀略の中で各国が強かに自らの国益を得ようと競いあうものとなる。わが国の政界はそうした時代への適応が未だ不充分だ。
二つ目は、グローバル資本がもたらした貧富の格差、貧困の拡大は政治をも動かす大きな論点となったということである。それは「ヒト・モノ・カネ」が自由に動き回り、文化や歴史に根付いた秩序を破壊したことによるアイデンティティの危機も同時に孕んでいる。人々の不安や憤りが、ポピュリズムの蔓延にもつながっているのである。

先ほど、今後の国際社会は国益と謀略に翻弄される時代になると書いたが、それは謀略渦巻く世界観に甘んじるということではない。国益と謀略の時代もまた、パワーポリティクスに基づく西洋発の世界観に他ならないからだ。短期的にそういう時代の到来への備えを怠ってはならないが、同時に長期的に西洋発の近代的価値観を克服する遠大な理想を抱かねばならない。
かつて我が国の先人たちは、単なる国家の生存を超えた理想を胸に抱き、その実現に邁進してきた。その代表的存在である興亜論は、国家や民族の自生的秩序を重んじ、各その処を得る共存共栄の秩序を「八紘為宇」の理想に求めた。謀略渦巻く国際関係の中で、「自由、民主主義、人権」に代わる旗印を掲げることは、われわれに課せられた崇高な使命であると信じる。

 

 

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