トラといったら音楽業界では… | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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今年はトラ年ですが、音楽業界にも『トラ』があるのですよ。そんなのみんな知ってると思いますが、

先日クルマでFMを聞いてたら「へぇ!」っていう反応で話題にしてたので、ちょっと書いてみました。

 

こんばんは。

トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 

 

 

  トラ

 

トラというのは、『エキストラ』を略したものです。

オーケストラや、いろいろな団体が、団員、メンバーだけでは演奏できないような曲をやるとき、

臨時で呼んでくる助っ人のことです。

あと、団員さんが、「この本番、ちょっと降りたい(お休みしたい)な」というときにも、

活躍するのが『トラ』さんですね。

とはいえ、なかには、団員さんより『トラ』の方が多いような団体もあったり…

トラだらけ!

また、毎度やってくるトラさんのことを『常トラ(じょうとら)』なんていいます。

それから、ちょっと話は変わりますが、団員さんの中にも『正団員』と『契約団員』とがあったり…

(団体にもよります)

契約団員は1年ごとの有期契約だったりします。

 

 

  オリ番

 

続いては、『オリ番(降り番)』。

これは、その楽器が出番のない曲をいいます。

たとえば、モーツァルトの交響曲にはトロンボーンはありません。

そういう曲では、ステージの上でなんにもしないで座っているわけではなく、

楽屋でのんびりしていたりします。

たとえばベートーベンの『運命』は、トロンボーンは終楽章(4楽章)にしか音がありません。

もちろん本番では、曲の最初から座ってじっと待っているのですが(忍耐力!)、

リハーサルでは、3楽章まではどこかに行って休憩していたりします。

ぼくは、リハーサルでもちゃんと座って聴いているのが好きですけど…

ひと晩の演奏会、出番がひとつもないことだってあります。

「この日、ぼくオリ番だから」ってことになりますね。

どうしても、忙しい楽器もあれば、暇な楽器もあります。

これまででいちばん音が少なかった本番は、音8つでした!

 

 

  ゲネ本

 

次は、『ゲネ本(げねほん)』。

本番当日、会場で本番前におこなうリハーサルのことを『ゲネプロ』と言うのですが、

これはドイツ語の『ゲネラルプローベ』の略で、つまり、『総合練習』みたいな意味です。

プロの団体の場合は、その当日に先立って1日~3日程度のリハーサルがあるのが普通です。

が、それを省略して、本番の日のゲネプロだけで本番をやってしまおうというのが、ゲネ本。

セッションはゲネプロと本番だけですよ、というわけです。

やり慣れた曲目で、要領を得ているメンバーの場合にのみ可能となるものです。

そんなゲネ本の朝の音教(学校音楽鑑賞教室)で、いきなり冒頭ウイリアムテルだったり、

「きょうの運命は全楽章です」などと魔の宣告を受けたりして、若者は鍛えられるのです…

 

 

  逆順

 

「きょうのゲネプロは逆順でお願いします」のように使います。

つまりどういうことかというと、ゲネプロを、本番とは逆の曲順でやるのです。

たとえばオーケストラの定期演奏会だったら、『交響曲→協奏曲→序曲』みたいな順になる。

どうしてそういうことをするのかというと…

そうすれば、ゲネプロが終わってからステージのセッティングを動かさなくても済むからですね。

また、ゲネプロではそうはいきませんが、

普通のリハーサルでは、編成の大きい曲順にやってくれたりする団体もあります。

と、オリ番の人は早く帰れる!(喜)

 

 

  全スト

 

次は、『全スト』。

これ、『全面ストライキ』ではありません!

楽譜に繰り返しがある曲ってありますよね。

たとえばシュトラウスのワルツなんか、繰り返しがたくさんあります。

それを、きょうはどういうふうにやろうか、という話。

全部ストレート。略して、全スト。

「きょうは全ストでおねがいします」といったら、全部繰り返しをしない、ストレート。つまり最短。

「(繰り返しを)あり、あり、なし、ありで」なんて暗号みたいに打ち合わせすることも…

それならまだよくて、これは聞いた話ですが…

「本番中に決めましょう。ぼくがハンカチを出して汗を拭いたら繰り返しで」

なんてことを言った指揮者さんがいたのだそうです。

ところが本番中、「おい、あれはどっちなんだ!?」ってなったんだそうです…(汗)

ジャズでは、演りながらアイコンタクトで行き方を決めるなんて普通のことですが、オケではねぇ…

 

 

  のべたん

 

関連するものに、『のべたん』なんてのもあります。今はほとんどしないと思いますが…

これはリハーサルで使われるのですが(おもに軽音楽方面)、

1番カッコとか2番カッコとか全部無視して、楽譜の小節を最初から最後までそのままに、

全部、並んでいる順に音を出すのです。わかります?

新しい楽譜の音を確認する時なんかに使います。最短で、全部の音を確認できます。

また、歌伴(歌の伴奏)などでは…

「〇〇(曲名)2つ半、△△2つ、□□は1つ半」みたいに打ち合わせます。

2つ半とは、『2コーラス半』という意味です。

楽譜をどんなふうに繰り返したら2コーラス半になるのか考えられないと出来ませんね…

 

 

  略して…

 

なんだかちょっと難しい話になってしまいましたが…

最後は、略して。

いろいろ略した言い方ってありますが、特に、曲名です。

(曲名を略すのは嫌いな方もおられるかもしれませんゴメンナサイ)

ベト7 … ベートーベンの交響曲7番

モツレク … モーツァルトのレクイエム

青ドナ … ヨハンシュトラウスのワルツ「美しき青きドナウ」

夜女 … 夜の女王のアリア(モーツアルトのオペラ「魔笛」)

まだまだたくさんありますね。ほんの一部です。

軽音楽方面でも、「Begin the Beguine(ビギン ザ ビギン)」を「除夜の鐘」なんて言うらしいです。

(すみません略してではないですね…)

これ、108小節だからなのだそうです。

 

その業界独特のいろいろな隠語や略語って、ないようであるのですね。

さて、どれくらい知っていましたか。