インドネシアに駐在していたときに年に1回の健康診断のため、シンガポールにある日系のクリニックに行ったときのことです。午前中に診断が終わり初めてのシンガポールの街を散策しようと、オーチャード通りからマーライオンのある海の方へ歩いていましたら、途中に国立博物館がありました。

 

当時は博物館などとは縁が無かった私はただ前を通り過ぎようとしていたのですが、博物館の前に立っている看板がふと目に止まりました。

"When Singapore was called Shounantou."

(シンガポールが昭南島と呼ばれていた時) 

これはシンガポールが日本に占領されていた時のことを言っているようです。

 

ちょうど8月でしたので、太平洋戦争の終戦記念にちなんだ催しだったのでした。なんとはなしに博物館の中に足を踏み入れると、最初にあの有名な山下大将が英国軍の指揮官たちとを前に「YesかNoか」と問うた場面の写真があり、そこから日本に占領された当時のシンガポールの町並みの写真が並んでいました。

 

ある写真の前で私の足が止まりました。その写真は、後ろ手に縛られひざまづかされたシンガポールの人たちが横に4~5人並び、その横に立っている日本兵が刀を振り上げていて、今まさに端のシンガポール人の頭をはねようとしているものでした。

 

「なんと恐ろしい!なんてことをするんだ!!」と非難する気持ちで、私は思わずその写真にくぎ付けになったのでしたが、次の瞬間冷や汗が出て体が硬直しました。「この恐ろしいことをしている人間は、私と同じ日本人じゃないか」と。そしてすぐにまわりの人たちの非難の視線を感じ、思わず辺りを見まわしました。

 

それは私の思い過ごしで、博物館の中はそんな私の気持ちを無視するかのように、いつもの時間が流れていました。学校で教えられてはいても、あれほど強烈に、加害者としての日本人である自分を実感したことはありませんでした。日本に侵略された異国の地であったからこそ、なおさら肌身に感じたのだったと思います。

 

 ラッフルズホテル
 

インドネシア ブログランキングへ


にほんブログ村