1970年に公開された映画「ひまわり」は、何度も繰り返し観ている映画の一つです。NHKのBSでは、毎年1〜2回は放送されているのではないでしょうか。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名コンビが織りなす名作です。

 

あらすじは、いかにもイタリア人カップルと言っていい、男女の若者が繰り広げる平和で楽しい喜劇ではじまる話が、戦争を境に一変して、二人を分かつ悲劇へと大きく変わっていく展開で、もどかしくやるせない気持ちにさせられます。また映画のオープニングから流れるヘンリー・マンシーニの音楽は、何とも切ない情感にあふれ、世界中で大ヒットしました。

 

 

いまその「ひまわり」のHDレストア版が日本各地で公開されています。その理由の一つには、特に日本人にこの映画のファンがたくさんいること、もう一つは、戦争の悲劇を伝える貴重な映画であることが思いつきます。でもなぜ今なのかをよく考えると、映画の中で映し出される広大なひまわり畑のロケ地が、2022年ロシアの一方的軍事侵略の憂き目に遭っている、ウクライナの大地だったということでしょう。

 

ウクライナでの戦争から数か月が過ぎ、ウクライナの主要農産物である小麦の輸出がままならなくなり、アフリカなどで食糧不足による飢饉が叫ばれてきて、国連が仲介して小麦の安全な輸出ができるよう画策されています。また映画で出てきたひまわりの種子を原料とするひまわり油は、ウクライナが世界最大の生産国で、ひまわり油も小麦と同様に輸出が滞ってしまいました。

 

そこでひまわり油の代替品となる油で注目されたのが、同じ食用油であるパーム油(ヤシ油)で、国際市場で買い占めが進みました。これで大きな影響を受けているのが、パーム油の世界最大の生産国であるインドネシアです。インドネシアでは海外からのパーム油の需要で輸出増となったため、国内向けのパーム油不足から価格が高騰したのです。パーム油を使う料理で漂う香りは独特で、初めてインドネシアへ行ったとき、ジャカルタのスカルノ・ハッタ空港を降りてすぐ鼻に飛び込んできたのが、調理で使うこの油のにおいと、人々が吸っているインドネシア産タバコに入っている丁子のにおいでした。

 

インドネシア料理でパーム油を使うゴレン(揚げる、炒める)料理、例えばナシゴレン(炒飯)やミゴレン(やきそば)、アヤムゴレン(鶏の唐揚げ)、タフゴレン(厚揚げ豆腐)などが軒並み値上がり、庶民の生活に深刻な影響が出ています。見かねたインドネシア政府はパーム油の国内価格抑制のために、パーム油の輸出を一時禁止せざるを得なくなりました。

 

「風が吹けば桶屋が儲かる」のことわざとはちょっと違いますが、ウクライナの「ひまわり」が回り回って、インドネシアの「ナシゴレン」に影響することになるとは。ウクライナ情勢には今後も目を離せなくなりそうです。

 

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