都市農政議員懇談会があり、市内3ヶ所の農業視察をした後、元 東京都副知事で現在、東京都農業会議の青山 佾 会長などから講演を受けました。

 

 

 

 

 

『視察地』

①JA町田市育苗センター(本町田)

②町田市農業研修農場(小野路町)

③新規就農者農地(野津田町)

 

 

 

 

①JA町田市育苗センター(本町田)は、薬師池公園四季彩の杜西園(ウェルカムゲート)に隣接し、種から苗を育てる都内のJA唯一の施設です。

 

 

 

 

 

農業では「苗半作」との言葉があり、『苗を育てるまでで、半分その作物は成功したようなもの』との意味だそうです。

 

人間でも「三つ子の魂百まで」の言葉がありますように、農業では苗を育て上げるまでがとても重要な工程であるようです。

 

JA町田市育苗センターでは、苗の生産者が減少したことを受け、農家負担の軽減を目的に、年間700万苗を育てており、農家のみならず、一般の家庭菜園愛好家にも利用されています。

 

最近では新しい大型の機械を導入し、作業効率の向上を図っています。

 

 

 

通常、地方のキャベツやレタス産地の育苗センターでは1つの種類の苗を一括大量生産していますが、

「町田市育苗センター」では、様々な農業者の広いニーズに応えるべく、多品目の苗を育てており、

品質の良い苗を求めて広く市の内外から、遠くは静岡などからもお客様が訪れています。

 

 

 

 

 

 

 

②町田市農業研修農場(小野路町)では、農業の担い手不足を解消すべく、2年間の農業研修を行っており、自ら耕作できる技術をもった人材を育成しています。

 

研修農場の運営では「NPO法人たがやす」が援農を必要とする農家と農業体験を希望する市民とをつないでいます。

 

研修農場対象者は、市内在住で農家支援や農業経営に関心がある方で、年間13名募集しており、1人あたり80㎡の畑を研修カリキュラムに基づき耕作します。

 

これまでに112名の方が研修を修了し、その内18名の新規就農者を排出し、都市型農業の振興に取り組んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

③新規就農者農地(野津田町)では、研修農場での研修を修了した新規就農者のうちの1人、佐藤さんが市内各所の有休農地合計9000㎡を借り受け、多くの野菜を栽培しています。

 

佐藤さんは生産した野菜概ね10品目を毎週40世帯に定期便として配達したり、さつま芋をキッチンカーで焼き芋として販売したり、直売所などで販売したりしています。

 

 

 

 

 

 

 

講演  (JA町田支店)

 

「都市農業について」(東京都農業会議 青山 佾 会長)

 

「東京都農業会議の役割について」(東京都農業会議 相原宏次 事務局長)

 

都市部での農業の移り変わりと今後求められる姿についてお話しいただきました。

 

東京などの都市部では、戦後住宅化されるよう整備され、農地は減少の一途をたどってきました。

 

従来の我が国の「都市計画法」では、「市街化区域は概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする」と定め、

農地であっても市街化を図るべきとしてきました。

 

その様な中、1974年に「生産緑地法」が定められ、指定された生産緑地については固定資産税や相続税の減免され農家が営農を継続できるようになりました。

 

しかし、市街化区域の農地については、国家としてあくまでも「緑地」としての価値を認めたにすぎず、「農地」としての価値は認めてきませんでした。

 

 

 

2015年の都市農業振興基本法によって、都市の農地の存在の意義が認められ、発想の転換が行われました。

 

この間、多摩地区の農地は1970年の米減反政策などの影響で、30年間で半減し、作付面積は312万haから176万haとなりました。

 

しかし、都市農地の面積は全国の農地の僅か4%ですが、農業販売額では全国の8%をしめており、

1000haあたりの農業産出額では、全国平均18.9億円に対して東京は41.9億円となり、都市農業は我が国の農業の中で確固たる地位を築いています。

 

 

 

 

世界の大都市の中で東京や大阪などの都市は農地が残っている貴重な大都市で、ロンドン、パリ、ニューヨーク、などの世界中の大都市と比べてみても日本の都市は農地を有している世界唯一の大都市とのことでした。

 

昨今の激変する世界情勢の中、軍事力による現状変更を試みる国が出現し、日本は先進国の中でも極端に食糧自給率が低いことから、経済安全保障の観点からも食糧の確保も重要な課題となってきます。

 

気候変動や国際紛争の影響で肥料代や燃料費を含む輸送コストが高騰していることは深刻な問題ですが、東京都の農地で生産された作物の80%は卸売り流通ではなく、身近な直販や学校給食に流通しています。

 

また、我が国は人口減少の時代に突入し、これまでのように農地を削減して宅地を増やす時代は終わり、これからは都市農業を守り充実させていく時代となっています。

 

今後、都市部の住民に対しては農業の重要性の認識を高めていく必要があり、自治体は市場原理に任せるだけではなく、都市農業の促進施策を推進していき、成熟社会に栄える豊かな都市像を描くことが大切であるとのご指摘でした。

 

そして自治体は今、土地利用計画の見直し時期にきているとも教えていただきました。

 

都市農業という難しい課題について様々なデータや統計に基づく講演をいただき、これからの展望もお示しいただき、大変勉強になりました。

 

関係者の皆様、ありがとうございました。