その4 ブルーアイランドでの暮らし | ポポ山に祈りを込めて

ポポ山に祈りを込めて

Welcome

しばしの休憩を。

ちょっとそこらを見物してくるか

ウィリアム・ステッド

 

最初に述べておきたいのは、これから述べる体験が、タイタニック号が沈没してからどれくらいたってからのことなのか、感覚的によく分からないということです。時間的には連続していて断絶はないように思えるのですが、どうもその辺がはっきりしません。

 

さて、私には二人の案内役が付き添ってくれました。地上時代の友人と、もう一人は実の父親でした。父は私と生活を共にし、援助と案内の役をしてくれました。何だか私には外国へ来て親しい仲間と出会ったという感じがする程度で、死後の再開という感じはしませんでした。それがその時の正直な心境です。

 

つい今しがた体験したばかりの忌まわしいシーンは、もう遠い過去へ押しやられていました。死の真相がわかってしまうと、そういう体験の怖さもどこかへ消えてしまいました。つい昨夜のことなのに、まるで50年も前のことのように思えました。お蔭でこの新しい土地での楽しさが、地上に残した者との別れの悲しさによって半減されるということにならずに済みました。

 

タイタニック号の犠牲者の全員がそうだとは申しません。少なからざる人々が不幸な状態に置かれたことでしょう。が、それも、二つの世界の関係(つながり)について何の知識も持たないからにほかなりません。そういう人たちは、二つの世界の間で一体どういうことが起こりうるのかを知らなかったわけです。それを知っていた私のような者にとっては、旅行先に到着して便りを書く前に、″ちょっとそこらを見物してくるか ″といった気楽な気分でした。悲しい気分など、まったくありませんでした。

 

さて、これから述べるブルーアイランドにおける私の最初の体験は、少し細かい点まで述べようかと考えております。有り難いことに、私には地上時代のユーモアのセンスが今もあります。ですから、私の話を読まれて、その突拍子のなさに可笑しさを覚える方がいても、私は少しもかまいません。むしろ苦笑を禁じ得ないものを見出してくださるほうが有り難いくらいです。