アスペルガーの「空気が読めない」「繰り返しの行動」は個性のうち

アスペルガーの人は、「社会常識」や「暗黙のルール」が分からずに、その場にはそぐわない行動をとることがあります。

冗談を真に受けて怒りだしたり、その場の雰囲気を気にせずにしゃべり続けたりするという、いわゆる「空気が読めない」行動もその一つです。

人には「個性」がある

人には実にいろいろな能力が備わっています。

見る、聞く、触る、味わう、嗅ぐといった五感の力をはじめとして、話す力、考える力、運動する力などなど。

それぞれの人によって、生まれつき優れている能力もあれば、成長とともに発達していく能力や、なかなか発達しにくい能力もあります。

人には「個性」がありますが、それは、これらの能力の出来・不出来、得手・不得手によって異なってくるのだと思います。

「空気が読めない」というのも、ひょっとすると、個性の一つと考えることができるのかもしれません。

でも、アスペルガー症候群の場合は、生まれつきの脳の機能障害で、特にコミュニケーションに関する能力の発達が遅れるといわれています。

ただの個性ではなく、「理解と支援が必要な個性」といえるのではないでしょうか。

アスペルガーの人とそうでない人とを分けること自体は悪いことだとは思いませんが、そのことで差別されたり忌避されたりするようなようなことがあってはなりません。

分けることは、より良い支援をするための第一歩なのですから。

アスペルガーの二つの特性

アスペルガーには、「コミュニケーション能力の不足」と「興味の偏り」という特性があります。

コミュニケーション能力の不足は「空気が読めない」ことにつながり、興味の偏りは「繰り返しの行動」につながります。

その場の空気を読むのが苦手

言葉や仕草で意思や感情を伝え合うのがコミュニケーションですが、アスペルガーの人は、相手の気持ちを汲み取ったり、その場の雰囲気を感じ取ったりするのが苦手なので、コミュニケーションがうまく続かないことがよくあります。

例えば、一生懸命作ってくれた料理を「まずい」と言ったり、ぽっちゃりした人を見て「デブ」と言ったりするなど、そう言うことで相手がどう感じるかということが考えられません。

悪意は全くないのですが、感じたことをストレートに表現することで、その場の雰囲気が一気に気まづくなることも少なくありません。

社会には、人付き合いにおいてもいろいろなルールがありますが、アスペルガーの人はこういった暗黙のルールがあるということを理解することがとても難しいのです。

目上の人に対しても、ため口をきいたりして、相手との距離を近くとりすぎることもあります。

言葉以外のコミュニケーションも苦手です。

その時の感情と表現や仕草とが直結しないので、面白いと思っても顔が笑っていなかったり、突然怒ったり泣いたりすることもありますが、これらもアスペルガーの人の特有の行動です。

会話をする時に目線を合わすことができなかったり、逆にじっと見つめたりするという傾向もあります。

アスペルガーの人も、その人なりに空気を読もうとしているようですが、アスペルガーの特性上、独特な方法で物事を認知したり理解したりするので、表現の仕方もズレてしまうというわけです。

同じパターンを繰り返す

興味の偏りは、興味をもったことにこだわり続けたり、特に目的もなく同じ行動を繰り返すということにつながります。

これは、最もアスペルガーらしい行動の一つといえます。

中でも、「手順」に対してのこだわりには強いものがあります。

例えば、毎日通っている道が工事で通行止めになっていたら、普通なら迂回して目的地までたどり着くことを考えますが、アスペルガーの人は「いつもの道が通れなかったら目的地にたどり着けない。どうしよう!」となります。

同じパターンで行動しようとするので、突然パターンが崩されると、ひどく混乱してしまうのです。

パターンが変わることで、どういうことが起こるのかが想像できないので不安になってしまい、その不安が強いとパニックを起こすこともあるようです。

臨機応変に行動するということは、アスペルガーの人にとってはとても難しいことなのです。

ものの配置に対しても、強いこだわりを持つことがあります。

勝手に部屋の模様替えをしたり、机の上を整理したりすると、その変化したという状況が理解できずに混乱してしまうのです。

また、単純な動きを繰り返す反復行動もよく見られます。

つま先立ちで歩いたり、体を左右に揺らしたり、話しながら手を動かしたりなどしますが、これらの行動で何かを伝えようとしているわけではありません。

同じ行動を繰り返すことで精神的に落ち着いた状態を保っているということもあるようです。

反復作業が大きな力を発揮する

同じパターンを繰り返すということは、繰り返しが苦にならないということです。

興味のあることに関しては、抜群の集中力を発揮して、周りが驚くほどの記憶力を発揮したり、膨大な作業でも難なくこなしてしまったりもします。

学者や研究者にはアスペルガーの人が多いと言われますが、このような特性が大きく影響しているのだと思います。

ただ、一つのことに対してはとても高い集中力を発揮しますが、二つ以上のことを同時に行うことは非常に苦手です。

「話を聞きながらメモをとる」ということは、それはそれは大変なことなのです。

アスペルガーの人は、一つひとつのことが順をおってできる環境が整っていれば、周りの人も驚くような成果をあげることができるのだと思います。