遠く海の向こうの
異国の人々へとも、

小さな島国に暮らす
故国の同胞へとも、

誰に向かって思うでもないのですが、

コロナ禍吹き荒れて、
それぞれが追い詰められ、
頑なになっていこうとする今を、
なることならば、
この雁たちのように、
心が心を助ける暖かい一団となって
渡っていけますようにと願います。




字幕

暖かい静かな夕方の空を
百羽ばかりの雁が
一列になって飛んで行く
天も地も動かない静かな景色の中を、不思議に黙って
同じやうに一つ一つセッセと羽を動かして
黒い列をつくつて
静かに音も立てずに横切って行く
側へ行ったら翅の音が騒がしいのだらう
息切れがして疲れてゐるのもあるのだらう
だが地上にはそれは聞こえない
彼らはみんなが黙って、心でいたはり合い助け合つて飛んで行く。
前のものが後になり、後ろのものが前になり
心が心を助けて、セッセセッセと
勇ましく飛んで行く。


その中には親子もあらう、兄妹姉妹も友人もあるにちがひない
この空気も柔らいで静かな風のない夕方の空を選んで、
一団になって飛んでいく。
温かい一団の心よ。
天も地も動かない静かさの中は何時ばかりが動いて行く
黙ってすてきな早さで
見てゐるうちに通り過ぎてしまふ。



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ありがとうございます。