【2021年9月】石川県加賀市 獅子舞取材 5~6日目 大聖寺三ツ町・西島町

9月23日

8:30~大聖寺三ツ町

区長の三谷健治さんにお話を伺った。同行は橋立公民館長の吉野裕之さん。獅子舞は担い手不足が原因で20年前に途絶えてしまい、現在は行われていない。昔、獅子舞をしていたときは、太鼓と笛と獅子という3つの役割があった。基本的に獅子を舞うのは大人だった。昔青年団は25人くらいはいて、年齢の制限などはなかったので、様々な年齢の人が所属していた。獅子舞の練習は公民館で行われた。演目はコンコラコンのみで、ゆっくりした動きで舞う。以前、上福田町に住んでいたときに見た獅子舞よりは激しくないような印象があった。この辺りの地域の獅子舞は振りがかなり似ていて、おそらくお互いに教えあっていたのではないかと思われる。ただし、どこから伝わったのかは聞いたことがない。また、普段から他の町に舞いに行くということはあまりなかったようで、この点は大聖寺の商業地とは異なる点である。ご祝儀の額は決まってなかったが、ご祝儀の額によって舞い方を変えるということはなかった。町内に30軒くらい家があり、留守宅の前でも舞う習慣があった。空き家や空き地はだいたい更地になったので、空き家の前で舞うということはなかった。田んぼの収穫の後、9月の20何日かに獅子舞の祭りをしていた。現在はバーベキューなどにかわっている。

獅子頭は雌獅子で、いつどこで作られたのかはわからない。塗りが新しく行われたのか、獅子頭の後ろには通常書かれている制作年代などの文字が見当たらなかった。デザイン的には、白山市鶴来で作られたようにも思える。20年以上も前の獅子だが、箱にしまわれているので、とてもきれいな状態で保管されている。尻尾は色が白くなってきて小豆色のような色になったので、墨汁のような赤い液体を買ってきて、赤く染めた。

大聖寺三ツ町は、おそらく3つの村という意味だと思われる。三ツ町の土地には堤や田んぼがあって、その一部に新興住宅が建ってそれが錦城ヶ丘になったが、町としては独立せずに三ツ町の町内に属している。錦城ヶ丘にも大きくて立派な公民館があるが、町として独立していないのにはそのような経緯がある。大聖寺の商業地とはまた雰囲気が違っていて、大聖寺錦町から1つ山を越えて大聖寺三ツ町があるので、ここからは町というよりも村で、農村地帯なので生業も異なる。もちろん、春の大聖寺の桜まつりに獅子を出すことはなく、獅子はもっぱら秋祭りの収穫感謝の要素が強い。大聖寺三ツ町には由緒正しい味のある鳥居をもつ菅原神社があり、公民館の横にある。最近個人的に気づいたことは、公民館と神社は隣に建っていることが多いということだ。

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11:00~西島町

区長の中谷信一郎さんにお話を伺った。同行は橋立公民館長の吉野裕之さん。今年はコロナ禍でも獅子舞を行なったが、神社と区長さんの家などしか回ることができなかった。昨年コロナ禍でできなかったので、今年はやらねばということで実施することになった。普段はカラフルなデザインの蚊帳をつけるが、今回は密にならないようにするために、蚊帳をつけずに頭だけで行った。また、獅子舞の練習もできず、本番のみを実施した。演目の種類は1種類で、特に名前はついていない。獅子と太鼓のみで舞う。ご祝儀や区長の家かなどによって舞いの長短を変える。青年団は昔は子供が所属していることもあったが、現在は30代の人のみが所属している。獅子が2人で太鼓が1人、合計3人いれば舞うことができる。もともと8月17日が獅子舞の祭りの日だったが、仕事などで休みを取れない人もいるので、8月のお盆の前の土日あたりで日を決めて舞うように変わった。

獅子舞を各町内集めて舞うということを庄地区の公民館が合同で開催する文化祭で検討したこともあったが、実現しておらず、他の町内の獅子を見る機会はない。この前Youtubeで庄町の獅子舞を見たら、自分たちと違っていてびっくりした。自分たちの獅子は激しいということがわかって、各町似ているものだと思っていたので驚いた。西島町は八幡神社なので、武勇の神様ということで激しい?のかもしれないが、その伝来経路や由来は定かではない。獅子舞の舞い方は演舞の途中で「カッポレ」という動作があり、ガニ股で個人宅の玄関に向かっていって、口を左右に振りながらパクパクさせ、最後に玄関の中に入って口をパカーンと歯打ちさせるという動作がある。また獅子が後ろに移動するときは、蛇行するように動くのがユニークなポイントだ。

獅子頭は平成2年8月に白山市鶴来の知田工房で制作してもらった。獅子頭の口にはベロの左右が紐できつく縛られており、顎がゆがんだか割れたのかもしれない。耳の形が変わっているし、鼻の形が横長で、獅子頭の表情は睨みが効いていてとても珍しい形である。獅子頭はおそらく雌獅子である。鼻のまわりがコンクリートなどで擦れたような跡があり、激しい舞いをしていることがどことなく想像できる。

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