ギャングのボスであるUは側近のSとLを引き連れて、ZとVを匿っていた会計士のFの邸宅へと向かった。どういう意味合いで二人を匿ったのか。かつては同じギャングの一味として腕を鳴らしたF。今ではもうすっかりギャングから身を引き、定職に就いたとはいえ、まだかつての名残りは健在だ。
UらはFの邸宅に着くや否や、ドアを蹴破り、半ば怒った様子でFをどやした。
U:「Fよ。どういうつもりだ?」
Fはドアのすぐそこにいて、Uらを見るにつけ、恐怖でおののき、二の句が継げない。怯え切ってしまっているFは震える声で抵抗の意志を示すが、それがかえってUの反感を買った。
L:「まあ、とりあえず我々をもてなしな」
そう言うと、Fは竦んだ体をそのままにして、奥にあるリビングのほうへ通した。長いソファにUを真ん中にして、その両隣に側近のLとSが座った。それに対面するように、会計士のFが座る。
Fが強張った表情を崩さずに号令でもかけるように、Uらを説き伏せる。
F:「私はもうお前たちからは身を引いた。今は列記とした職業を手に入れた」
S:「それがどうした?お前の言う会計士の仕事とは果たしてどんなものなのかな?」
F:「今から細かく説明する。耳の穴をかっぽじって聞け。企業は自分の会社の状態を財務諸表という成績表によって開示することで、自社の将来性や継続性に問題がないことを伝える必要がある」
L:「なるほど、お前が数字に強いのは昔からだったが、それが実益とマッチした仕事に就けたわけだ。道理で稼いでいるわけだ」
それを聞いたFは胸元をくすぐられたみたいで、ほんわかした笑みを漏らし、多少の前後関係を意識しながら。
F:「そして、銀行や投資家は企業が毎年公表する財務諸表をもとに、お金を出すかどうかの意思決定を行っている」
S:「実に。お前が司令塔機能を担っているということか」
F:「だからこそ、財務諸表に嘘が入っていては大問題となる。このような嘘の財務諸表が公表されることを粉飾決算といい、粉飾決算が生じてしまうと、銀行や投資家は怖くて資金を出せなくなる」
U:「つまり、お金を出す人がいなくなると、経済の血液ともいえるお金の流れが止まってしまい、経済が停滞してしまう。そのため、円滑な経済活動を支えるためにも、財務諸表が会社の真実の姿を表している必要がある」
F:「よく知っているな、U。お前も昔、私と経済を必死になって勉強していた」
それを聞いたUはふっと笑いを飛ばし、ポケットからタバコを取り出し、それを咥えた。
F:「公認会計士の監査は外部の専門家である公認会計士が、この財務諸表が会社の真実の姿を表していますよということ、つまり、真実の成績表ですよということを保証することにより、経済活動がスムーズに進むようにしている。このように、監査を通じて、公認会計士は経済を縁の下で支えているんだ」
Fが自信をもってそう言えば、そこには公認会計士という職業の看板を背負ってきた自負が垣間見れた。